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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第六章 それぞれの想いと
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ざわつく森にて

 バキリ、ベキッと木枝を踏む音が近づいてくる。

 この場に似つかわしくない軽薄な足音が、静まり返った廃村の空気をざわつかせた。既に日は暮れている。

 連なる木々が障害物となってどこまでも視界を妨害する。雨は降らずとも薄暗く煙ったような空気が、窮地にいるぞとその鼻孔を刺激し続けた。

 こちらからは相手の姿を視認できない。声のする方からある程度の方向は把握できるものの、確証は持てない。一日の探索で身体が疲弊しているこの時間帯を待っていたのか、それとも単に視界が悪くなったから奇襲をかける気になったのか、そのどちらもか。

 戦いの基本『先手を取る』というアドバンテージが完全に失われているこの状況、相手の実力も測れない。有体に芳しくないと思えた。


「なんだぁ?その惚け顔は。特にそっちのガキ。ガキは家に帰ってお寝んねの時間だろ?保護者ならきちんと教育してやらねえとなぁ、オイ」


 どこから攻撃が来るのか気を張り巡らして集中をしていたのだが、その思惑を嘲笑うように、にやりと不敵な笑みを浮かべる大男が目の前に立っていた。

 姿は視えないが足音が重なって幾つも聴こえた。後方に狙撃手でも控えているかもしれない。ならば姿を見せる意味合いもあるだろうか。


「メルル」


「ああ、随分と自信たっぷりさんだな。こちとら腹が減って仕方がないってのに」


 相手に聴こえない程度の声で話す。そう言えばお昼からまともな食事、特に水分を取っていないことに気づく。軽い脱水症状に陥っているのか、思い出して視界が少しブレる。全く、都合よく忘れていたのだから思い出させてくれるなと、脳内で悪態を吐いた。


「だんまりか?それとも神様にでも祈ってるのか?ならまあ正解だな。オメエらは今日、不運に見舞われてあの世に逝っちまうんだからな。しっかり媚び売って冥土の派遣先は良いトコ就けるといいよなぁ?」


 選択肢は無い。何があってもここから生きて返すことはしないとそのぎらつく目が訴えかける。

 いや、それはおかしい。違和感を感じる。不愉快な疑問。ザラザラとしたノイズ音。


「なんだよ初。何かあるのか?」


 あたしの表情を読み取ったメルルが呟く。


「なんでアイツはわざわざ姿を見せたのか気になった。だってそうでしょ?生きて帰すつもりがそもそも無いのであれば、声をかけるなんて馬鹿なことをする意味が分からない」


 そうだ。話し合う気が無いのなら姿を見せる意味などない。相手が能力者(アクトプレイヤー)の場合、いくら自分の実力に自信が在ろうとも、悪戯にリスクを背負うだけにしかならない。ならば、間抜けに声を掛けたりせず、黙って遠距離から警戒心ゼロの哀れな獲物を狩ればいいだけなのだ。


「それは、そうだ。けど、あの顔見てみな?『実力十分、やる気マックス!どんな重いものでも運んでみせます!何でもやります!』ってな顔だろ?」


 何だその引っ越し業者の謳い文句みたいなのは。言いたいことは分かるけど。


「とどのつまりな、ナルシストなのよ、彼は。だから遠慮せずに蹂躙できる獲物を見つけて、鼻の穴広げて興奮してるのさ」


 筋骨隆々。厚手の服の上からでも鍛えられていることが分かる体格だ。その自信に満ちた表情はその肉体に裏付けられているのだろう。

 大男は口角を釣り上げ、不気味な笑顔を浮かべながら、この状況を心底楽しむように、腕をポキポキと鳴らしながらこちらへ歩み寄ってきた。


「おいお前ら、手を出すなよ。俺様の獲物だ」


無動(むどう)さん、油断しないでくださいよ。こんな時間にこんな場所。子連れってのも異様そのものじゃないですか。恐らく奴ら、能力者(アクトプレイヤー)の類ですよ、これは」


「そんなことは解ってんだよ。だから面白いんだろうがッ!」


 その身を案じる声を一喝する一回り大きな声。空気さえ震えるその音に森が一層ざわつく。逃げも隠れもしない。卑怯な手も使わないってことか?

 やれやれ、メルルの言っていることは大当たりみたいだ。こう暑苦しい男ってドラマでしか見たことがなかったけど、実際こう相対してみると話の通じなさがハンパじゃない。

 分かり合えない人間との会話ってのはつくづく無駄な時間だと実感させられる。まあ、価値観が合わないから話し合いにならないことは分かっているのだが、あたしの嫌いなタイプがまた一つ追加されそうだ。

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