魔法と王子様
本日は二話投稿となります。
三歳で転生してから九年の月日が経った。
私は十二歳、国内で最大の権勢を誇る公爵家の令嬢として品行方正に過ごしつつ、新技術の開発やシャベルの量産や魔法の研究にいそしんでいた。
さて、ここで、この世界の一番の特徴について語っておこう。
なんとこの世界には魔法がある。魔法とは、火とか水とか全てを漂白する極太光線とかが出せる便利な力だ。
しかも私も使える。これは、もう大興奮だ! 今の私は魔法少女ヴィヴィアンちゃん、可愛いステッキとかぶん回しちゃうよ。
しゃらんらー。忌々しい生ゴミどもよ、消し飛べ、爆裂術式! ちゅどーん!
なお、呪文唱えるより、ステッキで直接ぶん殴った方が早いことに気づいてからは、あまり魔法は使わなくなった模様。
そもそも私はお貴族様なのだから自分の手で労働する必要などない、という発想にいたってからは、「魔法を使えるようになる魔法」を編み出して他の人に仕事をしてもらっている。魔法の開発はなかなかに難しかったけど、「要は他の人の体を私がコントロールして魔法使ってる感覚を直接教え込んだらいいんじゃん!」という発想に至ってからは、洗脳と思考操作の魔法の発展拡張でなんとかなった。
この魔法は手下の能力を底上げしつつ、ついでに忠誠心とSAN値チェックもできる優れものなのだ。
だが、自主的な被験希望者はあまりいない。
安全性にはきちんと配慮してるのに……。異世界の価値観って難しいね。
イベントとしては国の王子であるウィリアム殿下との婚約話が出たことぐらいだろうか。
私の後見人である宰相殿が持ってきた。
もちろん全力フルスイングでバックスクリーンに打ち返した。
冗談じゃ無い、どう考えても面倒事のほうが多いやんけ!
賢い私は当然のごとく拒否権を発動、
「殿下との婚約なんて恐れ多いです、馬鹿じゃねぇの?」
「宮廷での生活なんてストレスで胃に穴があいちゃいますよ、ふざけんな!」
「私年上のおじさまが好きなんです、結婚するなら宰相様みたいな人が良い、おじさま大好き!」
などなど、適当極まる理由を右から左に並べたところ、宰相殿は「そうかい? それならしょうがないなぁ……。たしかにヴィヴィにはまだ早かったかもしれないねぇ……」などと、世迷い言ほざきつつ引いてくれた。
多分最後の「結婚するなら宰相様」が決め手だろう。
いい歳したおっさんが、幼女に褒められてデレデレしていた。十割リップサービスだぞ、本気にすんな。
ちなみに宰相閣下ことモルト・ベア・シモンズ卿は、でっぷりした太鼓腹がチャームポイントの狸みたいなおっさんだ。
御年今年で42歳、独身、好きなタイプは王妃様みたいな女性らしい。あのおっぱいが全ての男を惑わせるとぼやいていた。
勇者だ。勇者がおる。この発言がばれたら逮捕、拘禁、即刻処断の三連コンボは免れない。王妃殿下に対する国王陛下の溺愛を知らない王国民などいない。それはそれとして陛下はおっぱい星人ということも臣下の共通認識である。
そんな感じで、私は平和な日々を過ごしていた。
そしたら今度は王子殿下から婚約の打診があったのだった。
ウィリアム・ウィンザーゲート、ハイランド王国の第一王子で王太子でもある彼は恋鉄のメインヒーローだ。
金髪碧眼に怜悧な美貌。そして戦争の天才である(設定資料集より)。
ゲーム中では凄まじい神算鬼謀でもって、強大な敵軍をばったばったトノサマバッタとなぎ倒す超性能キャラクターとして君臨する。
ありがちな設定とか言ってはいけない。王道は王道であればこそ陳腐にもなるものなのだ。
それとは別に、この王子様パッケージに描かれたキャラビジュアルが某銀河帝国を簒奪した金髪の小僧に似てるとかいわれて、某所で話題になっていた。
「豪奢な金髪にアイスブルーの瞳を持つ超絶イケメンの天才を攻略できる乙女ゲー」という寸評は確かに間違ってはおらず、一部のそっちのファンの人たちにも好評を博したそうで楽しんでいただけたのならなによりだ。それはそれとして、キャラデザの担当者とプランナーは怒られろ。
私にとってのウィリアムは、優しくて気さくないい王子だ。
ただ、確かにものすごいイケメンでもあった。
「言うて、ゲームの中の話でしょ? そんな王子様見てキャーキャー言うような歳でも無いよ、謁見の挨拶ぐらい余裕よゆうぎゃぁあああああ!!!!!」ってなった。
我ながら悲鳴が汚い。撃滅される魔人かなんかか。
まさに見た目の暴力だ。王子がビジュアルの暴力でぶん殴ってくる。HPにダイレクトアタックとかとんでもない。紫外線でも出てるのか。そして私は太陽光で滅菌されるウィルスかなんかか。
怖い……。まぶしい……。まだ子供なのにもうイケメン……。
ていうか生ビョルン・アンドレ〇ンじゃん。
この人がう〇こするとこ想像できないんだけど……。
それがウィリアム殿下だ。
そんな彼が、私と婚約したいという。
「この国の未来が心配になってきたぞ」
「今更ですか?」
ぽろりとぼやいてみたところ、腹心のハイジには「だいぶ前からわたくしはいろいろと諦めておりますよ」と笑われた。




