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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第八章 『嫉妬』
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森の奥には

 翌日、学校が終わると一直線に秘密基地までやって来た。

 今日は学校も四時限目で終わりの日だったし、迷うことなく足が動いてくれたので、いつもの到着よりも二時間以上早く着いた。


「……」


 ひとまずカバンをシートの上に置き、あたりを見回してみる。黙り込み、耳を澄ませてみたのだが、昨日聴こえたような音は聴こえてこなかった。

 静まり返る森の中、造りかけのお城の城壁。世界にアタシ一人だけになるこの瞬間。前まではこの瞬間こそが心地の良いひと時だった。けど、もう知ってしまった。人の温かさを。一瞬だけでも十分すぎるほどの代え難いほどの温もり。


「あー、あー」


 声を出せば澄んだ緑に声が吸い込まれる。言葉を話して、返してもらって、何でもいいから会話をしたかった。

 アタシは秘密基地の周辺を一通り歩き回ってみた。当たり前の如く執音くんや茉莉ちゃんの姿はどこにもない。

 机の上に置かれたままの食べかけのスナック菓子や、造りかけだろうお城の壁もそのままになっている。素人目にも明らかに触れられた痕跡がない。


「やっぱり、まだ帰ってきてないってことなのかな。ねえ」


 アタシは一人で呟いてみたものの、誰も答えてくれるわけではない。

 スマホの時計を見てみると、まだ午後二時半を少し過ぎたところだった。こんな時間に来るのは初めてだ。もしかしたら、二人がここに来るには少し早い時間、なのかもしれない。初めてここで会ったのも夕方近くだった。

 二人に会えるとしたら、今日も同じくらいの時間になるのかもしれないな。そう適当な理由付けをして無理やりに納得させると、一人でこの場所で待つことに決める。

 アタシは散らばったスナック菓子を一つ摘みあげながら、昨日のことを思い出していた。


「結局、昨日のあの音は何だったんだろう?」


 その時は怖さと不安で深く考えられなかったけれど、今はこうして落ち着いて思い返すことができる。確かにあの影を視た時、何かに視られているような感覚があった。言い換えれば、あちらもこちらを認識していたということになる。ほら、ニーチェの深淵をのぞく時、深淵もまたなんとやら、というヤツだ。

 もし仮にそうだとしたら、あの時あのまま追いかける選択を取るというのは、非常に危険な行為だったのかもしれない。悪意のある何かであれば、藪蛇になってしまうのではないだろうか。


「はぁ、ダメだ。何言ってんだろ、アタシ」


 思い出したとしても、輪郭をなぞるような希薄さしかない。それが現実だったのか、それとも単なる思い込みだったのか結局のところ――今となっては“分からない”。

 もし、執音くんたちだったのなら、声ぐらいかけてくれるはずだ。「どうして遅れたんだ?」って、声をかけてくれるはずなのだ。

 なら、そもそもそんな些細な事、どうだっていいのだ。


「あの音の正体が執音くんたちじゃないのなら、どうだっていい」


 そう小さく呟いて、アタシは座り込んで大きく伸びをした。

 けど、早くに来たところで何もすることは無い。しばらくすると、退屈な時間がやってきた。昨日ほどの緊張感もなく、一人で何をするでもなくじっとしているのは正直しんどい。

 鞄の中からタブレットを取り出し、少し宿題でも終わらせておこうかと考えたが、森の中の気持ちのいい空気に包まれると、どうしても集中できなかった。


「二人が来るまで、少し周りを散歩してみようかな」


 そう思い立ち、アタシは秘密基地の周りを少し歩いてみることにした。昨日のガサガサと鳴った音、森の奥へ行こうかとも考えたけれど、正直かなり怖かったので止めておくことにした。

 周辺を何周か回った後、秘密基地に戻ると、どこか違和感を覚えた。


「あれ?」


 基地の入り口付近の地面に、小さな足跡が残っている。靴跡の大きさからしても小さな子供が歩いたような跡だ。

 それも、一つや二つではなく、かなりの数がバラバラの方向に向かってついている。この場から離れている間に付いたというわけではないだろう。たぶん、気に留めず見落としていただけだ。


「執音くん?茉莉ちゃん?」


 周囲を見渡しながら声をかけるが、返事はない。少しだけ胸がざわつく。おそらくは彼らのもの。昏かったから気がつかなかっただけで、もしかしたら、昨日の時点ですでにあったのかもしれない。

 けど、なんだろうか。具体的な理由は出てこないが、何かおかしい気がした。

 バラバラの足跡の先を辿ってみると、それは秘密基地の外へと続いている。そして森の奥――昨日あの影が消え去った方角へと伸びていた。


 ごくり。

 思わず、生唾を飲み込む。あの影。もしかしたら、本当に――


「それか、その、逆……」


 結局、昨日は夢を見られなかった。楽しい夢が見たいとあれだけ寝る前に妄想をしたのに、アタシの馬鹿の脳味噌は、それらを無視して朝まで急行列車を走らせるだけだった。


 ううん。それだけじゃない。

 起きた時、背中が汗でびっしょりだった。

 いくら頑張っても思い出せないけれど、何か悪い夢でも見たのだと思う。


 昨日の出来事が頭をよぎる。アタシの悪い妄想。あの影が“魔獣(マインドイーター)のものだったとしたら”。そんな考えが浮かぶと同時に、生ぬるい汗が背中を伝う。

 だとしたら。もしこの足跡が執音くんと茉莉ちゃんのものだとしたら、放っておくわけにはいかない。アタシは深く息を吸い込み、震える手をぎゅっと握りしめる。


「大丈夫。何もないって。昨日も結局何も起きなかったんだから。怖い事なんて何も無い」


 もう一度理想の未来を妄想する。

 森の中には何も無い。執音くんたちは無事なのだと。そう自分に言い聞かせ、足跡の先を追うことにした。

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