アンタとあたしの選んだ道
いつも明るいアリィちゃんの表情が少し翳った気がした。
色々か。トレジャーハンターって危険な場所とかにも赴く仕事だったよね。言葉を濁したってことはじゃあ、そのせいで。
「で、一人で活動することになったんですが、ソロの活動ってのがこれまた楽しくてですね。自由気まま、どこに行くのもタイミングも、目的も、全部自分次第って、これはこれですごく楽しいことだったんですよ」
そう楽しそうに話すアリィちゃんの顔にはうっすらと、注意していなければ見逃してしまうような闇が感じられた。
何かあったのかもしれない。
「けど、やっぱり時折寂しくなるんですよね。困ったときに話をかけて、返ってくる。そんな当たり前が無いんですから」
「アリィちゃんさえよければいっしょに行こうよ!あたしは大歓迎!……あ、風ちゃんは」
あたしは元気よくそう言った後、窺うように腕を組んで壁に背を預けている風ちゃんの方を見る。
「好きにしろ。いまさら一人増えたところでオレは構やしねえよ」
好きにしろ。そう答えた風ちゃんの声は少し優しく感じた。
あたしは知ってるんだ。こういう時の風ちゃんは決して嫌がってなんかないって。
「えひひ、アリィちゃん!」
「えへへ、ちずちず~!」
嬉しさの表現を込めて目線で示し合わせてのハイタッチ。ちなみにあたしの背が足りないからアリィちゃんは高さを合わしてくれた。
二度目の冒険の始まりはこうして笑顔からのスタートだ。
アリィちゃんが微かに見せたあの陰り。今はまだその時じゃないのだろう。
けど、いつか話してほしい。
いっしょに旅を続けて、あたしたちの仲が深まり、話しても構わないと思えたのなら、その口から打ち明けてほしい。きっと寄り添い、それがどんな辛い悩み事だとしても、いっしょに悩んであげたいから。
辛い事だって分かち合えると思うから。
「辛いと割り切って。それを引き裂いて。その先にアンタの求めてるものがあるのかい?」
「さあ、知らない。あの子の人生どうであれ。あたしには何も関係が無いからね。どれだけ悩んで考え抜いたとしても、互いの線は平行線。交わることなんて決してないのよ」
そこは砂が吹き荒れる荒野の丘。眼下の街には小さく千寿流たちがいた。ここからでは視認できるのがやっと。砂に紛れていつ見失ってもおかしくない。
あの灰色の髪の少年は勘が鋭いが、流石にここまで距離が離れている人間を察知することは出来ないだろう。
「見て見ぬ振り。ってのは出来ない?」
「それを言うなら、あの子しか映らない。あの子の前ではあなたすらも霞んで視える。濃霧に紛れる灯台の灯りのように。ねえメルヴァ」
「あ、それなんだけどさ。メルルって呼んでくれない?そっちの方が響きが可愛いからさ。な」
初は呆れた顔でメルルの顔を見る。真面目な話をしていたのに心底どうでもいい話だったからだ。
「はいはい、メルル。で、あっちのトレジャーハンターはどうだったのよ。まあ、聴かなくても大体わかるけれど」
「ああ、アンタが考えてる通り。あの二人はどちらも善人だったよ。彼女の敵に回ることは無い」
初は口元に手を当てて考え込む。
「じゃあ、暫くはこのままでいいわ。動向は追うけど。あたしたちにも目的がある。ひとまずはそれが先決」
「そうね。もちろん、そっちが優先だ」
こんなこと言うと、また言い合いになっちゃいそうだから口には出さないけどさ。
あたしはさ、アンタにも旅をしてほしいよ、初。
で、その景色の中に素晴らしいと思えるものを見つけてほしい。雨が上がった後の夕焼けとか、湖に映る山々とか、それぞれの街の営みとか、そんなもの、意外とそこら中に転がってるだろ。
下向いてばっかりじゃ視えるものも視えなくなっちゃうからさ。次はそうだね。さり気なく視線を誘導してやるか。
けど、アンタは変わらないんだろうな。だって筋金入りの頑固者だからね。だとしても、あたしはあたしなりにアンタの友人で居続けるつもりだよ。アンタがどんな道を選ぶとしてもね。




