VR格ゲー『InnocenceRed~イノセンスレッド~』
あと一週間ほどで十月も終わる。あれからちょうど二週間が経っていた。
ここらの地域では、冬の到来を感じさせるような寒風が吹きつけることもあれば、時折茹だる様な猛暑日が続くこともある。だから、体調を崩すものが多く、魔の季節と云われることもあるようだ。
幸いにも今日はその中間。過ごしやすい涼風が吹く日だった。修行期間として風太が提示した期間は一か月。それが長いのか短いのか分からなかったが、必要だというのならば待ってあげようと思った。
風太からの連絡はまだない。別に早くしろ、なんて思っているわけではない。ただまるきり連絡が無いということで、なにか連絡が取れない状況に陥っているのではないかと心配する気持ちはある。
だから、少しは報告をしてくれてもいいじゃないか、と千寿流は考えていた。風太のことを考えれば、いちいち連絡を取り合うような性格でないのは、千寿流も何となく理解はしているのだが。
「今日も街を散策してみますか?平塚市はまだまだ広いみたいですよ!マップのご当地情報を視ながら、食べ歩いちゃいましょっか?」
アリィちゃんがそう提案した。
アリィちゃんとの散策はすっごく楽しい。食べ物一つとってもいろいろな雑学とか、その国の豆知識とか教えてくれる。他にも飽きさせないようにクイズなんかも出してくれて、しかもあたしにも答えられるようヒントを会話に散りばめてくれている。
よく何でもない風景が大切な人といっしょに歩くのなら全然違って視える、なんて言ったりもするが、アリィちゃんとの散策はまさにそれだった。意味合いはちょっと違うのかもしれないけれどね。
「ちずちず!見てください!ゲームセンターですよぉ?最近めっきり見かけなくなっちゃいましたが、どうですか?行っちゃいます?」
そう言ってアリィちゃんが指差した方向には、賑やかな看板が目を引くゲームセンターが建っていた。
「あたし、ゲーム上手だよ?アリィちゃん、もしかして自信あるの?」
「もちろんです!わたしは国家公認のトレジャーハンターですよ?」
両手を腰に当て、ふふんと胸を張るアリィちゃん。すごく誇らしげだ。公認のトレジャーハンターであることがゲームの上手さに何か関わりがあるのだろうか?
もしかしたら認定試験みたいなのがあって、ゲーム的なセンスが要求されるのかもしれない。
「よぉし、あたしも負ける気ないからね!」
時刻は十四時過ぎ。この時間帯、外を歩く人間は疎らだったが、店内にもさほど人はいなかった。それでもずらりと並ぶ筐体を視ていると不思議と心が沸き立つ気分だ。あたしはこの雰囲気が好きだ。だから大人になっても、きっとこの気持ちは変わらないんだろうなと思った。
「ゲーセン、久しぶりだな」
前に川崎市でシャルちゃんと入ったゲームセンターを思い出す。あの時は最新作のVR格闘ゲームをシャルちゃんと楽しもうと思って並ぼうとしたけれど、並んでいる人が多すぎて止めちゃったんだっけ。
長期休暇の真っ最中だったから人込みも多くて、他の人気ゲームも埋まっちゃってて結局空いていたテニスをやることにしたんだ。
店内を一望する。今日は問題なさそうかな。
「ねえ、アリィちゃん。あたしやってみたいゲームあるんだけど」
タイトルは『InnocenceRed~イノセンスレッド~』通称:イノセン。能力者たちが己の能力を駆使して戦うオーソドックスな格闘ゲームだ。
ちなみにストーリーはあるにはあるが、キャラクターたちの掛け合いを見るに、大量の専門用語と難しい言い回しもあって、殆どの人がまともに理解できていないようである。互いに練習がてらアーケードモードをプレイしたが、千寿流もストーリーに関してはほとんど理解できなかった。
イノセンはVRゲームではあるが、複雑な動きが求められるものではなく直感的な操作のみで、ボタンは三つだけ。パンチ攻撃のA、キック攻撃のB。そして強くコントローラーを振りながら押せば、それぞれが強パンチ、強キック。下げながら押せば下段攻撃となる。
これらはキャラクターによって剣を振ったり、銃で発砲したりと様々、多岐にわたる。そして残りのCボタン。これが特殊技に当てられており、キャラ固有の特殊技が使えるという形だ。
あとはレバーを引いてのガード、ちょっと上級のシステムだと、ボタン同時押しでゲージを使ったガードキャンセル攻撃などがある。
お互い触るのは初めてであり、一通り動かしてみて勝手がわかった所で対戦してみようという話になった。
「じゃあ、そろそろやりましょうか!」
「うん!あたし負けないからね!」




