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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第五章 大食い少女とあたしの冒険譚
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女難

 初見の印象は善人。大らか。そして食い意地が張っただけの緩い女。その程度の印象だった。

 しかし、腐っても国家公認のトレジャーハンターを自負するだけはある。見てくれはあんなんだが頭の回転は思っているよりも早い。あの短い時間で千寿流の為に情報収集をしてくれていたとはな。

 それに、オレの一言に反応し即座に対応した。あの一瞬でここまで気が回せる奴はそういないだろう。


 二手に分かれるという提案。しかし、思っていた状況とは違った結果になったな。さて、何を考えているのやら。

 直接問いただしてやってもいいがこの街は少々狭い。それに通行人。被害が大きくなるのは流石に避けたい。どういった展開になるか分からない以上、泳がせられるだけ泳がせてやるべきだ。

 オレの異能(アクト)を加味するならある程度開けた空間、適度な障害物、人がいない場所。これがベスト。


「っち、やっぱそう簡単には見つからねえか」


 周囲にもギリギリに聴こえる、大きめの声量でそう呟く。

 あくまでも人探しを演じる。傍から視て違和感が起きないよう、繊細に動く。オレは舞台役者なんてのとは無縁の人生だが、そこまでおかしくは映っていないはずだ。

 数十分が経過する。まだ、目線はある。巧妙に隠し通している気のようだが、ジリジリと音がするようなギラついた視線を確かに感じるのだ。

 しかし、このままでは膠着状態だ。目的が違うのであればあいつらの傍に居続ける必要もないか。一度釣ってみるのもアリだな。


「少し休憩するか」


 オレは自販機に財布のICカードを翳し、目線も配らず適当に冷たい飲料水を購入すると、人気が少なくなる郊外へと足を運ぶ。


「げ、何だこりゃ。苦ェ。抹茶じゃねーか」


 缶に目を向けると高級抹茶使用と書かれていた。思えばディスプレイに四桁の数字が記載されていた気がする。好きでもないものに千円も払ってしまったのか、オレは。

 今度からはたとえ飲みたいものが無くともディスプレイは確認するようにするか。捨ててしまうことも考えたが、喉が渇いているのも事実。苦みが喉に残るのが嫌なので、出来るだけ一気に飲み干すことにした。


「このぐらいか?」


 オレは飲み終えた缶を放り投げる。

 ゴミ箱に向かって?


 否、その場で上に投げるだけ。缶の中に少し残っていた抹茶が宙に舞う。風太はその光景がどうにも遅く、ゆっくりと流れる様に視えた。

 疾さを乗せて右足を思い切り振りかぶり、捻りを加えて蹴りつける。必然、缶はぐしゃりと凹み、蹴られた方向へと衝撃によって一直線に飛び出す。がさりと音を立てながら茂みに入りそのまま消える。蹴り飛ばされた缶がどこかに落ちた音は聴こえない。もしくはどこかに引っかかってしまったのだろうか。


 いや、違うはずだ。今日はあの時とは違う。体調も問題ない。脳内も視界もクリアそのものだ。

 だから、気づけた。オレの狼の勘が鈍っていなければ恐らくは――


「へー、すごいねお兄さん。気づかれたの正直初めてだよ。まあ、誰かを尾行したのも初めてなんだけどね?」


 全身を生地が厚めのローブの様な物で身を包んでいる。手には先ほどの潰れた空き缶。口元はマスク、目元は深く被ったフードが隠している。一見では年齢、性別どういった人物なのか分からない。

 しかし、声色。九割方女。声を作っているのなら話は変わってくるが、立ち振る舞い、細かな所作から女だと決めつける。


「ああ、こんなもん被って挨拶ってのも失礼になっちゃうかな?」


 そう言いながら、女は被っていたフードとマスクを脱ぎ、こちらを向き口角を釣り上げた。


挿絵(By みてみん)


 きつめのウェーブのかかったアッシュベージュのミディアムヘア。濃いピンク色の目。それに――


(長い耳。たしかフェルメールのやつもエルフ耳みたいな長い耳だったな)


 それにこの前、ギルドに行った時も帰りに女につけられていたか。たしか、糸遣いの女。尾行の腕というだけならあの時のヤツより上手だ。

 やれやれ、人様に言えねえような悪事をやった覚えはねえが、こう何度も付きまとわられるならお払いにでも行ったほうが良いのかもしれねえな。


「まあ、オレは占いの類は信じちゃいねえんだがな」


「ん?占い?何のことだい。お姉さんは君を取って食おうなんて思ってないよ。君が善人ならあたしも善人だ。分かるかい?」


 女は人差し指を頭に当てそう言った。それ以外は微動だにしない。余裕さえ感じられる。加えて言うなら敵意の様な物も感じられない。

 それらを隠蔽できるような異能(アクト)を持っている可能性もあるが、その程度の異能(アクト)であれば何ら問題ない。相手が動いてからでも対応できるだろう。

 なら、何が目的だ?ひとまずはそれを訊いてからでも遅くはないか。

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