Amplifier
身体能力の強化。それはアジリティの上昇に伴っての純粋なパワーの強化。だけに留まらず、肉体の硬質化、要するにフィジカル面でのもろもろの強化。単純にみれば再生すればするほど強くなるバケモノみてえな野郎だ。
しかし、ここにきて小手先の荒さが垣間見える。オレへの攻撃にわずかにぶれが生じたのだ。つまり、上がり続ける身体能力に、頭が付いていけていないということ。
オレも異能に目覚めたばっかの時はそうだったからよく分かる。違和感なんてレベルじゃあない。自分の身体が自分じゃねえみたいなそんな浮遊感。何十年と車のハンドルを握ってるヤツでも、いきなりスポーツカーに乗り換えたら、上手く乗りこなせねえのといっしょだ。
「沸騰しろ。上げるぜ、ボルテージ。Amplifier limited」
アンプリファイアとは風太が修行で身につけた技術。限界を超えての行使に異能の限界許容量が増え、一時的に従来の速度以上での加速が可能となる、時間制限付きの身体強化である。
まだまだものにできている範囲内ではないのでコントロールに荒さはあるものの、肉体強化が一方通行のゴリラ型魔獣と違い、好きなタイミングでの強化が可能。
ただし、デメリットとして使用後全身を襲う強い痛みと、無理がたたれば数分間の異能の完全使用不可。さらに痛みにより、暫くの間動くこともままならないような状態が続く。いわば諸刃の剣のような技である。
そして、先ほどの勇璃の足に多大な負担をかけたであろう様子を見ての着想。派生技でもあるアンプリファイア・リミテッド。
神経を研ぎ澄まし、アンプリファイアにおける身体強化を一点に集中させることで、通常よりも抑えた出力で既存の技の大幅な強化が可能となる。しかしこれは風太自身の思い付き。ぶっつけ本番ではあるので、その変則的な行使の負担がどれほどのものとなるか、神のみぞ知るという所か。
「ぐぅガッ?」
「Unlimited Blade__ッ!」
繰り返される攻めの間隙。懐に潜り込み、異能の力をゼロからMaxへと転換させ、斜め上に抜ける様な浴びせ蹴りを放つ。魔獣自身も何が起こったのか分からないだろう。
その胸には切れ味の良い刀で斬れたような切り傷が、胸元に二つ重なる様に付けられていた。自分の身に起こったことを事実と受け止める間もなく身体が反応し、一歩二歩と踏鞴を踏むように後退する。それは深く、装甲を斬り裂き、肉を抉り、骨すらも両断するほどの威力だった。
魔獣は身の危険を感じたのか両腕で傷口を覆うように重ね、追撃を許すまいと後退を続ける。
「マヌケ。軸足が本命なワケねえだろ」
体勢を崩した魔獣の後方に、いつの間にか回り込んだ風太がそう呟く。
先ほどの一撃。渾身を振り絞って放たれたと思われたUnlimited Bladeは利き足とは別の左足。余力を残す手加減をした一撃だった。魔獣には全くの想定外。その威力から連発が出来ないほどの全身全霊の一撃だったと感じたことだろう。
だから、この強襲は確実に決まる。
冷静に戦局を読みきり放たれた、勝利を捥ぎ取る一振り。
「crystalBladeッ!」
装甲の薄い項めがけて放たれる、研ぎ澄まされた水晶の如き一閃。魔獣は断末魔の悲鳴すら上げること叶わず、弧を描きながら首が吹き飛んだ。
「っぐ、さすがに頭吹っ飛んだら再生なんざ出来ねえだろ」
身体、全身、特に足にかけて鋭く突き刺すような痛みが走る。条件を絞っても今のオレには異能を解放したままでの長期戦は不可能ってとこか。強化箇所を限定的にしたおかげで、全身の強化である本来の形『Amplifier All』よりは痛みは少ないものの、実用性はまだまだって感じだな。
「ったくよ、慣らしにゃヘビィな野郎だぜ。フン、まあ、たまにはいいか」




