死地歩ム無貌ノ葬列
「ちずちずっ!どうしてっ!?」
「……」
目を閉じた千寿流から返事は返ってこない。あまりの暑さに意識を失っているだけだとは思ったが、猶予はもうあまりない。そう確信する。
壊しても瞬時に再生する熱を発する石柱。再生のスピードは異常の一言。故に破壊した際に通り抜けるのは現実的ではない。ただ、火力が足らずに軽く抉れた部分は、未だに傷痕が再生していないところを見ると、特性としてある程度破壊されないと、再生行動に移らないことは確認できた。
破壊時に抜け出す。再生速度から見るに、もしかしたら風太だけならば可能かもしれないが、聞いてみない事には分からない。
そしてこの石柱をこの地に生み出しているのは、あの超巨大な遺跡を模していた魔獣。あの魔獣を中心に、奇麗に円を描くように石柱が並んでいるのを見るに、それは確実だ。
あの規模のバケモノが魔獣のカテゴリに入るのかは正直分からないが、遺跡に紛れてところどころ黒い部分、赤い線が走っているのを見る限り、特徴は魔獣に酷似している。
風太の攻撃ではビクともしない、アリシアの全力でも傷を付けられるか解らない。精々あの巨体のバランスを崩すのが関の山。遺跡の魔獣は人型、胴体ではなく足元を攻撃すれば多少は有効打となるが、それでも撃破には至らないだろう。
いや、バランスを崩す。
魔獣が石柱の出現位置を統括している。
もしかしたら。
「ちずちず、ごめんなさい。ここで少しだけ待っていてくださいね」
返事は当然返ってこない。けど、今はこのまま手を拱いている時間すら惜しい。心の中で何度も謝罪とお礼を唱えながら風太の元へと向かうことにする。
「風太ぁーーッ!!」
「なんだッ!?」
砂嵐に負けない声量で呼びかける。返事を確認したアリシアは、今なお攻撃を躱し続けている風太のもとに向かって、じゃらじゃらと音のする袋を投げつける。それを一瞥し、左の手で掴み取る。
(ンだこれは。アイツが使っていた宝石か?)
「風太一人ならッ!この空間から抜け出せますかッ!?」
「ああッ!」
その返事が聴ければもう十分だ。風太には少し危ない橋を渡ってもらうことになるが、この場において、全員が無事に生還できる道はこれしかない。「大丈夫」アリシアはそう心の中で何度も祈るように呟いた。
「宝石を足元にッ!三分後ッ!逃げる余力だけ残して全力攻撃してくださいッ!一分後、再度破壊しますッ!」
簡潔に伝える。風太であればこれで分かってくれるはず。アリシアはこの数日間の砂漠の行軍でその機転の良さを評価していた。
(フン、なるほどな。逃げる算段はついたってことかよ。なら、もうあれこれ考える必要ないわな)
風太は袋から赤く輝く宝石を取り出すと、的を絞らせず、相手を翻弄するよう飛び回りながら遺跡の魔獣の進行方向にばら撒いた。
三分後、魔獣の進行速度を計算し、ちょうど重なるよう宝石を仕掛けた。傷を付けるには至らないだろうが、バランスを崩すことくらいは出来るだろう。そしてそれに合わせて全力をぶち込む。
そう。
それに合わせて外殻となっている石柱を破壊する。
当然、破壊された石柱はその場で地面から伸び、再生していく。
「けれど、石柱は魔獣を中心に一定の距離で規則正しく生成される」
三分が経とうとしていた。アリシアは千寿流を傍に寝かせる。
カウントダウン。
三。
チャンスは一度きり。
二。
失敗=死。ではないけれど、千寿流が助からない可能性は一層上がる。
一。
だから、ここで全てをぶつけろ。腕すら吹き飛ぶ勢いで!
「今ですッ!グリッタージェム×ライブゲイザーッ!!」
巨人の足元で爆撃が起き、何が起こったのか解らないと、ぐらりと体勢を崩す。それでも倒れるには至らない。踏ん張るようにその場に留まろうと力を籠める。
その隙を風太は見逃さない。
熱に浮かれるよう炙られる間隙。思考に突き刺さるジグザグに絡み合うノイズ。
ここしかない。渾身の一撃を込めろ。連撃の手数を速さに換えろ。疾さに重さを乗せ一点をぶち抜け。
相手は独活の大木の如き鈍重、カウンターは気にしなくていい。動けるだけの余力を残してあとは全部ぶち込んでやるよ。
「ッ!ぶち抜けッ!死地歩ム無貌ノ葬列ッ!」
体を捻り、蹴りの一撃に全てを集約する。
衝撃、爆音。砂嵐吹き荒れる空間にさらなる暴風が舞う。
風太とアリシアの攻撃が重なり、あれほどまでに強固でビクともしなかった巨体が、ズシン、ズシンと大きな音を立てながら後退する。
巻き起こるは砂煙。遺跡の魔獣は怒りに身を任せ、その太すぎる両腕で振り回すが、自らが起こした砂煙が視界を遮り敵を捉えることが出来ないでいた。
風太のネクロショットガンはアンスリットカラーズの手数を一撃に集約した火力重視の技です。一点のみならアリシアのライブゲイザーよりも火力有ります。




