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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第五章 大食い少女とあたしの冒険譚
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“おねがい”

 緊張する。ただ、伝えるだけ。それだけなんだ。

 きっと反対される。いや、きっとじゃなくて絶対だ。絶対に反対される。どの家庭だってそうだ。あたしの家がどうとか、そういう問題ではない。


「そんなの、ダメに決まっているでしょっ!」


「……」


 ママは開口一番そう言った。その眼には見間違いかもしれないが、少し涙が溜まっているようにも視えた。パパは何も言わず、険しい表情を浮かべるだけだった。その表情から何を思っているのかを読み取ることは出来なかった。


「けどっ!あたしは、あたしはっ!」


 そんなのいくら言ったってダメだって解ってる。理由とか理屈とか並べ立てても何も意味はない。


「千寿流、この前魔獣(マインドイーター)が家までやってきたの、忘れちゃったわけじゃないでしょ!?たった一晩、たった一晩でも安心して眠ることなんて出来なかった。お願いだからもう何も起こらないでって、祈る様に目をきつく瞑って眠りについたっ」


「じゃあ、なんでクラマちゃんの時は笑って見送ってくれたの!?あの時といっしょじゃない!」


「そ、それは、その。秋久さんも何か言ってあげてよ」


「……千寿流。俺らには、お前しかいない。お前が危険な目に遭うと思うと胸が張り裂けそうになる。まあ、これはどこの親でも同じなんだろうがな」


「……」


「お前は俺たちをそんな気持ちにさせたいのか?それはそんな思いをさせてまでやりたい事なのか?」


 そんな言い方、卑怯じゃないか。


「それは、そうじゃ、ないけど」


 何でこんなにも必死なのか自分でもよく分からないんだ。何度考えてもそれに答えなんか出せない。

 もちろん理由はある。ちゃんとはっきりした理由が。けど、危険を冒してまで叶えたいほどのものじゃないことも分かる。

 だから、パパたちを説得することなんて無理なんだろう。


 はあ、やだなあ。

 きっと、隣の部屋にいるシャルちゃんたちにも聴かれちゃってるんだろうな。怒られてるところなんて友だちに見られたくないのに、来てもらわなければよかったかもしれないな。


 なんて、何考えてるんだろうあたしは。

 分かってる。きっと、もう諦めがついてるのかもしれない。

 だから、頭の中がこんなにも冷静なんだ。


「風太様っ」


 隣の部屋で千寿流たちの会話を聴いていたクラマが声をかける。


「これはアイツの問題だ。アイツが説得できなきゃそれまで。オレはあいつの味方にも敵にもなるつもりはねえ」


 それはそうかもしれない。いくら友人の自分たちが声を上げたとしても、当人の親が許可をしないというのであればそれまでなのだから。

 大勢で押しかけて押し切って家を出る。そんな形で飛び出る様に旅立つことを決めても、「何であの時、ちゃんと話し合えなかったんだ」と後悔がしこりの様に残り続ける。そんな気持ちで続けられるほど甘い世の中じゃあない。

 それにこの結九里には魔獣(マインドイーター)が現れたばかりなのだ。なら、娘の身を案じ、危険な外へと旅立たせることなど許すはずもない。それが親という存在なのだろうから。


 ____バタンッ

 その時、シャルが扉を開け勢いよく隣の部屋へと足を踏み入れた。


「お、お嬢様っ!?」


 慌てて引き戻そうとしたクラマだったが、後ろ手で制止させられて何も言えなくなってしまう。


「しゃ、シャルちゃん!?」


「あきひさ ちひろ。ふたりが ちずるのこと しんぱいしてるの すっごくわかる!シャルルは ばかじゃない だから わかるよ」


 秋久達は何も言わない。


「でも ちずるは さがしたい って いってる!ちょっとは ちずるのいうこと わかってあげてよ!シャルルからも “おねがい”するから!」


 千寿流はシャルと秋久達の顔を交互に見比べる。

 たぶん時間にして数秒。四、五秒程度。それだけなのに引き延ばされたように長く感じた。

 そしてゆっくりと口を開く。


「……ああ、そうだな。たしかにそうかもしれねえ。ごめんな、千寿流」


 優しく微笑みながらあたしの方を向いてそう言った。その表情が何処か少し、もの悲しそうに感じたのはあたしの気のせいなのだろうか。


「千尋。俺、前に家で燻ぶってるよりは外で走り回ってきたほうが良いって言ったよな。学校は始まるがちょうど体よくリモートでの授業になるらしいじゃねえか。なら、行かせてやってもいいんじゃねえかな?」


「秋久さん!?なんでっ」


「ちひろ “おねがいっ”!」


 まただ。


 マップとマップの切り替わり時に一瞬だけ読み込みの硬直が発生するように空間が凍り付く。それは気を張っていないと見逃してしまうような些細なもの。けれど、明らかに違和感だと気が付けるような異質。


 とても不思議な感覚。

 そして、一呼吸置いてママが口を開く。


「……そうね、たしかに秋久さんとシャルちゃんの言う通りかもしれないわね」


 それは、誰かが書いた台本を読み上げているような、不自然に物分かりの良い言葉だった。

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