表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第九章 灰かぶりの少女は魔女の夢を観る
402/417

少年と苦悩

 学校でも、ぼくは細心の注意を払った。


 誰にも触れない。それは簡単なようで難しかった。幸い相手から触られた時は異能(アクト)が発動しなかったので、ぼくだけが注意していればいいのは幾分かと気が楽だった。

 いや、嘘だ。そんなわけがない。確かに学校という環境において、無防備な相手に触るという行為は意外と少ない。

 気心の知れた友だちならいざ知らず、ぼくには気軽に話せる友だちはいたものの、そこまで仲が深い友だちなどはいなかった。つまり、相手から触れられること自体ないし、その逆もない。


 けど、長い学校生活。そんな簡単に思い通りに行くはずもない。

 中学では柔道が必修科目だった。それだけじゃない。体育では二人一組で行うことも多いのだ。必然、ぼくは仮病を使わざるを得なくなった。

 心配する声と、休んでばかりのぼくを妬むような眼で見てくる生徒。どうしてぼくだけがこんな目に遭わなければいけないのか。次第にそう思うようになっていった。


 クラスメイトと肩が触れ合うのが怖い。友だちがふざけて手を掴むだけで、それを拒否しようと押し返した際、未来が流れ込んでくるのではと怯える。

 だから距離を取る。教室の隅、窓際の席、誰とも目を合わせずに過ごす。


 ある日、不意にぶつかった男子の腕に触れてしまった。気が抜けていた、いや違う。気を張り過ぎていて、逆に思考が回らなくなっていたのだ。


 瞬間、観えたのはその生徒が階段から転げ落ちる未来。

 慌てて注意をしようとして踏みとどまる。階段から落ちた結果、彼がどれほどの怪我を負ったのかは分からない。

 もし伝えればまた違う形で未来が確定してしまうかもしれない。その因果をぼくの異能(アクト)が手繰り寄せてしまうという、気味の悪さに耐えられなかった。

 当然、変化のしようがない未来はそのまま確定する。幸い、足の骨を折るような大怪我には至らなかったが、踏み外した際、擦りむいた膝から少しばかり血が流れたようだ。

 その時もさらなる未来が怖くなり、ぼくは彼に駆け寄ることさえ出来なかった。

 まただ。また、自分が未来を引き寄せた。そう思うと、胸の奥に冷たい手が這い寄るような恐怖を覚えた。


 ぼくは決意を改めることになる。生半可な拒絶ではいけない。もう二度と誰にも触れない。触れてはいけない。ぼくという人間が触れた瞬間に、その人の未来を壊してしまうかもしれないのだから。


「アキラ……どうしたの……?」


 母の声が、以前よりも小さく、震えて聴こえる。

 ぼくは答えられなかった。

 触れられること、触れること。それがどれだけ怖いか、説明できない。説明すれば、あの未来の光景を再び観てしまう。

 ぼくと母親、二人の共通認識となった事実は結末として完結する。そんなことに意味がないと分かっていても、ぼく以外には妹の死を曖昧のままにしておきたかった。だから黙って俯き、箸を握る手を硬くして押さえるしかなかった。


 友だちもさらに遠い存在になっていった。学校では手袋をするようになった。馬鹿にされても、アニメに出てくる主人公に憧れたとかなんとか言ってごまかした。

 まあ、こんな薄っぺらい手袋に本当に意味があるのか、試してみる勇気はもちろん湧かなかったけれど。


 徐々に、ぼくの世界は縮んでいった。触れることを避けるあまり、教室の隅、家の片隅、トイレや図書室、安全だと思える空間に籠もるようになった。息を潜め、動きを最小限にし、視線も必要最低限しか動かさない。

 世界は再びモノクロに色褪せ、音は遠く、時間はゆっくりと流れ始める。それはなんだか自分じゃない誰かを見ている様で、生きている感覚すら希薄になったようだった。


「こんな異能(ちから)、欲しくなかった。未来なんか観えても、何の意味も無い」


 それは誰にでもなく呟いた言葉。それはか細く、小さな風音にも掻き消されてしまうほどに弱い。けど、別に誰に聴かれなくてもいい。

 だってそれはクソったれな神様に向けた言葉だから。神様がもしいるのなら、ぼくはぼくの人生を懸けて恨んでやるつもりだ。絶対許してやるものか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ