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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第八章 『嫉妬』
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黄昏に佇む無口な少年

 何か大切なモノを失ったような気がした。


 失くさないように、色褪せないように、煌びやかな装飾に彩られた宝箱に鍵をして、大事に大事にしまい込んでいた大切な宝物。

 しまい込んで長い歳月が過ぎたから、何をしまい込んだのかも分からなくなっていたけれど、とても大切なモノ。

 ある日、思い出したように鍵を差し、箱を開いたら跡形もなくなっていた。それは形のあるものじゃないから、鍵穴の隙間をすり抜けて、自ら消え去ってしまったのだろう。


 なぜ消えたのか?誰が盗んだのか?誰が悪いのか?

 考えても一向に分からない。それどころか考えれば考えるほど混迷していく。すると次第に疑わしくなる。それは本当に大切なものだったのだろうか。分からないということは、大切なものじゃなかったんだろうか?


 考えても、考えても分からない。

 だから、その気持ちが本当に自分のものなのかも、分からなくなっていった。


「……?」


 ある日の放課後、帰り道でぼくは夕日に照らされた誰もいない公園にふと目が向いた。

 なんてことはない普通の公園だ。何の変哲もない滑り台、キーキーと軋むような音が鳴りそうなブランコ、少し大きめの砂場と錆び付いたジャングルジム。

 どうやら後から建てられたビルの陰になり、日当たりも良くないらしい。それもあってか、長く放置されくたびれている様な、そんな切なさが漂っていた。


(そういえばこの公園、子供がいるのを見たことがないな)


 いつもだったら素通りしてしまう情景。自分でもどうしてそう思ったのか分からない。けれど、なんとなく、誘われるように公園の砂場へと歩いていく。

 まるで自分の意思とは無関係のように、一歩ずつ、ゆっくりと。


 しゃがみ込み一握りの砂を掬い上げる。手触りの良いキラキラと光る砂粒が手のひらの上で遊んでいる。隙間から漏れ流れ落ちていく様は、どう足掻いたって決してやり直せない人生の様だ。

 その情景を眺めてまたどこか切なくなった。


(なにしてるんだろう、ぼく)


「阿保らしい」


 ため息を吐きながら立ち上がり、お尻をぱんぱんと払う。別に座り込んだわけではないが念のためだ。


「っ!?」


 公園の出口に差し掛かるその瞬間だった。背後から、何者かの気配を感じたのだ。誰もいないはずの公園。その公園から何者かの気配を感じた。いや気配というよりも存在感といったほうが良いかもしれない。

 音もニオイも無いけれど、確かに後方に何者かがいる。そんな確固とした存在感。

 振り返るのを躊躇う。さっきはさらっと確認しただけだ。しっかり不在を確認したわけではない。誰かがかくれんぼをしていてもおかしくはないが、それにしたって不気味な話だ。


「……ぐっ」


 ぼくは意を決めて振り返る。ホラー映画では全く動じないから、自分では怖がりな方ではないと思っていた。けど、今こうして実感しているのは紛れもない恐怖。

 リアルの不気味さというものは、こうも簡単にフィクション(つくりもの)を超えてくるんだなと実感した。


 そこに在ったものは――


「……」


 少年だった。


 丸みを帯びた黒のセンターパートヘア。年相応らしさがあるフェイクレイヤードのロゴ入りシャツに、七分丈まで折り曲げた濃い青のパンツ。ただその虚空を映したような、光のない眼差しだけが不気味だった。

 滑り台の階段部分に腰かけ、じっとこちらを見続けている。その眼差しには恐怖も、敵意も、好意さえも無い。ただじっと、こちらの存在を認識するためだけにその眼を開き続けていた。


 ぼくはこの状況におかしいと思いつつも、その瞳にくぎ付けになっていた。

 金縛りでもない、魅了でもない。ぼくもただ彼の存在を認識するためだけにこの眼を開き続けていた。


「ねえ、キミ。こんなところで何してるの?」


 さすがの沈黙に耐えかねたぼくがそう訊ねた。少年を服装や外見から五~六歳と判断した。ぼくは十七、歳の差は離れている。出来るだけ怖がらせないような口調を心掛けた。


「……」


 しばし沈黙が流れる。静寂が場を支配して数分。少年は答えない、いや答えることが出来ない様に思えた。それは拒否だろうか。お前とは喋りたくないという拒絶なのだろうか。少年の立場に立って考えた。そうしたら自然と喋らない理由が理解できた。

 怖いんだ。知らない誰かと、繋がってしまうことが。だから、拒絶されたぼくがこの場で取るべき行動は一つ。


「いや、ごめん。ぼく、帰るよ。キミも暗くならないうちに帰りなよ?じゃあね」


 そう言葉を掛けて踵を返す。別に子供が好きなわけでもない。善意の押し付けがしたいわけじゃない。ただ成り行きで声を掛けただけ。

 繋がりを持ちたくないのはこちらだって同じことだ。そんな気配を感じ取ったのか、背中越しに彼からの声が掛けられることはなかった。

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