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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第七章 生き続けるということ
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生き続けるということ

「それから私は、これまで詐欺で金を騙し取った被害者のもとに訪れては、謝罪を繰り返しました」


 騙し取った金は全額返し、誠意を示した。何度も頭を下げ、罵声を浴びることもあった。中には怒りを通り越して呆れたような目で見る人もいたし、信じてもらえることはなんてまるでなかった。全部身から出た錆、当然の報いだ。


 俺、いや私は全てを清算し終えた暁には自ら身を断つ気でいた。

 地元ではそれなりに有名な、身投げの名所として知られている岬に訪れていた。時刻は十七時過ぎ。あの時と同じ夕日に照らされる海がとてもきれいに視えた。

 見渡す限りには誰もいない。寄せては返す波が、私に呼びかけているように感じられた。

 もう、楽になれよ、と。


「ねえ、まだ逃げ続けるの?」


 ふいに声を掛けられる。


「えっ?」


 私は弾かれるように咄嗟に振り返る。そこにはあの少女、工藤風花が立っていた。


「ごめんね。燈さんのスマホにGPS仕掛けた」


「え!?」


 そうだったのか。全然気がつかなかった。だからこんな場所まで追ってくることが出来たのか。初めて会った時からいささか疑問はあったのだが、もしかしてこの風花という少女、ただ者ではないのだろうか。


「本当はこんなことしたくなかったけどさ、ごめんね。だって、燈さんの眼視れば分かるよ。迷いがないってそういうことでしょ?」


「俺は――俺は」


「決意が固いっていうのなら止めないよ。あなたの人生はどこまで行ったってあなただけのものなんだし」


 そう言って少女は後ろを向く。本当に私に迷いが無いのであれば、このまま飛び降りてしまうことも出来る。私は今年、齢二十歳となる男。片や相手は学生服の少女だ。まだ怪我を抱えているとはいえ、力で負ける道理もない。振りきってしまえるだろう。


「もちろん、あなたの事は誰にも言わない」


 けれど、出来なかった。一人で決めるにはいつだって覚悟がいる。決めることが出来ないから、こんな選択を選んだのだ。


「けど」


 ____だから。


「けどさ」


 ____私はその言葉を。


「もし、まだ誰かを助けたいって気持ちがあるなら。本当の意味で助けたいって思えるなら」


 ____どこかで期待していたのかもしれない。


「あたしといっしょに“人助け”、してみない?」


 少女は振り返りながら、あの日の。向日葵のような笑顔で手をこちらに差し伸べてきたのだった。


「今度は偽りじゃない。誰かの命を救うための“本当の人助け”を」


 だから、私は此処にいる。あの熱い血潮の様に湧き上がる想いと共に此処にいる。


「私は君のお姉さんに救われた」


「……」


 燈の話を聴き終えた風太は黙っていた。その表情からは何も読み取ることができない程に、()()感じさせなかった。

 風太の許可も得て、千寿流とアリシアもその場に居合わせていたのだが、さすがに空気を読み黙っている。だから、燈が話し終えた病室は沈黙が支配することとなった。


「そうか。んで、今度はオレがアンタに救われたってわけだ」


 数分間の沈黙を破ったのは風太だった。


「なんでオレに話したんだよ?これはアンタと姉貴の問題だ。オレには何も関係がねえ」


 燈はすぐに返事をしなかった。彼は一度視線を下げ、重苦しい空気の中で深呼吸をするように小さく息を吐いた。どうやら、どう返答をすればいいのか考えているように見える。


「すみません。私にも分からないです。けど」


「……?」


「きっと、赦してほしかったんだと思います。話すことで、理解をしてもらいたかった。他でもないお姉さんの弟でもあるあなたに。情けない話、まだ眠れなくなる日がありますから」


 そう言って顔を上げた燈は、唇の端を噛み、今にも泣きだしそうな顔だった。


「なんだよ、そりゃ。オレはアンタには感謝しかねえよ。アンタがいなかったら死んじまってたかもしれないんだからな」


「……っ!風太、さん゛っ」


 生きるか死ぬか。生きるべきか死ぬべきか。そんな話、簡単に答えを下せるものじゃない。事件の被害者からしたら、まだコイツの事を殺したいほど憎んでいて、赦していない奴もいるだろうから。

 けれど、死ぬことが赦しではない。死んで赦されるならそれは間違いってことだけは言える。

 別に逃げてるとは、思わねえけどよ。

 もしオレがコイツの立場だったのなら。


「そう思うんなら、長生きしろよ。んで、一人でも多く助けてやりゃあいい。それぐらいは誇ってもいいんじゃねえの?アンタにはそれが出来るんだからよ」


 死ぬのはいつでも出来る。けど、死んじまったらそこで終わりだ。そいつだけは確かなんだからな。


「……はい゛っ」


 そう返事を返した燈の泣き顔は、泣きつつもどこか救われたような、何か決意を決めたような、そんな清々しさを感じさせる表情だった。

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