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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第四章 覚醒
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最期のメッセージ

 男は星一朗が息を引き取ったことを確認すると、立ち上がり空を仰ぎ見る。


「熱いな」


 それは主張の激しい太陽がもたらす日光のせいか、一人の人間の命を奪ったことから湧き上がる興奮からなのか、今の男には判らなかった。

 腕に巻かれている銀時計を見る。二十三分。当初よりずいぶんと時間がかかってしまったな。それでもタイムリミットである三十分を考えれば十分に規定の範囲内だ。さて、人が集まってこないうちにずらかるとしようか。


 そう男が公園を立ち去ろうとしたその時だった。


「へ。えっと。あなたは?」


 目の前に少女が立っていた。


「あ、うん。そうだな。私は通りすがりの」


「本当に?」


 少女は疑いの眼差しで男を見据えていた。混じりけの無い無垢な瞳で見詰められる。男はなぜだか動くことが出来なかった。


「嘘、じゃない。嘘は、ついてな」


「だって、あなた血が少し服についてるし、びしょびしょだよ?それにそこに倒れてる人、あたし、知ってるんだ。それにその女の子もあたしの友だちだよ」


 少女は倒れて伏せっている血まみれの星一朗とクラマを指差し、そう言った。


「これはそうだな。私が来た時にはすでに倒れていて。そうだ、魔獣(マインドイーター)だ!魔獣(マインドイーター)がこの少年を襲っているところに出くわして追い払ってやったというわけだ!ああ、この黒髪の少女については気を失っているだけだ、外傷はない」


「クラマちゃんは、そっか。でも、星ちゃんは血だらけだよ?なんで助けてあげないの?」


 さらに問いかける。


 間違いない。絶対だ。気づいている。この少女は私が星一朗に手をかけたことに気が付いている。だから、私が本当のことを言うまでこうして質問責めにしているんだ。私が自らの口で白状するまで。

 いや、馬鹿か私は。何故そう言い切れる。この少女はたかが10にも満たないようなガキだぞ。どうせ探偵アニメの真似事をして手当たり次第に尋問して、良い気になっているだけの小生意気な馬鹿ガキだ。

 なら、適当に口先だけで誤魔化せるはずだろう。


「そ、それは、残念なことにもう息が無くてな。本当に残念なのだが亡くなっているんだ」


「……そっか、なら仕方が無い……のかな」


「そう、仕方がなかった。あ、そうだ、警察も呼んでいるからもう少し待っていれば到着するはずだ。それじゃあ、私は用事があるからこれで」


(けひひひひひひ、馬鹿がっ、クソ馬鹿!やっぱりガキだ。ガキは馬鹿だからいけないねぇ!)


男は心中、罵詈雑言を浴びせかけ嘲嗤いながら少女の横を通り過ぎる。


「……」


 千寿流は星一朗のもとにゆっくりと歩み寄る。事切れたと思われた星一朗の口がかすかに動いた。けれどそれだけ、星一朗はもう動くことはなかった。心臓ももう完全に動きを止めていた。


 涙は。


 今はいいや。


 後でいい。


 引っ込んでろ。


 微かに動いた口が伝えたかった言葉。星一朗から千寿流への最期のメッセージ。


 に。


 げ。


 ろ。


 千寿流にはそう視えた。


「そっか。そうなんだ。あなたが殺したんだね」


「え、えっと、何がだい?」


 男が振り返りそう言った。白々しいな。もう解ってるくせに。大人ってこんなに卑怯なのか。なんだかやるせない。


 怒りと悲しさと悔しさが入り乱れて、頭がどうにかなりそうだったけど今はちょっと我慢だ。


「星ちゃん。今言ってたよ。あたしに、逃げろって。今、ちゃんと言ったんだ」


「は、ははは、何を言ってるんだ君は?星一朗くんは完全に亡くなっていた。私はそれを見届けただけだ。それ以外の事実なんて何もない。何も在ってはならない!」


「星一朗くん?あたしは星ちゃんって言っただけだよ。何であなたが星ちゃんの名前知ってるの?」


「っぐ!」


 墓穴を掘った。男はそう思った。そして同時に、これ以上目の前の少女を言いくるめることは出来ないだろうということも悟った。


「ふ、ふふふ、黙って気づかないフリをしていればいいものを!ガキってのは本当馬鹿しかいないなっ!口は禍の元、好奇心は猫をも殺すと習わなかったのかぁ~!」


 そう怒鳴り散らしながら男は千寿流のもとに駆けると同時に拳を引き、思い切り彼女の顔面を殴りつける。


「ぶへっ!」


 少女の身体は軽く、きりもみ状に回転しながら茂みの方向へと吹き飛ばされる。


「くだらない。力もない癖に探偵気取りか。本当に馬鹿馬鹿しいガキだ」


 少女の殺害は目的ではない。そもそも、無差別に人を殺めるのは事を大きくするだけで何のメリットもない。目的が達成された以上ここに用はない。


 少女を吹き飛ばしたほうの茂みを一瞥する。


(ふん、一発とはいえ全力気味に殴ってやった。しばらくは立ち上がってくることも無いだろう。せいぜい虫共と戯れているがいいさ)


 男は踵を返そうとする。


「ゆる、さない。あな、たは」


 その声にはっとなり、もう一度茂みの方へと目を向ける。

 少女が立ちあがりこちらに顔を向ける。ふらつきながらもこちらを鋭く見据えて立っている。


(なんだ、コイツは!気持ち悪い!なんなんだ!)

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