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カミナリオコシ・その4

「そうまでして探したいものかぁ……あの子、()()って言ってたし、この『学校に似た異世界(マヨイガッコウ)』を出たら……また会えるかな?」


「なんや、あいつに()れたんか」


「ち、違うよ!! 直接聞けないかなって思っただけさ! 茶化(ちゃか)さないでよ!!」


「ガハハッ!! まぁ、あの高飛車(タカビー)に会わんくとも……そこのクラヤミが起きたら、なんぼか事情を聞けるやろ」


 そう言って、脱力した頭をもたげたガオルは、同じように倒れ()している少女を見る。


 彼女の上に掛けられたジャケットは(かす)かに上下しており、安静(あんせい)な状態であることが見て取れる。

 今は何かしらのショックで気を失っているようだが、遠くない内に目を覚ますことだろう。


「ハハッ、そうかもね」


「せやせや」


 自分達の努力と勇気と友情で取り戻した友人。

 その成果に満足していると、ここに居合(いあ)わせていなかった仲間達の声が聞こえて来た。


「お~い!! 上から見てたぜ! やったなお前ら!!」


「クラヤミさんは大丈夫!?」


 クラヤミの胸の起伏(きふく)()って奥を見通すと、校舎にいたはずのター坊とヤガミンが駆け付けているところであった。


 デカブツ退治で調子に乗っているニコニコした少年と、友人の安否を心配して青い顔した少女の二人、なんとも対称的なコンビである。


「コイツは見ての通りや。 なんも知らんでスヤスヤ寝とる」


「そっちの二人もお疲れ様! 想像以上の威力だったね!」


「良かったぁ……私、あのままだとクラヤミさんまでやっつけちゃうかと思ったもの……」


「へへ、凄すぎて剥製(はくせい)のやつらも、ビビッてどっかへ逃げちまったしな! なぁなぁ、もう一回やろうぜ!」


「あんなの一回きりで充分よ! アンタは平気でも、こっちはまだ静電気で髪がパチパチいって、すっごく痛いんだからね!」


 そんな彼らが合流すると、ガッタイコツの中から現れた謎の少女のことを伝える。

 (けむり)のように消えてしまったこと、そしてクラヤミを(さら)ったのは何かを探しているためだったということ。


 すると、ター坊は小首を(かし)げた後にクラヤミへと近寄っていく。

 そのまま、おもむろにジャケットを引っぺがして彼女の身体を見ようとしていた。


「ふ~ん……探し物か。 どれどれ」


「きゃぁ! ちょっと何考えてんのよおバカ!!!!」


「ふげっ!?」


 掛けられていた服が少し(めく)れた瞬間、その下に隠されていたあられもないクラヤミの肢体(したい)(あら)わとなる。


 最初は隣でぼんやりと見ていたヤガミンが悲鳴を上げると、ター坊の頭を思いっきり叩いてそれを阻止。

 眼にもとまらぬ速さでジャケットを彼女へ掛け直す。


「痛って~!! 何すんだよ!!」


「何はこっちの台詞よ!!」


「おっ、悪いな言い忘れとったわ。 そいつ今、服があれやねん」


「あはは……まぁその、今回はター坊も悪気が無かったんだし、許してあげてよ委員長」


「そうだぜヤガミン! オレはただ、いつも持ち歩いてる()()()が無ぇなって思ったからよぉ……」


「そ、そうだったの……ごめんなさい……」


 早とちりでバツが悪いのか、ヤガミンは申し訳なさそうに(うつむ)き謝罪する。

 いつも正しい彼女がしおれているのを面白がってか、叩かれたことも忘れてター坊がこれみよがしにニタニタと歯を見せていた。


 そんな彼らの騒ぎが耳に(さわ)ったのか、眠っていたクラヤミが(つや)やかな声を上げて身体を起こす。


「ん……ふぅ。 あら、皆さんどうされたんですか?」


「クラヤミさん!」


「おう、ようやくお目覚めかいな。 相変わらず朝が遅いやっちゃで」


 寝ぼけ眼でまだ状況が掴めていないらしい彼女へヤガミンが寄り添い、落ち着くのを待つ。

 そうして、ようやくボヤケた頭が鮮明になって来たのか、ポツポツと語り出した。


「どうやら、助けていただいたようですね……本当にありがとうございました」


「水臭いこと言わんでええて。 ワイらクラスメイトやろ」


「そうだぜ! って、そうだった! なぁなぁ、お前、いつも持ってたカメラどうしたんだ?」


「カゲンブさんですか? たしか……最後に即席写真(チェキ)を撮って……それから……すみません、そこから先は覚えていないようです……」


「その写真だけならワイが持っとるで、ほれ。 廊下にこれだけ裸で落ちとったわ」


 ジャケットに仕舞っていた写真を取り出そうと、ガオルがクラヤミの目の前まで(せま)り顔を寄せる。

 彼女の身体を触れないように気を付け、ソレを差し出すが、当のクラヤミはポカンと目を丸くしていた。


「あ、ありがとうございます、ガオル……さん?」


「顔は気にせんといてくれ。 色々あんねや」


 写真を受け取ると、クラヤミは食い入るようにそれを見つめた。


 中に映っているのは、ガッタイコツのドアップ。

 そして、(くぼ)んだ眼の中に映る謎の少女の影。


「思い、出しました……あの時、意識が朦朧(もうろう)としていましたけど、この人、言ってました。 『扉はどこだ』って……」


「扉……? ボクには、人の身体をまさぐったって、絶対見つかるわけないとしか思えないんだけど……?」


「だとすると、扉って言うのは、何かの比喩(ひゆ)だったりするのかしら?」


「ん゛~……クラヤミも分からんのやろ? せやったら、ワイらが考えるだけ無駄やろな」

もう少しだけ続きます。

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