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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第八章 『嫉妬』
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嘘真朧VS三つ目の魔獣3

 次の瞬間――身体が大木にめり込んでいた。

 嘘真朧が身体を起こそうと力を入れるとミシミシと軋む音がした。不快感しかない音だが、骨が折れた音ではない。

 もちろん、体を起こそうとする身じろぎの刹那でさえも好機と判断をし、攻撃の手を緩めることはない。


 速度を乗せたストレートに始まり、追撃のミドル、両腕を使ったマシンガンのようなブローの連打。しかし、その一撃一撃が必殺級。ダンプカーの激突事故の様な爆音がそれを物語る。

 相手が生きていようが事切れようが構わない。ただ蹂躙するためだけの狂気の猛追。それほどまでに彼女の“言葉”が彼の逆鱗に触れたということなのだろうか。


 “ぼくは――最弱だよ”


 そう、三つ目の魔獣(マインドイーター)はただ求めていた。自分の存在意義を。強くなりすぎた自分に引導を渡してくれる強者の存在を。


【「くだらない。くだらない。くだらない。くだらない」】


 呪言の様に繰り返される退屈の言葉。それに伴い加速する殺戮の嵐。周囲に響く音も徐々に大きくなっていく。まるで言霊がパンチ力を実際に高めているかと錯覚するほどだった。


 気が狂うほどの凶行の手を止め、三つ目の魔獣(マインドイーター)は荒い呼吸を繰りかえす。

 気が付けばそこに立っていた大木は跡形もなく消し飛んでいた。木端ひとつ残らず跡形もなくだ。当然、そのような暴虐を受けて生身の人間が生きていられる道理もない。嘘真朧という生命はその肉体ごと完全に消滅してしまった。

 そう、錯覚した。否、錯覚するしかない状況。

 大木が(ひしゃ)げ消し飛び、地面にも大きな窪みを作り出すような暴力を受け続けたにも拘らず、苗鳩嘘真朧はそれでもその場に五体を残して、何も喋ることなく悲しい目をしたまま魔獣(マインドイーター)を見つめていた。


【「____ッ!?!」】


 驚愕。そして瞬く間に激昂。向けられた憐憫の眼差しは何を思ってのことなのか。彼に知る術はない。いや、理解して猶許されざる禁忌。許してはいけない感情なのだ。

 もう止まらない、止めることは出来ない。真意がどうだとか、誰が誰を思ってとかもう何も関係はない。彼女の存在を三十七兆の細胞に分割させ、この世界から完全に消滅させるまで彼の狂気()は止まることはない。


【「グゥウウゥ――ォぉォオおオオオオオオオッ!!」】


 焼き切れる神経をその場で自己修復しながら、加速し続ける。殴った拳を引き、膂力に任せて振り切る。たったそれだけの動作を最適化させ続け、音速すらも越えていく。

 ただ一点『滅ぼす』と決めた思考に戸惑いという名の不純物は不要。だから、自らの雄たけびで何もかもを塗り潰した。

 その存在が希薄になろうとも攻撃の手は収まらない。けれど、目の前の障害はどうやら消えてくれなかったようだ。


「もう、やめなよ。殴ってる側だって、手、痛いでしょ?」


 掛けられた言葉に反射的にその巨体を翻し、三歩大きく飛び退いた。


【「ハァ……ハァ……なぜ、なぜ、死なない?なぜ、消えない?なぜ、立ち上がるッ!?」】


 呼吸を整える間も忘れ、疑問を投げかける。

 手ごたえはあった。肉を抉り取る感触。中身ごと磨り潰してやる勢いで攻撃を加えた。しかし、あれだけの攻撃を受けて損傷はおろか、小さな掠り傷すら見当たらない。魔獣(マインドイーター)は何かトリックのようなものがあるのだと確信する。


「……」


 しかし、嘘真朧は答えない。

 三つ目が忙しなく動く。ギョロリと睨みつけるソレは、先ほどまでの姿とはかけ離れている。それも当然の話。攻撃が全く効かない。能力は先ほどから解放しっぱなしだ。

 しかし一向に壊れてくれない。そして極めつき、肝心の相手の攻撃は未知数。手札の一枚も拝めていない状態だ。完全に優位に立っていた立場を脅かされている。

 生まれて初めての焦りが三つ目の魔獣(マインドイーター)の全身を襲う。生態機能として発汗こそしないが、もし仮に彼が人間だったのなら、冷汗で背中を濡らしていたに違いない。


「せっかく会話ができるんだ」


【(何故効かないッ!?なぜ通らないッ!?そんな不条理は認めないッ!?)】


「ぼくとしては穏便に行きたいんだよね」


【(あり得ない現象なんて全部が嘘だッ!起こり得る全ては現実でなくてはならないッ!)】


「矛を収めて、話し合う気はないかな?」


【(だからこれは嘘だッ!全てが嘘だッ!その存在ごとが嘘なのだッ!)】


 突如、嘘真朧の姿が視界から消える。ガサリと誰かの足音が響く。そして次の瞬間には背中に銃を突きつけるように、人差し指を当てられていた。

 消えたと思われたその姿は、いつの間にか魔獣(マインドイーター)の後方に移動していたのだ。


「ねえ、聴いてる?」

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