わくわくしたんだ
「実はですね、お二人と別行動をしているときにですね。知り合いから人探しについてアドバイスの様なものをいただいたんです」
本当は違いますが、わたしの知り合いにしておいた方が話もスムーズに行きますからね。二人には悪いですが、今回はこれで行きましょう。
「アドバイス?えひひ、そんなこと訊いてくれてたんだ、ありがとう、アリィちゃん!」
前に乗り出し、キラキラと擬音が聴こえてきそうなほどに目を輝かせる千寿流。
「え、ええ、まあ、はい」
(うぅ~!小学生の眼差しってこんなにキラキラしていて純粋無垢なんですか~!心がチクチクと何度も刺される気分です~)
「で、なんだよ。目撃情報でも得られたってのか?」
「い、いえ。さすがにそこまでは。すみません。ただ、提案をいただいたんです!」
コホン、と一呼吸おいてから、アリシアは午前中に会ったメルルとの会話を、知り合いとの会話という体で二人に話す。
「冒険……」
「随分と壮大な話だな。オレはどこでも仕事は請けれるから構わねえ。つーか、冒険と思ったことは無いが、基本旅行してるようなもんだしな。だが、コイツはどうなんだ?こんなガキを連れまわすのはちと酷じゃねえか?」
え、そうなんだ。風ちゃんはこれまでも色々なところを旅してきてるの?
てっきり、魔獣狩りって仕事を請けるためにギルドで働いているんだと思った。
なんて言えばいいかな、必要になったら動くみたいな、消防士みたいなものを想像していた。いや、消防士の人も事務仕事はしてると思うけど。
「風ちゃんってギルドで仕事してるんじゃないの?」
「あ?ギルドで仕事っつーと語弊があるな。事務仕事が主のやつももちろんいるが、オレはフリーだからな。必要な時だけ顔出すだけだ」
なんだろう、心配してもらってるのに不謹慎かな。
わくわくしたんだ。
熱い憂鬱な勉強の日々に終わりを告げる、長い休みの始まりの日。
今日はどこに行こう、明日は何をしようって、どこまでも続く海原の様に無限に考えることができた。
「じゃあ、冒険してるの?」
冒険って響きに。何か見つかるかもっていう探求心に。心が浮かされた。
いや、それはちょっと違うかもしれない。
「いや、別に冒険ってわけじゃねーよ」
今までのあたしは、主人公なんかじゃなくて、誰でもない村人Aみたいな存在。
そう思ってた。
だって、みんなを引っ張れるシャルちゃんのほうがよっぽど主人公だし、星ちゃんのほうがカッコいいし、夜深ちゃんの方が賢いし、クラマちゃんのほうが優しいし、風ちゃんのほうが強いし。アリィちゃんは、えっと、その、いっぱい食べるし。
「っむ。ちずちず、なんか失礼なこと考えてません?」
「えひひ、べ、べつに」
あたしが求めたもの。それが冒険の先にある。そう思った時、無性にわくわくしたんだ。身体よりも気持ちが前へ。うずうずして止められない。
「あたし、行ってみたい。あたしの記憶の中にあの子のことが眠ってるなら、あたしは冒険をしたい」
「……」
二人の視線があたしに注目する。
怒られるかな、こんなわがままなこと言って。
「正気とは思えねえな。ガキのお遊びじゃねえんだ。これから先、魔獣の繁忙期に入れば今まで鳴りを潜めていたヤツらがうじゃうじゃ出てくる。マジで死ぬかもしれねえ。それでもいいってのか?」
「っう、それは」
それは、わかってる。たぶん、あたしの考えが甘いことも。
何とかなるだろうって。でもそれは風ちゃんやアリィちゃんがいてこそだ。あたし一人じゃいざ魔獣を前にしたら、あたふたして何もできずにやられちゃうんだろう。
「そんなに怖がらせなくても。大丈夫ですよ、ちずちずに何かあればわたしが絶対に守ってあげますからね!」
「え?」
「アンタ、ついてくる気か?」
「はい、そのつもりでしたが?」
真顔でケロリと言う。
あれ、そんな話になってたっけ?
アリィちゃんは明るくていっしょにいると楽しいし、あたし的にはすごく嬉しいけど、何でいっしょについて行こうと思ったんだろう。
「あの、アリィちゃん。すっごく嬉しいんだけど、どうして?」
「ふふふ、それはですね。楽しいと思ったから。ですよ」
腰を少し屈めて、あたしの目線に合わせそう言った。
「わたしの仕事はトレジャーハンター。他にもやることはありますが、基本は各地を回るお仕事です。この仕事を始めてもう五年ですかね。いつの間にか一人になっていました」
いつの間にか?じゃあ、昔はもっと大勢で活動していたのだろうか。
「その、何で一人に?」
「え、ああ、そうですね。色々あったんですよ、色々」




