表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第七章 生き続けるということ
265/417

異様さを孕む街

 風太自身まだ満足な成果とはいえなかったが、修行などやろうと思えばいくらだってできてしまう。終わりのない修行に一度切りをつけて、人が歩く住宅街までやってきたのだが――


(おかしいな。臭う。なんだ、この違和感は)


 とはいっても実際に何らかの臭いがするわけではない。この場合、気配を感じ取るといったほうが正しいだろうか。この街全体を覆うように異様な雰囲気が立ち込めているのだ。


(なんだこりゃ、気分の良いモンじゃねえな)


 この歩道は以前にも通ったことがある道だったが、少なくともここまでの圧を感じることは無かった。とは言っても人が全く見られないというわけではない。向かいの歩道には親子連れが、目の前には外回り中なのだろうか、五十近いスーツ姿の男性が歩いている。

 街中ということを考えると、この時間帯にしては明らかに人通りが少なかったが、魔獣(マインドイーター)が現れたというわけではなさそうだ。


(気だるげだが、何事の無いような平然とした顔をしてやがる。こいつらは何にも感じるもんが無えってことかよ)


「おい、アンタ。ちょっといいか?」


「ん、ああ。どうしたんだい。ワタシもこれから用事があってね。手短に済む話ならいいんだが」


「ああ、時間は取らせない。訊きたいことは一つだけ、最近魔獣(マインドイーター)を見かけなかったか?」


魔獣(マインドイーター)魔獣(マインドイーター)ってあの魔獣(マインドイーター)か?黒いバケモノの」


「ああ」


「映画の話だったりする?」


「違う、リアルだ」


「いやいや、見てないよ。そんなものニュースや創作の中では見たことはあるけど、街中には現れないだろ?」


 街中には現れない。それが基本。魔獣(マインドイーター)の習性。けど、地方では魔獣(マインドイーター)の被害に遭って街一つが無くなった、なんて話もある。

 被害の規模は大小あれど魔獣(マインドイーター)に全く遭遇しない人生など、風太にとっては信じられないような話だった。


「そういうもんか。全く見たこと無いのか?」


「いや、ワタシも昔一度見たことはあるけど、それも遠巻きにだ。あれはたしかワタシがまだ二十代のころだったかな。友だちと少し遠くの山にキャンプに行った時だよ。あの時は腰が抜けそうっていうか、実際に尻もちをついてしまったけど、そのまま行ってしまってね。幸いそれだけで済んだんだよ。ああ、不幸なことといえば(しるべ)ってのもニュースで見たことはあるけど、最近は平和そのものさ。これって魔獣狩り(ハンター)って人たちのお陰なんだろ?」


「わかった。オレは地方から来た旅人でな。ここらの情勢に疎かったんで助かった」


「へえ、このご時世に命知らずな若者もいたもんだ。いやはや、これも若さが為せる業ってやつかな。あ、もしかしてあなたも巷で噂の能力者(アクトプレイヤー)、だったりするのかい?」


「いや、そんな大層なもんじゃねえよ。何にせよこの街は安全ってわけか。訊きたいことはこれだけだ。ありがとな」


 中年の男は「じゃあ」と手を振り、朗らかな笑顔を返しながら去って行った。


 先ほどの男の話によればこの街に魔獣(マインドイーター)はいない。が、この異様な閉塞感。能力者(アクトプレイヤー)か?能力者(アクトプレイヤー)だとしたら悪玉、堕愚者(フール)ってこともありうるのか。たしか星一朗ってヤツを殺った男もそうだったな。


 既に平塚の近くまでは来ているがあえて場所は告げず、オレはスマホを開き千寿流とフェルメールを含めたグループに「悪い、もう少しかかる。また連絡する」とだけ打つと、そのまま仕舞わずにニュースサイトを開く。

 サイト内の情報を流し見しながら、オレは頭の中で先ほどの男の言葉を反芻していた。確かに、あの男はこの街に魔獣(マインドイーター)はいないと言っていた。しかし、オレの感覚がそれを否定している。異様な閉塞感、圧迫されるような空気の重さ――何かが起きていることは間違いない。はずなのだが、どれだけ探してみても、気になるような物は結局見つからなかった。

 だとしたら随分と巧妙だな。魔獣(マインドイーター)にしろ堕愚者(フール)にしろ厄介なもんに変わりはねえ。職業柄見て見ぬ振り、ってわけにもいかねえのが難儀だぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ