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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第八章 『嫉妬』
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第二次試験開始

 敬語、すっかり忘れていた。今日は緊張することも無く、なぜかいつも通りの調子でやれていると薄々感じていたが、知らないうちに素が出てしまっていたようだ。

 というかあれだけ言ったのに、ミルちゃんもぼくのことを団長って呼んでいるし、これはもう取り繕いのしようがない。


「その、ただならぬ気配になんとなく察してはいたんですが、やはりあなたが団長さんだったんですね。先ほどのご無礼改めてお詫びいたします」


 九嵐の謝罪と共に、アリナが倣うように頭を下げる。嘘真朧としては完全に無かったことにするつもりだったのだが、そう簡単に割り切れるものでもないのだろう。

 とはいえ、いちいち構ってやるのも面倒くさい。とりあえずは気がすむまで、好きなようにさせておくことにした。


「あ、敬語に関しても苗鳩さんのやり易い形で構いませんよ。出来れば普段通りの形で接して頂いた方がありがたいというか……」


「それは、まあ。ありがとう。わかったよ」


 面と向かって言われるのもどうかとは思ったが、ここまでバレてしまったのならもう取り繕う必要もないか。嘘真朧は少し照れ臭そうに鼻を掻きながらそう返した。


「……」


「あのさ、別に謝ってもらいたいわけじゃないけれど、そう睨まないでくれるとありがたいかな?」


 嘘真朧は頭を下げる二人の先、腕を組み鋭い視線を送り続けている、燃えるような髪の男にそう言い放つ。しかし、和也はその目つきを一層険しくした後、何事も無いように目線を逸らすだけだった。

 理由があるなら言ってほしいとは思った。そのくらいのことで評価を下げない事は、彼ももう理解しているだろうに。


 立場上この場で尋問紛いに詰め寄ることも出来たが、他の人に申し訳が立たない手前、それ以上の追及は止めておくことにした。

 それに、彼がああいった態度を取ることにも、心当たりが全く無いわけではない。意外ではあったが理由は仄かに臭うのだ。焦げ残った煤の様な臭いが仄かに。


「では、えっと。これから試験の内容を説明します」


 一行は再度森の奥へと向かう。再度全長二十メートルほどの小さなトンネルを一つ抜け、十五分ほど歩いた先のとある地点。静止をかけた嘘真朧から試験内容が説明される。

 相も変わらず全豹和也は鋭い表情を崩すことはなかったが、文句を言うことも無く、この状況を黙して静観していた。


「これから一時間。既にキミたちにも連絡が行っている通り、今日はキミたちのチームワークを見させてもらいます。試験の内容はこの地区に存在する魔獣(マインドイーター)の討伐。とはいっても討伐数を競う為のものではありませんし、捕獲でも駆除でも無力化でも手段は問いません。行動について特に制限を設けることはありませんが、キミたちはともに肩を並べ戦う同士です。チームワークという言葉とその意味をしっかりと理解してください」


 送られてきたメッセージを、そのまま淡々と読み上げていく嘘真朧。そのほか、簡単な注意事項を説明し終えると、エアポケから無骨な銀色のイヤーカフを三つ取り出し、身に着けるよう指示する。


「耳にかけてもらったものは小型のカメラが内蔵されています。受信は一方にのみ。そちら側の映像と会話がこちらに流れます。こちらが発した声がそちらに届くことはありません。また、そちらからこちらに呼びかけるのも禁止とさせていただきます」


「……」


「もうお分かりかと思いますが、今回の試験、キミたちの行動の一挙手一投足が採点の基準となります」


 嘘真朧の言葉が静かに森の中に響く。三人は無言のまま、少し緊張した面持ちで装着を終える。開始の合図はまだだったが、採点はすでに始まっていると理解する。


「一時間が過ぎた時点で終了、終わり次第わたしたちから直接声を掛けさせていただきます。それでは、試験開始の合図を出します。準備はいいですか?」


 和也は嘘真朧をきつく見据えたまま返事をしない。九嵐は真面目な表情でアリナに視線を送ると、彼女も同じように小さく頷く。

 ミルに視線を向けると相変わらずの軽い調子で「準備OKっす!」と手を振っていた。


(全豹さんは、まあ予想通り。納得いかないという感じかな)


 しかし、肯定の言葉はなくとも否定の態度も見られない。嘘真朧の意向に沿う事には否定的でも、自分の勝手な判断で、彼らにまで迷惑をかけるつもりはないということだろう。

 嘘真朧はポケットから小型の端末を取り出し、画面に指を滑らせる。そして、ボタンを一つ押した瞬間――


「試験開始っ!」


 森全体が動き出したかのように、空気が一変した。

 木々の間から、不気味な音が響く。ざわめき、擦れ合う枝。そして、どこからともなく聴こえる低いうなり声。それは、小型端末から発せられる人間には聴こえないレベルの周波数が、魔獣(マインドイーター)の耳に伝わったことを知らせる合図だった。


 三人は示し合わせることも無く、一斉にこの場から飛び出した――かに思われたが。


「全豹さん。キミは行かないの?」


 和也は答えない。いや、その眼差しには少しばかりの迷いが見られた。彼らがいない今、口にしようか決めかねている様子だった。


「言いたいことがあるなら話せばいいよ。キミが納得のいくまで、いくらでも時間を取ってあげる。けど、ぼくの時間は無限でも彼らの時間は有限だ」


 その言葉に自身の行動を省みる。剃刀のような鋭い眼光で一瞥をして、和也はゆっくりと二人が向かった方角に歩き出した。


「嫌われてますねぇ」


「ふふ、ぼくは昔から嫌われ者さ」


 先ほどの一撃。炎系統の魔装の一撃。範囲は直線状に十五メートルほど。規模自体はそこまで大きくはなかったが、裏を返せば凝縮した熱量から考えるに明らかな殺意があった。

 いや、殺意というよりは意趣返し。殺意といった純粋な憎しみではなく、舐められたことに対する反抗の一撃。当たろうが避けられようが、結果はどちらでもよかったのだろう。


 木々の焦げ跡を見るに炎の質に歪みはない。魔紋書よりは魔装を身体に直接刻んでいる可能性の方が高いだろう。先日の面接。炎堂アリナが犯人だと思っていた焼け爛れた砂時計は、彼の手によるもの、ということだろうか。

 あの砂時計は設置型の魔装が刻印されたものだ。そちらには明るくはないが、魔装紋を刻印した器『魔装器(まそうき)』であることには間違いないだろう。

 効果はおそらく建物内の座標を誤魔化し、疑似的に空間内を歪曲させるもの。階段を使って二階に上がったにも拘らず、部屋番号を示すプレートは百番台が掲げられていた。複雑ではあったものの地図上の立地的に違和感は初めから感じていた。

 始めにあの倉庫に訪れた時、随分と短い通路だなと思ったが、面接が終わって息抜きに外に出ようとした時、明らかに最初とは構造が変わっていたからな。

 それに、あの倉庫には見えないように、巧妙に隠されたマイクロカメラが何台も設置されていた。


(レギオンはあの構造に気づけるか試していたのか?)


 ともすればそれはぼくらに向けてなのか、彼らに向けてなのか。はぁ、正直上が何を考えているか分からないな。それに、今はそんなことを考えている場合でもないか。


「行こうか、ミルちゃん。彼らが心配だよ」


「はーい」

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