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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第八章 『嫉妬』
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公園のその先へと

(あの子は無事なのだろうか?)


 見渡す限りにあの子の姿はない。無事に帰っていてほしいと願う。心配は心配。探そうにもこの状況、賢い選択肢ではないだろう。


 ぼくは公園に設置されている水飲み場で喉を潤してから、ベンチに座って休憩を取るついでに、この“痛み”について考えることにした。

 公園の水は不味い。理由は単純、基本的に上水道が供給されているから、安全に飲めるようになっているとはいえ、常温に近い公園の水は舌に味がしっかり伝わるからだ。本当は公園を出て、自販機までジャスミンティーを買いに行きたいところだったけど、激痛を我慢してまで行く気にはなれなかった。


 冷えた頭でちゃんと考えてみよう。まず、痛みが消える条件。公園の範囲内、そこをさらに一回り大きく囲った範囲の外が魔獣(マインドイーター)の毒(ここでは毒と仮定する)の影響下。

 先ほどまで痛みがあれども公園の外でも動けていたのは、この毒が遅効性、時間によって痛みを増していくものだったから。だから、あれから時間が経った今、公園の外に出ていくのは自殺行為に近いという事。

 疑問点はある。これほどの激痛、ぼくじゃないとしても耐えることなんて出来ないだろう。しかし、この公園にいるのは現状ぼく一人。慌てた様子でこの公園に向かってくる人物など、一人も確認できていない。もし毒に侵されているのだとすれば、一人くらい逃げ込んできてもおかしくないのだ。

 ちなみに、あれから電話番号を知っている友人にも何件かそれとなく尋ねてみたが、それらしい話は聞けなかった。つまり、この毒の影響下にあるのは、ぼく一人だけということになる。

 あれだけの人数が魔獣(マインドイーター)の侵入した学校から逃げ、実際に魔獣(マインドイーター)と対峙した教師陣がいたにも拘らずぼく一人だ。俄かには信じがたいが、それが今起こっている事実だ。


「そんなことは、ありえない、よね?」


 なら考え違いか?

 やはり、最初から魔獣(マインドイーター)による毒なんて存在しておらず、完全にぼくの個人の問題。異能(アクト)の暴走だとでもいうのか?

 正直それも疑わしい。学校で異能(アクト)についてはいろいろと学んではいるが、過去にそんなケースがあったとは聞いてない。


 異能(アクト)は神からの啓示、天啓の様なもの。異能名(アクトネーム)、その異能(アクト)によって何が出来るのか、どんなことを起こせるのか、というのは脳内の記憶に直接書き込まれると話を聞いた。だから窮地に覚醒しても迷うことなく、異能(アクト)を行使することが出来ることも、過去にそういった形で覚醒をして、困難を脱する人物がいたことも知っている。

 それは異能(アクト)を使うことにより訪れる代償についても同じ。許容を超えた力を行使すれば、その分のフィードバックが起こることを脳内が直接警鐘を鳴らすのだ。二リットルのペットボトルに三リットルの液体を満たそうとすれば必然零れてしまうように、ぼくたち能力者(アクトプレイヤー)はそれを脳内で処理できるのだ。だから、能力者(アクトプレイヤー)異能(きせき)を行使しても壊れない。

 そしてぼくは自身の“許容範囲(げんかい)を理解”していて、実際に“許容範囲(げんかい)以上の異能(アクト)を使っていない”のだ。


「あーもう。考えても意味無いよ。よけい頭痛くなる」


 そもそも実際の頭痛だって、なに由来で起こるか分からない事の方が多い。考えても無駄なら病院に駆け込むか、痛みが引くまで安静にしているしかないのだ。

 ぼくは考えることに馬鹿らしくなり、ベンチに身体を預け、ひと眠りしてしまうことにしようとした。


「え?」


 半ば投げやりになって仰向けに横になったぼくの反転する視界の中で、きらりと光る何かを見つけたのだ。

 見間違いだっただろうか。目をごしごしと擦り二度見するが、フェンスに隔てられた向こうの茂みには何も無い。普通であればスマホやガラスの反射だと疑うのが自然だが、ぼくにはその光がぼくだけに向けられた何かのメッセージだと思えた。

 ベンチから転げ落ちるように立ち上がったぼくは、スカートの砂埃を払い、カバンを握り、ごくりとひとつ唾を飲み込んだ。

 なぜだろうか?「行くしかない」と、心の中の誰かがそう呟いた。それは他ならぬ自分自身。期待と不安をぐるぐると掻きまわしながら、足元を確かに一歩、また一歩と歩みだす。その頭の中に“公園から出ると痛みに襲われる”ということは既になかった。

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