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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第一章 影の魔獣と夜を纏う男
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夜に散りゆく

(奴の考えていること。いや、もしかして――)


 考えること数秒。一つの可能性を手繰り寄せる。


「おい、テメー。もしかして逃がしてもらおうって算段じゃねえだろうな?」


「ん、どういうことかな。もしかして逃がしてくれるの? 僕としては願ったり叶ったりなわけだけども。ほら、お互い血は見たくないでしょ」


 夜深は忍ばせていた髑髏の意匠が彫られた銀の十徳ナイフを取り出し、手元で回転させ、遊ばせながら答える。

 包囲したならあとはタイミングだけだ。その所作に体勢を身構えると同時に警戒を強め、後ろの手でサインを送る。しかし、手元でナイフを遊ばせるだけで夜深に動く気配はなかった。


「ンなわけねえだろバカタレ。大方私たちの存在に気づいて、あのメスガキを取り込むのを止めた。あのガキを見逃す代わりに、自分の身を担保したんだろ?」


「担保? あはは、もしかして君、やっぱり頭悪い? それだったら人質にするでしょ。あと目が慣れてきてようやく分かったんだけど、なにその顔。ぶっちゃけ似合ってないよ君に。顔もボロボロでさ、轍かなにか?」


 夜深は持っていたナイフの切っ先で、顔をなぞるように運ばせながら馬鹿にするようにそう挑発する。

 別に好き好んでこんな刺青を入れるわけがない。ただ、過去に遭った魔獣(マインドイーター)との戦闘で負った顔の大けがを隠すために入れた、言わば決別のためのものだ。

 夜深はそんな人によっては、コンプレックスともいえるかもしれないデリケートな部分を煽っていく。しかし、雫のサインを確認した部下たちはもう誰も動かなかった。


(なるほど、何か指示でも送ったのかな? 少し警戒したほうがよさそうかな)


「ふーん、まあいいや。僕は君たちに見逃してもらうために、千寿流ちゃんを行かせたんじゃない。僕は見せたくなかっただけだよ。ただそれだけだ」


 夜深はフードに指をかけ深く被り直す。遊ばせていたナイフを畳み、ジャケットのポケットに仕舞いながらそう言った。


「見せたくない? 何をだよ劣悪種、言ってみやがれ」


「え、いいの? 多分怒るよ、君」


「言えよ。それがテメーの末期の言葉だ」

 



「死体」




 瞬間、戦いの火蓋が落ちる。


 眉間に皺を走らせた雫が夜深の首を刈らんと突進する。

 夜深の首元に伸びる腕。その手首の裏を右の手で受け止める。

 あと数センチ。雫の爪は鋭く尖っており、首に届けばそのまま上下に両断してしまうほどの鋭利さを放っていた。

 

「あめーんだよ」


「!?」


 突如として雫の爪が伸縮する。受け止めたと思っていたその爪先は鋭く伸び、夜深の首を穿つように空気を貫いた。


「ふーあぶな」


 回避と同時に飛びすさり距離を開ける。

 とっさに身を傾け、爪先の直撃を何とか躱すも、その首筋からは血が滴り落ちていた。


「ハン、魔獣(マインドイーター)っつーのも血は赤いんだな。私が刈ってきたやつらはここまで赤くなかったぜ?」


 爪についた血は、降りしきる雨と混じりあい地面へと落ちる。


「だからって、どうもしねえがなッ!」


 互いに武器らしい武器は持っていない。徒手空拳での鬩ぎあいが続く。

 周りの部下たちは手を出さない。雫の実力であればこんな魔獣(マインドイーター)に打ち負けるということはないと信じているからだ。


「月閃!」


「夜送刃!」


 雫が跳躍とともに体を捻る。伸びた爪を三日月のように尖らせ、白の軌跡を描きながら胴体を抉り取らんと疾駆する。夜深に届こうとしたその瞬間、地面から伸びた幾つもの夜が網目状に拡がりその一撃を防ぎきる。

 白と黒の衝撃。鋭すぎる一閃は音速に迫り斬撃と化す。

 互いの技がぶつかり合い、再び両者の距離が離れる。


「やるな。その影、どっからでも伸びるってわけだ。最初の一撃の回避といい、悪くねえ。面白いよお前」


「影じゃなくて夜だよ。それはそうと僕も楽しいよ、いい暇つぶしになる」


「ぬかせッ!」


 間髪を入れず夜深に向かって跳躍する。体にひねりを加えて腹を抉らんと突進するも、夜深は寸でのところで回避する。

 夜深への攻撃を躱されたが、雫はそのまま森の中に突っ込み視界から姿を消した。

 その瞬間。


 パンパンパンパンパンッ!


 「ぅ……っ」


 無数の銃声が辺りに響く。

 夜深が目線を落とすと体中に痛々しい無数の銃痕ができていた。周囲にいた雫の部下たちが、夜深に向かって一斉射撃を行ったのだ。

 夜深は大量に血を流しながらも、ふらついた足取りで近くにあった大木にもたれかかる。体中から溢れる血はすでに致死量を超えていた。


「ふん、呆気ないな。テメー、私が真面目に相手をしてやるとでも思ったのか?」


 雫はそう言いながら大木の陰から現れる。

 夜深は答えない。いや答えられないのだろう。先ほどの銃弾は肺にまでも到達しており、もうまともに言葉を発することもできないのだ。

 おそらくもう数刻先まで生き続ける事は不可能だと、この場にいる誰が見ても明らかだった。


「悪りぃな。真面目にやり合えば、私たちは良い勝負になったかもしれねえな」


「水無瀬隊長……」


「うるせえ。別に後悔なんかしちゃいねえよ。殺るか殺られるかの世界なんだ。ぐだぐだ文句言える立場にねーんだよ、私たちは」


 雫は振り返り、もう助からないであろう夜深に短く別れを告げ、その場を後にするのだった。

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