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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第六章 それぞれの想いと
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焼け焦げた街で残ったもの

 案の定、とある廃村の地下に作られた施設が破壊されたことで、世間が騒ぎ立てるようなことは無かった。きっと、この世界の暗部。公表できないようなことだからなのだろう。もし、少しでも情報が漏洩してしまえば、平穏ではいられなくなるから。


「火事も落ち着いたみたいだね。おっと……」


 手のひらからリードがすり抜け、子犬が一目散に駆けていく。


「ちょ、待ってよ!」


 慌てて呼び止めようとするも、子犬は止まる様子もなく、焼け落ちた家屋の跡地へと一直線に向かっていってしまう。この辺りはまだ倒壊した建物が不安定で、瓦礫の下敷きになる危険がある。メルルとあたしは顔を見合わせることもなく、その姿を見失わないように後を追いかけることにした。


「やれやれ、あんだけしおらしくしてると思ったらこれだ」


「あの時もそうだった。きっとこの場所に何かあるんでしょ」


 ついに子犬が目的地にたどり着いたらしい。焼け落ちた家屋の残骸の前で突然立ち止まり、低く鳴き始めた。


「ここは、なんだ?」


 あたしとメルルも、その場所で足を止めた。目の前には建物だった瓦礫の山があるだけだ。目を凝らして辺りを見てみても、それ以上何も見つけることは出来なかった。


「まあ分かるよ。この犬っころはさ、ここの家の飼い犬だったんだろうなってことぐらいはさ。けど」


「うん。見事に燃えちゃってるわね。火事が起きたのは深夜零時近いって言われてる。どういった状況で火災が発生したのかまだ調査中みたいだけど、逃げ遅れた人も多いって話だ。恐らくここの人も」


「くぅうぅ~~~ん」


 悲しげな泣き声が行き場を無くしたかのように空へと吸い込まれていった。こんな時、どうしたらいいのか分からない。何もしてあげられることなんて無いのは分かっているけれど、何かできることは無いだろうかと、当てもなく考えてしまうのだ。


「ん、よく視ると柱、何かで殴りつけてへこんだような跡がいくつもあるな。他にも、ほら」


 メルルはそう言って瓦礫の山を指差した。そんなものよく見つけるなと思ったが、なるほど、見れば一目瞭然、明らかに火事では付かないような傷跡がついていた。強い力で殴りつけたような。殴る?


「メルル。もしかして」


「ああ。あの男って可能性はあるかもな。いや、この犬っころはあいつらが連れてたんだ。十中八九間違いないだろうよ」


「……」


 子犬はどこか悲しげな瞳で焼け落ちた家をじっと見つめていた。そこにかつての家族が住んでいたのだろう。今は、もう何も残っていない。ただ、瓦礫と灰の山だけ。塵と化した黒い煤が風に吹かれて舞うのを眺めながら、あたしたちもただ立ち尽くすしかなかった。

 あの男たちは軍人なんかではなく、恐らく物取り。それも住居人が居ようが居まいが関係のない、居直り上等の強盗の類だろう。この子犬の家族は不幸にも、あの男たちに目を付けられてしまった。そしてどこか虫の居所に触れたのか、拷問紛いの暴行の末殺害、そして、証拠をできる限り消すために火を放ったということだろうか。


 ここまで広範囲の放火に及んだのは、攪乱のため?それとも放火したその全てで物取りを行ったのか。はたまた警察の捜査の手を遅らせるためだけに、何件も火を放って回ったということなのか?どれをとっても考えるだけで反吐の出る話だったが、あそこまでの大人数であるならば可能かもしれない。


「ねえ、メルル。異能(アクト)って何のためにあるの?」


 あたしはやり場のない憤りを空に向けて吐き出しながらそう訊ねた。


「……魔獣(マインドイーター)を駆逐するため。と言いたいところだけれど、実際どうなんだろうね。神様ってやつはさ、もしかしたらこの世界が不出来だと笑っててさ、力を持たせて愚かな人間どもで同士討ちさせようって魂胆かもしれない」


 なんだソレ。性悪にもほどがある。


「ははっ、それなら見事よね。自分は手を汚さないで視てるだけ。何もしなくても諍いあって勝手に野垂れ死んで行くんですもの。低予算のやっつけB級映画よりよっぽど面白そうよ」


 けど、神様なんていない。


 神様なんて人間が勝手に生み出した偶像に過ぎない。祈ったから何が起こるでもない。今日は今日、明日は明日で何事もなく過ぎていくだけ。

 運命を怨めど感謝するようなことなんて一つもしてもらった覚えはない。居ないものに祈るなんてそれこそ喜劇だ。


 じゃあ、あたしはどうしたい?

 生きてるだけでいいなんて思ったことは一度だって無い。

 生きるためには生きる希望が必要だから。


 そんな希望を奪う誰かがいるのだとしたら、あたしはそいつを許さない。別に正義の味方なんかになろうなんて考えはない。ただ、あたしが許せないと思ったから許さないだけだ。


「いいよ、その子犬、警察に預けよう。ちょうどウザかったところだし。それにさ、あたし、犬って媚びへつらうだけで嫌いなんだよね。言ってなかったと思うけど」


「初……」


 それは怒りか、哀しみか。そう小さく吐いた初の唇は微かに震えていた。

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