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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第八章 『嫉妬』
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「ありがとう」と伝えたい

 ミルちゃんとの会話を終えてぼくは、束の間の日常に戻っていた。


 未確認の魔獣(マインドイーター)を退けた――その功績とやらで、ぼくたちは長期休暇を与えられた。「やったぁ!遊びまくれる~!」とミルちゃんは子どもみたいに飛び跳ねて、泣き笑いしていた。そういうところは本当に年相応だと思う。正直羨ましい。妬ましい。

 とはいえ、ぼくはぼく。妬ましいと思うことはあっても、それはなんていうかな、憧れに近いものだ。憧れだから遠くで見ているだけで満たされる。彼女らと話すのはもちろん楽しいけれど、ぼくは元来ソロプレイ、一人でいる時が一番心が安らぐのだ。


(へえ、ウイングガゼルさん今度結婚するのね。ウイングガゼルなんて名前だからもっと子供かと思ってたよ。何にせよめでたいことだ)


 一方のぼくはといえば、別に浮かれるでもなく普段通り。団のみんなとどこかへ遊びに行くでもなく、家でゲームにログインしてはMMORPGの人間観察に耽る。まあ、結局のところ、ぼくの休日なんてそんなものだ。それが短かろうが長かろうが変わらない。

 少し遠くに足を運んでみようとも考えたが、目的地まで向かう労力を考えると、どうにも腰が重くなるばかり。行きと帰りで二倍。しかも帰りはまた仕事の日々に戻っていくという、憂鬱な感情に支配されながらだ。こんな後ろ向き思考だから、友人と呼べる関係が一向に築けないのかもしれない。

 お腹が空いたぼくはひとまずPCのモニターを落とし、少しだけ重い腰を上げ、近くのコンビニへと向かうことにした。


「眩しい……」


 今日も街は平和そのもの。平日とはいえ昼下がりの大通りには、ランチタイムやら、散歩をしているお年寄りやらでほどよく賑わっている。どこかのカフェからは香ばしいパンの匂いが漂い、少し遅めの昼食を誘ってくるようだった。


(今日もお見舞いに行こうかな……いや、毎日行ったらさすがに鬱陶しがられるかな?)


 ミルちゃんから聞いた話の通り、水無月さんたちの容体は重傷ではあったものの、レギオン直属の医療機関に所属する治癒の能力者(アクトプレイヤー)の手によって順調に回復へと向かっているらしい。

 しかも、完全に切断されていた炎堂さんの腕も、まるきり完治とはいかないまでも、神経の結合に至るまで回復したとか。ぼくも何度か会った事はあるけれど、なるほど、彼はそこまでの人材だったのか。

 正直なところ、実際に目の当たりにして胸を撫で下ろさずにはいられなかった。あの日の戦いで、あの二人がどうなってしまったのか――あれから何度も頭をよぎっていたから。

 戦場では冷静でいようと努めていたけれど、終わって日常に戻ると、逆に心配や罪悪感が重くのしかかってくる。だから「順調に回復」という一言だけで、抱えていた不安や後悔が少し軽くなったような気がしたものだ。


(医療か。そういえばぼくのところには医療に知識のある人材はいないな……)


 もちろん『嫉妬(テネブラエ)』は積極的に救助要請に応える他の団と違い、情報収集が主だし、個人で魔獣(マインドイーター)を圧倒するような戦闘スキルに秀でているものはいない。だから、医療に関しても応急手当などの本当に基礎的なものは習得していても、今回のように生死に関わるレベルの大怪我は別隊の医療班に任せることになっている。

 けど、今回のようなイレギュラー。生死の境、一刻を争う状況で応急手当だけではまるで意味がない。そもそも逃げ切れたのも魔獣(かれ)の気まぐれ。弱者殲滅。弱い者から順に、怪我をした者を人質に、考えられるあらゆるケースで全滅していた。

 それらは全て上層部に報告した。けど、それで「はい、そうですか」と対応してもらえるほどレギオンは潤沢な組織ではない――悩みの種だった。


「もし次に同じようなことが起きても、ぼくらは……本当に何もできないまま、ただ見ているだけ」


 答えは分かっている。戦力も医療技術も、他の団のように突出していない。そもそも『嫉妬(ぼくら)』には求められていない。理屈では納得できても、心はなかなか割り切れない。あのとき、心臓を内側からなぞられる様な寒気を帯びた無力感は、まだ鮮明に残っている。

 コンビニのガラス越しに視える世界は平和そのものだ。変わらない街並みに、流れていく日常だけが在る。けど、今この瞬間、魔獣(マインドイーター)が現れないとも限らない。そうなればその非日常に対処できるのは、同じく非日常に生きるぼくたちだけ。彼らもその世界に身を置いているんだ。


「やっぱ行こう。悩んでいてもしょうがない」


 ふと、口から漏れた声。自分に頷くように答える。考えてもネガティブになるだけなら、いっそ考えないほうが良い。

 会いに行ったところで、気の利いた言葉なんてかけられる自信はない。けれど、無事に帰ってきてくれた彼らに「ありがとう」と伝えることくらいはできるだろう。そう思うと、なんだか不思議と少しだけ肩の重さが軽くなる気がした。

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