平塚市に行ってみたい
「ねえ、風ちゃん。これからどこか行く予定とかある?」
「あ、別にねえよ。魔獣狩りの仕事はどこでも受けられるからな。まあ、街中でだらだらしてるだけじゃ仕事は寄ってこねえが」
「平塚市、行ってみようよ。そこに住んでいる人にあたしがあった子もいるかもしれない」
「……」
風ちゃんは黙ってしまう。平塚市に行くことの危険性について考えてくれているのだろうか。たしかに、平塚市にあたしの探しているフードの少女がいるとするならば、少なからず危険はあるだろう。
手紙には記憶と■を狙うと書いてあった。
この■の部分については結局あれから答えらしき答えが導かれることは無かったが、スペースの幅から一文字、そして不穏な意味合いを持つ単語だろうということで話が付いたのだ。
恐らくは、命、金、心、当たりか。どれも可能性はあるが、しっくりくるとなるとやはり命ということになる。
なぜなら、お金はそもそも持ってないから。それに金銭が目的なのであれば子供宛に手紙を出さずに親に直接送り付けなければ意味がない。仮にもしあれが忠告を意味するものだとしても、やはり親宛に送るのが普通だと考えられる。
そしてもう一つ、心。これは意味が分からない。どこかのゲームよろしく心を集めて器でも作ろうというのだろうか?もしそうだとしても、これについてもあたしじゃなくてもいい気がする。心なんて目に視えないもの。わざわざあたしの心を狙う意味が分からない。
「わたしも行きましょう!わたし、こう見えても腕には結構自信があるんですよね!命を狙われるというのならわたしが盾になってあげてもいいですし!」
「おい千寿流。お前話したのか?」
風ちゃんがギロリとこちらを睨みながらそう言った。
「え、えっと、その、ダメだったかな?だ、だってアリィちゃん、良い人だと思うしっ!」
「……いや、お前がそう決めたんならそれでいい。そこはオレが関与することじゃねえしな」
そう言いながら少し離れた位置に腰を下ろした。口ではそういっても風ちゃんは少し怒っているように視えた。たぶん、あたしが勝手に話してしまったことに対してだろうか。きっとそうだろう。
あたしはフードの子に狙われている。もし仮にアリィちゃんが悪い人だったら、その情報をもとに、今以上に危険に晒されることもあるかもしれない。なら、軽率だったのかもしれない。
もちろん、アリィちゃんが悪い人なんて思ってないけれど、今度からは風ちゃんにもちゃんと相談するようにしよう。
「で、で、どうなんです!どうなんです!?わたし、弾除けの盾にもなれますよ!警察の拳銃程度なら、何発撃たれても死にませんからね!」
拳銃で撃たれても大丈夫?それが本当なら凄い事だ。たしか、この世界にはそう言った高度な身体能力を持つ種族がいると聞いたことがあるけれど、アリィちゃんもそうなのだろうか?
良く視るとアリィちゃんの耳はゲームに出てくるエルフの耳のように長い。拳銃に耐えられるというのは正直想像つかないが、あたしたちと身体の造りが違うということなのかもしれない。
「警察に乱射されるってどういう状況だよコラ!つか、寄ってくんじゃねえ!オレはどうでもいい、千寿流に訊け」
「ちずちず?ちずちずはわたしにいっしょに来られて迷惑ですか?」
風ちゃんと何か話していたアリィちゃんがあたしのところにやってきてそう言った。
「あたしは、その、うん。嬉しいよ。でも風ちゃんに訊かないと。あたしが勝手に決めていい事じゃないと思うんだ」
反省からの即実行。あたしは先ほどの学びをすぐに生かす。何事もまずは風ちゃんに相談だ。アリィちゃんは再び風ちゃんのもとに駆けていく。なんだか忙しない。
「オレは知らねえよ。千寿流に訊け」
「風ちゃんに訊かないと」
「千寿流に訊け」
「風ちゃんに――」
行ったり来たり、行ったり来たり。
「もぉおぉ~~~!どちらに訊いても片方に訊けって、これじゃ永遠の盥回しですよ~!」
アリィちゃんは胸元で両拳を握りそう大声で叫ぶ。しかし、周りから何か何かと視線を向けられているのに気づき、すぐに声のトーンを下げる。
「ぷっ、あはははっ」
思わず吹き出してしまう。それにつられて風ちゃんも口をにやりと緩ませ立ち上がった。
「いいぜ、アンタも来いよ、フェルメール。お前ぐらいバカなら悪事を働くことも出来ねえだろ」




