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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第五章 大食い少女とあたしの冒険譚
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死ぬなんて言ったら許さない

「ちずちず、風太。安心してくださいね。この砂漠へはわたしが誘ったんです。だから、死んでも二人を守り抜きます」


 アリィちゃんが振り返りそう言った。いつもの太陽みたいな笑顔じゃない。こういうのなんて言うんだろうか。これから戦場に向かう兵士がするような精悍な顔つきだ。


「だから、二人はここにいてください。ここは石柱の近くでかなりの温度ですが、おそらく今一番安全な場所でもあります」


「嫌だよっ!」


 だって嫌だ。そんなの嫌だ。

 アリィちゃんは何を言っているの?死んでも守る?

 そんなの残された人間のことを全く考えていない勝手すぎるわがままだ。


「ちずちず……」


 あたしは経験してる。星ちゃんの事。

 身を引き裂かれるような気持ちだった。今でも夜布団に入ると時々思い出しては泣きそうになる。独りの時間が、すごく怖い。

 辛い思い出は時間が過去に置いて来てくれる。そう思ってたけど、それってきっと途轍もない時間が必要なんだって知った。少なくともあたしはそうだ。

 星ちゃんとの思い出は決して多くない。いっしょに居た時間もそんなに多くない。けど、それでも辛いんだ。だって、友だちだから――好きだったから。


「死ぬなんて言ったらあたし、許さない」


「……」


 アリィちゃんは何も言い返さなかった。きっと、これまでの冒険の中でもこんな事態は初めてなのだろう。だから、確信が持てない。大丈夫だと返せる確信が持てない。


(もちろん死ぬ気はないです。けど、相手は未知数。死にませんよって嘘を吐くことなんて簡単です。けど、その後悲しむのはわたしではなくちずちず。なら、本当のことを……)


「馬鹿野郎。死なねえよ」


 風ちゃんが見かねてそう話に割り込む。


「何か考えが?」


「いらねえよ。魔獣(マインドイーター)の手合いなんていつだってそうだったろ?相手がデカくても小さくても、手札なんて碌に視えねえまま戦ってきたんだ」


 風太はジャケットのボタンを外し脱ぐと、あたしに向かって放り投げる。


「まずは見だ。オレが先陣を切る。幸い相手はデカブツ。攪乱して弱点を視る」


 それだけ言うと異能(アクト)を解放し、薄っすらと前方に姿を現した巨影へと向かっていくのだった。







「この遺跡、魔獣(マインドイーター)なん?かー、何でもアリやね。近頃の魔獣(マインドイーター)ちゅーんは。時代の先端先取りしとる」


 時矢は調書に写る真っ黒の巨人を見ながらそう言った後、もう十分だと向かいに立つスラリとした長身の男に返す。


 そこにはこう書いてあった。


 目撃情報:

 平塚市に広がる砂漠地帯

 推定規模:

 全長三十メートル。重量推定数千トン

 能力:

 熱源の創造、発熱

 被害:

 砂嵐の発生、温暖化(これについては確証はなく主な原因が見受けられず関連付けられている)

 主な弱点:

 無し


「弱点無し。無敵ってこと?」


 これまで一言も話さなかった少女が小さく呟いた。


「弱点無しと無敵はちゃうよ。それに所詮これは調書や。他にもいろいろ書かれとるみたいやけど、人の手で調べ上げられたもんなら綻びなんていくらでもでてくる。どんなに気ぃ(つこ)うてもミスをする。それが人間っちゅー生き物やからな」


「やれやれ、それを私の前で言いますか?十方くん」


「ああ、ごめんちゃい。別に悪気があったわけやないんや、許したってちょーだい。それにお前さんにはいつも助かっとる。こない情報、ギルドはおろかレギオンにも出回ってないんやろ?」


「ええ、それが私たち情報屋レイヴンの誇りなので」


 スーツ姿の細身の男はタイを正しながら、行儀良く一礼して見せた。情報屋とは謳っているが、その優雅な仕草のせいで傍から見ればホテルマンのようにもみえた。

 ちなみに私たちと言った通り、情報屋レイヴンは集団で組織されており、互いの個人情報は秘匿されたうえで必要な情報のみをやり取りしているのだという。そのシステムのお陰で、情報の漏洩における個人のリスクを最小限にしているという話だった。


 目の前にいる情報屋レイヴンの男、村瀬竜司(むらせりゅうじ)(偽名)にとって時矢はお得意先の人物であり、こうして情報が入った時には共有をしているのだ。


「ところで村瀬くん。この写真の魔獣(マインドイーター)、よう視ると目元に傷があるんやな」


 写真の魔獣(マインドイーター)の目元、小さいのでよく見ないと見逃してしまうレベルだが、縦一線に傷がついているのが解る。

 初めはそういう(モノ)だと思ったのだが、気になった時矢は竜司に訊ねたのだった。


「ええ、これはかの三英傑。間島宝辿(まじまほうせん)が付けた一太刀と云われていますが、真偽に欠ける情報でしてね。記載していないのです」


 三英傑。間島宝辿。

 たしか関西の方で魔獣(マインドイーター)千体斬りを成したとかいう異名を持つ男か。情報規制故に詳しい情報はとんと回ってこないものの、耳にしたことぐらいはある。

 たしかに胡散臭い話やな。西日本で幅利かせとる奴が、わざわざこっちまで来て一太刀浴びせるだけ、なんて信じられへんわな。


 一太刀のみ。何故一太刀だけなのか。


(一太刀入れてこりゃ手に負えへんわ、っちゅーて逃げ果せたんか?何とも喜劇的な話やけど、あり得へん話ではない。か)


「無敵とは違う。けど、弱点は無い。綻び?分からない。時矢の言うことはいつも難解」


 時矢の思惑など知らないカナが隣でそう呟いた。


「分からんことに対していつでも答えが用意されとるわけやない。七宮、お前、少しは自分で考える力も身に着けろ。俺はちょいと出てくるわ。ああ、村瀬くん、またな」


「はい、情報屋レイヴンを今後ともご贔屓に」


 求めていた回答を与えられず、ムスッと子供みたいに頬を膨らませたカナをよそ目に、時矢はこの場を後にするのだった。

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