再び藤沢市へ
「小学生レベルだよ!?」
「う、うるせえよ!誰にだって間違いはあんだろっ」
「それは、うん。確かにそうかも。ごめん、風ちゃん」
スマホの画面に向き直る。すると先生が怪訝な顔をしていた。
「近衛さん。もしかして、答え教えてもらってたのかな?」
違う。違わないけど違う。教えてもらった問題は見事に間違っていたのだから、この場合は違うと言っていいはずだ。けど、ズルをしたという後ろめたさは拭えない。
「もしそうだとしたら先生、悲しいです。ほら、リモートじゃお互い顔しか見えないでしょ?だから、答えを誰かに訊くことも簡単に出来ちゃうよね?でも、それだと近衛さんの為にならないです」
「うぅ」
「難しい話になっちゃうけど、問題に正解することが正しいとは限らないのよ。ううん、先生は間違えることで、初めて勉強に繋がるんじゃないかなとも思ってる。勉強って間違えて初めて意味が生まれることもあるのよ?ほら、間違えたから次から注意しようって姿勢は学べるでしょ?」
「そ、その、違うんです。えっと、本当に。でも、ごめんなさい」
「ん、先生もごめんなさい。そうよね、近衛さんそんな子じゃないもんね。多分たまたま、声が入っちゃっただけかな?」
「は、はい」
その後、授業の時間が少し余ったので、生徒皆に向けての少しばかりためになる話や、先生たちの昔話などを軽く交えて終わりとなった。
「用も無いのに不必要に家から出ないように、ね」
風ちゃんは服を軽くはたきながら立ち上がる。やってやったというしたり顔だったが、釣果はものの見事にボウズだった。釣り堀でこれだけ居座って一匹も釣れないというのだから、どうやら彼に釣りの才能は無いらしい。
「ん。ごめんね風ちゃん、待たせちゃって。行こっか」
「うし、じゃあまずはここ行くか」
風ちゃんはそう言いながら、スマホに表示された地図アプリの一点を指差す。その場所はどこか見覚えのある形。
「ここって――」
公共交通機関を利用して四時間ほど、あたしたちはまだ記憶に新しい、藤沢市にやってきていた。
パクリ。口の中にオムライスを一切れ放り込む。
トロっとした半熟の卵が口の中でほろほろと崩れ、ふわっと炊き上がったチキンライスと一緒に口の中で混ざり合う。その味わいは、まさに絶品。昔ながらのトマトソースが程よい甘みと酸味で全体を包み込み、幸福感が全身に広がっていく。
美味しい。誰でも手軽に作れて家庭定番の料理の一つだが、お店のオムライスはやはり一味違う。思わず顔がほころぶ美味しさである。
「随分と旨そうに食うよなお前」
「え、この店、風ちゃんが入りたいって言ったんだし、風ちゃん美味しくないわけじゃないでしょ?」
「ああ、昔導でぶっつぶれちまったって老舗の名店でよ。店主がようやく味を再現できるようになったってんで最近またオープンし出したんだ。老舗の名店っていうのがどれくらいの味なのか興味はあったからな」
「美味しいよね!見た目はただのオムライスかって云われると、そうかもしれないって思うんだけど、口の中に入れると全然違う!これは詐欺だよね!もちろん良い意味で!」
ふと目線を上げると周りから刺すような視線を感じた。
「おい、詐欺とか言うなっての。ここいらのヤツは詐欺とかに敏感なんだよ」
それに気づいた風ちゃんに慌てて口をふさがれる。そうか、良い意味でも詐欺とか聞こえが悪いのか。これは失言だったかもしれない。
ここ藤沢市では魔獣の被害の他にも人の手による犯行にも手を焼いていた。とはいっても殺人やら強盗やらと面と向かって行われるような犯罪ではない。それらは誰がどんな異能を持っているか分からないこの世の中で、危険すぎるからというのもあるだろう。
「えっと、さっき詐欺って聴こえてきたんですが、もしかしてその子、関わったりはしてないですよね?」




