諦められないっ!
「いやいや!なーにを言っているんですか!そんなに簡単に諦められるわけがないでしょう!わたしは諦めませんよっ!」
そう大きな声で宣言すると、アリィちゃんは扉や、その外周など、気になった部分をペタペタと触ったり、押したり、引いたりと調べ始める。
「っち、勝手にしろ。オレは無駄な事はしねえぞ」
その様子を見て風ちゃんは、アホくさというような表情を浮かべ、壁にもたれ掛かり目を閉じてしまった。どうやら、アリィちゃんの力を以てしてもビクともしない。どう足掻いても開かない扉を前に既に諦めてしまったらしい。
それであたしはというと――
「え、えっとその。あ、アリィちゃん!あたしも手伝うよぉー!」
黙って待っているのにも耐えきれず、あたしも半ば諦めてはいたのだが、アリィちゃんについて手伝うことにするのだった。
しかし、当たり前ではあるのだが、闇雲に探したとしても何も見つかることは無い。結果、何の進展もなく、ただいたずらに時間は過ぎていき、調査を開始してから二時間が経過しようとしていた。
ゲームなんかだとスイッチが隠されていたりしてそれを押したり、向かいにあるスイッチと同時に踏んで扉を開いたりと、行き詰まらないように出来ているものなのだが、現実はそうはいかない。ちょっと調べたぐらいでそんな都合の良いスイッチなど見つかるわけも無いのだ。
「はぁー、はぁー」
ファン付きジャケットを着ているにも拘らず、汗が滝のように溢れてくる。
こんなに汗が出るなんておかしいと思い、気温を測るとなんと三十五度を記録しており、なぜか高い湿度も相まって不快指数も高い。風は吹いているのだが、どうやらこの辺りは他の場所と比べて、理由は分からないが気温も湿度も高いようだった。
「うぅ、汗が止まりませんね。流石に休憩したいです。しかし、これだけ探しても何も見つからないとは、やはり何もないのでしょうか。こうなったらこの術式棍で扉を破壊して……」
「だ、ダメだよっ!そんなことしたら中の遺跡も壊れちゃうよ!」
「えへへ、ジョーダンですよジョーダン♪本気にしないでくださいって、えへへ」
汗まみれの顔で笑顔を作られると少し怖い。アリィちゃんはジャケットを着ていないから、あたし以上に暑いはずなのだが。
ちなみに、なぜこのクソ暑い中ジャケットを着ていないのかというと、アリィちゃんが着ていたジャケットは、先日遭遇したトカゲ型の魔獣との戦いでボロボロになってしまっていたのだ。
何であんな格好なのかとつねづね思っていたが、術式棍の破壊力により、おしゃれをしてもすぐに服が使い物にならなくなるから、というちゃんとした理由があるらしい。なるほど、納得した。
ところでファン付きジャケットって結構高いみたいだし、レンタルものだけど大丈夫なのかな?
「風太、あれ、風太も調べてくれていたんですか?もー、水臭いですねえ!カッコいいじゃないですか!もう!」
あたしたちは風ちゃんのいるところまで戻ってきた。
顔を見ると風ちゃんも汗をかなりかいている様で、アリィちゃんは風ちゃんもこの遺跡について調べていてくれていたと思ったのだろう。
「ん、何言ってんだ、オメエ?オレは別に調べてなんか。いや、暑ぃな」
「ね、ねえ、アリィちゃん。もしかして……」
「えっと、もしかしなくても」
あたしもアリィちゃんもようやく気づく。
この場所が特別暑かったのではなく、この場所の温度が上がり続けていたということに。
スマホの気温計を確かめる。なんと三十七度。先ほどよりも二度も上昇していた。これは間違いなく異常である。
「おい、この遺跡、こんな模様だったか?」
そう言って指を差された方を見る。
先ほどは何も描かれていなかった遺跡の壁面に、何やら赤い幾何学模様のようなものが浮かんでおり、淡い光を発している。
「な、無かったよ!?あんなの無かった!風ちゃん!あれっていつから!?」
暑さのせいもあり正常な思考が出来ず、突然出来た幾何学模様と無意識に結び付けてしまったあたしは、半ばパニックになりながら風ちゃんに問いかける。
「オレが聴きたいっつーの。クソ、オレが眠ってる間に何があったんだよッ」
その時だった。足元。否、この場所全体が鈍い音を立てて大きく揺れたのだ。




