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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第八章 『嫉妬』
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アタシと少年と少女2

 アタシの――


 アタシの――何だ?


 アタシの、唯一安らげる“(いばしょ)”。そう思ってた。いや、そうなんだ。そうだったことには変わりない。今は雨で、昨日突っ込んで崩してしまったせいで見る影もないけれど、そうだったんだ。それは確か。

 だけど、今はこうして見知らぬ少年少女がその場所に立って替わっている。この状況を見れば、この場所は彼らのもので、彼らから見ればアタシこそが異分子。この秘密基地に居てはならないモノなんだ。

 何故だろうか。そんな聞き分けの良い考えが頭の中に流れ込む。アタシが黙って立ち去れば、彼らはあんなにも敵意を剥き出しにして、威嚇し続ける必要も無いのだ。あんな風に震える必要も――ないのだ。


 よく視れば肩だけじゃない。手元も、震えていた。

 秘密基地と同じボロボロの身体で、肩を震わして、鬼気迫る表情。

 これはきっと、アタシ個人に対しての感情じゃない。自分の縄張りに立ち入る外敵の。もっと言えば、後ろで同じように震えている少女を、“守らないといけない”という、強迫観念から来る感情。


 これじゃあまるで。

 まるで――


「いいよ。もう、わかったよ。もう、ここには来ない」


 言葉だけじゃない。その気がないと伝わったのだろう。少年の持っていた棒切れに込める力が軽くなった。そんな気がした。

 アタシにはよく分からないけれど、なんかカッコいいな、そう思った。後ろにいる子、茉莉姉って言ってたからたぶんだけど、お姉さんかな。“下がってろよ”だなんて、アタシも一回は言われてみたいものだ。

 もう来ない。この場所はアタシの居る場所じゃない。諦めきれない気持ちをぐっと押し殺しながら、アタシは踵を返す。


「お前さ、きれいだな」


「へ?」


 追い打ちをかける様に罵声を浴びせられると思っていたミルは、思ってもみない一言に振り向き、キョトンとする。


「もしかしてさ、どっかの家の子?」


「え、えっと」


「もしかしてさ、ここってお前の秘密基地だったのか?」


 少年の顔からはもう敵意は消えていた。どこか疲れたような、それどころかその反対、縋る所を探すような弱々しさすら感じられた。


「黙ってんなよ。答えろよ」


「……っ」


 上手く言葉が回らない。さっきは勢いに任せて喋っただけだ。いうならば独り言。一方通行の言霊。

 けど、今は違う。会話だ。少年の問いかけに対して、理性を以て言葉を返す。誰とでもする誰でもできる、なんてことない会話。それだけのはずなのに上手く喋れない。

 そう言えばアタシは家族と以外、まともに会話をしたことすらなかったんだった。


「おいッ!」


 一向に喋らないアタシに対して、苛立ちから語気が強くなる。だから、なおさらに委縮してしまう。


「るーくんっ!やめてあげてよっ!あの子、怖がってる」


 見るに見かねてか少女が少年に声をかける。姉とは言っていたが、たぶん、アタシよりも一つか二つ年下だ。少年と同じくボロボロの身なりで顔色も悪く、栄養のあるものを普段から摂れていないんだろうことがよく分かる。

 それからアタシが落ち着くまで時間を置いて、お互いに事情を話し合い、少なくとも追い出したいという誤解を解くことは出来た。


 彼らの名前は少年が「るーくん」こと執音(とるね)くん。そして茉莉(まつり)ちゃん。孤児院の虐待から耐え切れずに逃げてきたという話らしい。なんでも、その孤児院は悪名高いことで有名で、気に入らないことがあると体罰を行ったり、過剰な労働をさせたりと、とにかく酷いところだったようだ。

 苗字については訊いても口籠るだけで答えてくれることは無かった。たぶん、言いづらい事、もしくは言えない事なのかもしれない。


「本当にお前の場所だったんだな。ごめん。ぼく、お前のこと殴ろうとしてた」


「い、いいよ。秘密基地なんて、誰のものでもない、んだしさ。アタシも来たくて来てたワケじゃ、ないし」


「……」


 落ち着き事情を話して理解はしてもらえたが、三人が三人とも会話が得意というわけではなく、話せる話題も尽きれば、すぐに沈黙が戻ってくる。

 今日は雨も降っていないし、風の声も聴こえない。視界の隅を飛ぶ小鳥すらも、気を利かせるかの如く鳴き声を慎んでいる。だから、居たたまれなくてしょうがなかった。


「明日も、来てよ」


 静寂を破るかのように茉莉ちゃんがそう言った。


「でも――」


 アタシはこの場所を彼らに明け渡そうと考えていた。ここは“アタシだけの城”だったことに変わりはないけれど、別に彼らのような深い理由があるわけでもない。

 それに、彼らが大切に使ってくれるのなら、それでいいと思ったからだ。


「茉莉たち、片づけるから。ここに住ませてっ」


「え」


「来てよ。ぼくもちゃんと謝りたい。ごめんって言ったけど。ごめんじゃ足らないから。あと、さっき怒鳴ってごめん。ごめんばっかで……ごめん」


 来てもいいのだろうか?


「えっと」


「ミルがいない間はぼくたちが守っておいてやるからさ」


 その言葉にウルりと涙腺が緩んだのが自分でも分かった。それが何だか恥ずかしくてそっぽを向く。あれ、昨日に続いて今日も涙が出るなんて、あり得ないでしょ。

 あはは、アタシ、もしかして泣き虫だったのかな。

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