平塚市に行ってみたい2
「馬鹿とは聞き捨てなりませんが、もちろんです!それにわたしは国公認のトレジャーハンターですからね。わたしの同伴と認めてもらうことで一般の方が入ることの出来ないところにも入れますっ」
一般の人が入ることの出来ないところに入る?それはすごい事だけど、あのフードの子がそんなところにいるとは思えない。けれど、アリィちゃんはそういった知識に関してはあたしたちよりずっと詳しいのだろう。
「えひひ、すごいね!でも犯罪はダメだよ、アリィちゃん?」
「へ?いやいやいや、聴いてましたちずちず!?一般の人はダメでもわたしは許されてるんですって!ていうか犯罪は、その、してないとは言い切れないですが、する気はないですよっ!」
あたしが人差し指を手に当ててそう言うと、アリィちゃんが手をバタバタさせながらすぐに訂正を促してくる。なんだか、その仕草が可愛かった。
「お、ちょうどバスが来るな。途中までは乗って行こうぜ。ほらお前ら、行くぞ」
「うん!えひひ!行こっ、アリィちゃん!」
「ちょ、まま、待ってください!まだ、この辺りのご当地グルメ制覇してないっ!ちょ、本当に行っちゃうんですかぁ~!?」
平塚市。そこに何が待っているのか、あたしたちにはまだ知る由もない。
あたしの冒険はクラマちゃんを探すことから始まった。
いうならばシャルちゃんの為。もちろん、友だちでもあるクラマちゃんを助けたいのは心の底からの本心だったし、そこに迷いはあれど、あたしの意思で歩いてきたことには変わりない。けど、どこまで行ってもそれは誰かの為、それは事実。
けれど、あたしは今、自分の為に、自分の意思でここに立っているんだ。
自分の意思で決めて、自分の意思で歩く。
それは興味が半分、怖さが少し、後は何が待っているんだろうというわくわくの気持ち。
平塚市で何が判明するのか分からない。そこになにも手がかりが無ければ、別の場所に赴くことになるのだろう。
風ちゃんの目的をあたしはしっかりと訊いたことは無かったけれど、なんだかんだ言って付き合ってくれる気がする。
アリィちゃんはどこまで来てくれるのだろうか?アリィちゃんの様子だと平塚市に何か用があるように思えた。それなら、そこでお別れになってしまうのだろうか?
それは仕方がない事なのだけれど、なんだか少し寂しい気もする。アリィちゃんにもアリィちゃんの事情があるのだろうし、無理は言えないけれど、その時がきたらいっしょに来てほしいって頼んでみるのも悪くないかもしれない。
「何考えてるんです、ちずちず?あ、これ、砂除けのジャケットです。サイズ、たぶん行けますよね?ちなみに借りものなので汚しちゃダメですからねー」
アリィちゃんから大きめのフードが付いたジャケットを手渡される。赤とオレンジを基調として、白いラインがところどころ入ったポップなデザインだ。
しかもこのジャケット、暑い時期でも快適に観光してもらおうということで下部にはファンがついている。さらにそれだけではない。ジャケットを着ている人間の体温を感知し、ジャケット内の温度調整を自動で行い、快適な温度を保ってくれる優れものだ。
そんな見た目からして重そうなファン付きジャケットだが、ごつごつした見た目に反して非常に軽量な素材で作られていた。なるほど、これなら何時間でも不快な思いをせずいられそうだ。
ちなみに、黄砂の吹き荒れる平塚市で貸し出しをしている以上、それら自然災害の対策もばっちりだ。目や口に砂が入らないような防塵ゴーグルにマスクはもちろん、ジャケットについているファンも、黄砂が入り込み壊れてしまわないような機構になっている。
「時代の進歩ってすごいですよね。この体温を感知して温度調整をしてくれるジャケットなんて、昔は考えもつかなかったでしょうし、また数十年後には今のわたし達には想像もつかないような快適な発明がされているんでしょう」
考えたこともなかった。確かにそうかもしれないな。あたしたちが何気なく利用している一つ一つが名も知らない先人たちの知恵と汗の結晶なのだとしたら、感謝をしてもしきれない。
「今は気候が落ち着いてるみてえだな。いつ風が強くなるかわからねえ。これ以上悪化しないうちに屋内で休める街まで歩くぞ」
風は今でも多少なりと吹いており、風に乗り目に視えるレベルの砂が定期的に吹きつける。これ以上酷くなることもあるというわけか。それに今は郊外にいるからこの程度で済んでいるのかもしれない。
よし、気を引き締めていこう。




