表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第八章 『嫉妬』
370/417

嫌な過去を観た

 感情の波に侵されてゆっくりと意識が遠くなる。それは自分という存在が、何か強い力で塗り替えられていくような――そんな感覚。

 抗わないといけないと思いつつも、身体はまるでいうことを聞かなかった。鎖で縛り付けられているわけでもないのに、指先一本すら動かすことは出来なかったのだ。


(いや、このまま身を委ねれば)


 良い事なんてここ最近何も無いもんな。


(この昏い感情からも解き放たれるのだろうか?)


 __ならいっそ、このまま。

 そう思い、力を抜いて全てを手放そうとしたその時だった。


「ねー?」


 真っ黒な空間に、どこか間の抜けた明るい声が降ってきた。頭上から、まるで鈴を鳴らすように。ここには自分しかいないはずなのに、その声はたしかに──誰かを、呼んでいた。

 それはきっとぼくに呼びかける声。だって、ここにはぼく以外誰もいないのだから。


(だれの、声?)


 その声に聴き覚えはないが、何故か安心できるような気がした。


「だんちょー?んー、だんちょうってば、どうしたんですー?」


「ん、ミル……ちゃん?」


 目蓋を押し上げる。薄っすらと広がる眩い視界には、見知った彼女が立っていた。


「だんちょう?ねーねーだんちょう?起きてますかー?」


「え?ああ、ミルちゃん。ごめん、ちょっと落ちてた。はぁ、駄目だな寝不足かも」


 頭を押さえながらゆっくりと上体を起こす。頭はまだ少しふらつくが体調は問題なさそうだ。

 ミルちゃんの話によると、ぼくは立ち眩みをしたような表情を浮かべた後、そのまま木々を背に座り込み意識を失っていたらしい。


「いやもう、ちゃんとしてくださいよ!アタシちゃん救急車呼ぼうかなって!まあ、こんなトコ来てくれるか分かんないんですけどね!あはは!」


 ミルちゃんはほっぺをぷくっと膨らませながら、でもすぐに笑顔になりどこか楽しそうに言う。


「ごめん、少し、ネガティブ入ってた。最近仕事が忙しかったからね」


「そういえば団長朝から体調悪かったですもんね。まだ休んでますか?」


「それは魅力的な提案だけど、そういうわけにはいかないでしょ。ぼくが視なきゃぼくが納得できない」


 ミルちゃんを信じていないわけじゃない。ただ、彼らは危ういのだ。個々の能力が決して低いわけではない。譲り合うことが出来ない傲慢さ、それも少しずつだが克服している。チームワークには程遠いが円を描こうとする努力は感じられる。

 けれど、その全てが不安定。魔獣(マインドイーター)との戦いは想定外を想定するところから始まる。彼らにはそれが決定的に欠けている。強いていえばその片鱗を感じ取れる可能性があるとすれば、ギルドからの叩き上げの炎堂アリナのみ。しかし、彼女のあの様子ではまだまだ未熟と言わざるを得なかった。

 その裁定をミルちゃん一人に任せるのはあまりにも酷だと思った。


「じゃあ、団長の心がぽきっと折れちゃったらアタシの出番ですかね?」


 嫌な過去(ゆめ)を見た。

 人間だから頑張ってもどうにもならない時もある。言葉だけじゃ伝わらない気遣いもある。心に任せて感情を振り回せば、すぐに誰からも愛想を尽かされるのだろう。

 向けられた手を掴みぼくは立ち上がる。その手は冷たくも暖かい。揺りかごの様な温度は身体を駆け巡り、やがて中心へと至る。

 気持ちを感じ取れば本質はいつだって胸の中心、心にある。


「でも、大丈夫ですよ?ぽきってなっても、ちゃんとまた育ちますから!お水と、お日さまと、あとちょっとだけ、甘いおやつがあれば!」


「ふふ、ぼくは植物かなんかなの?おやつは……キミが食べたいだけでしょ」


「えへへ」


 ぼくが植物なら、きっと彼女はお日様なのだろう。植物は日光を浴びなければ生きていくことは出来ない。彼女はぼくにとって必要な存在なのだ。

 正直、いつも偉そうなことを言っている身としては、そんなことを口にするのは少し恥ずかしいけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ