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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第九章 灰かぶりの少女は魔女の夢を観る
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浮かぶのは狂気のような優しさ

 電車が減速し、ブレーキの軋む独特な音が車内に満ちる。千寿流たちが小さく体を揺らすのを横目に、アキラは心臓が落ち着かないのを自覚していた。


 やがてドアが開くと、外気が流れ込み、多くはない人々が一斉に降りていく。

 アキラは疎らに並ぶ列をずれながら、一度だけ振り返った。千寿流たちは楽しげに笑い合っている。その光景が、かえって胸を締め付ける。あの未来を思い出すたびに、自分の息苦しさは増すばかりだ。


「さて」


 夜深が軽やかな足取りで隣に並ぶ。口調は柔らかいが、その眼差しはどこか試すようで。


「聴かれたくないんでしょう?そこの路地裏で伺いますよ。この時間だ、誰も来ないでしょう」


 逃げ場はもうない。いや、逃げる気など毛頭ない。これを不運ではなく転機と捉えよう。折り重なる後悔を噛み潰して希望に変えればいい。アキラは小さく唇を噛んでから、吐き出すように口を開いた。


「……私には、“視える”んです。未来が」


 その一言に、夜深はわずかに眉を上げる。驚愕というよりは、興味を引かれたという反応だった。何を馬鹿げたことを、と一蹴されるのは覚悟の上だったので、少し拍子抜ける。


「へえ、未来を?」


「はい。この手で触れた者の数時間、中には数か月先、はっきりとは分かりませんが未来が朧げに脳内に流れるんです。巷でいう異能(アクト)っていうヤツですよ。私にはその力があるんです」


 喉が渇く。言葉を紡ぐたび、胸の奥に焼けるような痛みをもたらす。亡くなった妹の残像が、チリチリと苛み焦がし続けているようだった。


「銀ノ木に行けば――」


 口を衝けばその未来が確定してしまうとしても、もう後戻りは出来ない。否、救うために進み続けなければいけない。


「いや、それ以上言わなくてもいいですよ」


「え?」


 言葉を遮られる。男の閉じた瞼には何も映りはしないが、その奥に確かに鋭さを感じさせた。それ以上喋るな、後戻りは出来なくなるぞと、アキラの脳内が警鐘を鳴らす。


「貴方の言う通り、それが吉凶を予言できる千里眼のようなものだったとしましょう。その表情、もしかしなくても凶兆が観えたんじゃないんですか?」


 細く鋭利な瞳が開かれる。その全てを見通しているかのような表情に、アキラは心の奥底まで丸裸にされたような気がした。


「そして、それを伝え渋るのは他でもない、観えてしまった未来は変えることが出来ない。違いますか?」


 全て当たっていた。いや、表情から悟られたのならこれくらいの予想はつくのかもしれない。


「けどっ!変えられるかもしれないんです!私自身避けてきたッ!この異能(ちから)のことは私ですらまだ理解出来ていないことが多いんですっ!なら、もしかしたら!ほんの少しでも、一パーセントでも可能性があるならっ!」


「それは――」


 再び言葉を遮られる。


 別に怒鳴りつけられているわけでもないのに、操られるかの如く、その次の言葉を紡げない。夜深の覗き込むような瞳。そのブラックホールのような深淵の世界に、引き摺り込まれそうになる。それは恐怖か、不安か、はたまた罪悪感か。頭を垂れ、口を噤むしかなかった。


 夜深の唇が言葉を紡ぐのをただ眺め続ける。

 この時、アキラにはそれだけが自身の存在意義のようにさえ感じていた。




「――つまらないな」


 その瞬間、ふわりと宙に浮くような浮遊感がアキラの全身を包み込む。思考が緩やかになり、周囲の視界が遠景に変わっていく。

 それは現実との乖離。浮いているような気がするではなく、実際に浮いていた。感情を司る心だけが体内を逆流する。

 嘔吐感のような充足感。まるで苦悩という(しがらみ)から解放されたような幸福感があった。


「そう、ですね」


 もう、思考することが出来ない。


「わかり、マシタ」


 もう、何も考えられない。何も感じない。何も伝わらない。何も出来ない。何も得られない。


 もう何も――

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