アリシアとリリアン3
それからのわたしは姉妹の絆を取り戻すことに必死でした。
「ごめんね、リリア。わたし、視えてなかった、と思う。何も視えてなかった。自分のことしか、いや、自分のことさえも視えて、無かった、と思う」
別に中学受験をしなくてはいけないわけではなかったんです。取るに足らない、ただのきっかけ。貴方は機転が利いて頭が良い子だからと、親から何となく勧められて、流れるように勉強を始めただけでしたから。
バカを言え。たった一人の妹の存在さえ蔑ろにしてしまう人間の、どこが頭が良いというのだろうか。
「ううん、気にしてない。それにお姉ちゃんはわたしのこと、ずっと想ってくれてたよ?」
そんなわたしと違い、リリアは頭の良い子でした。
だから、わたしの胸中を察して、何でもないよと笑ってくれたんです。何も無かったよと赦してくれたんです。
きっと、泣きたかったんだろうな。わたしに抱きつきたかったんだろうなって。そう思ったけれど、子供のままの意固地なわたしは何も言うことが出来ませんでした。
今でもあの消え入りそうな笑顔が忘れられません。
だってあの三年間を。子供にしてはその人生の多くを占める貴重な時間を、わたしたちはもう取り戻すことが出来ないのだから。
時間を戻せるなら、何も考えずリリアを抱きしめたい。
「けど、もう終わったんでしょ?銀ノ木に行けばリリアちゃんにも会える。そんな悲しい顔しなくてもいいと思うなっ」
千寿流はアリシアがリリアに、家族に会いたいから銀ノ木に行きたいと考えていた。けれど、銀ノ木は今、異常気象に見舞われている危険な地域だから、自分や風太を危険に巻き込んでしまうと思い躊躇っていたと思っていた。
それは半分は当たっていたのかもしれない。
アリシアにとって、今は千寿流も風太も大切な仲間である。だから、彼らの身を案じるのであれば、銀ノ木に行く事自体を止めるべきだからだ。
けど、半分は間違い。
「いえ、無理ですよだって」
そう言って口籠る。鈍感な千寿流ももう気づいていた。いや、もしかしてその片鱗は既に感じ取っていたのかもしれない。
けれど、そうであってほしくないと。残酷な現実通りであってほしくないと、願いを捨てきれなかった。部屋の隅に残った埃ほどの、吹けば飛んでしまうほどの願いであったとしても、願わずにはいられなかったのだ。
「もう、死んじゃってるんですから」




