番外編 肉よ! 肉よ! 1
※異世界のお肉事情のお話なので、そのあたり苦手な方は気をつけてください。屠殺シーンなどはありません。
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突然だが、孤児院は粗食である。
基本的にタンパク質は豆。
スープの具材に豆、サラダにも豆、メインディッシュも豆だったりする。
豆と一言に言ってもいろんな種類があるし、味は美味しいので全然問題ないんだけど。
あとはたまに鶏肉らしきお肉や加工肉、ごく稀に塩漬けの魚。
そういえば、鶏肉以外のお肉ってこっちにきてから食べてないかも……?
ふと、私はそんなことを思ったのだった。
その日も私は孤児院でご飯を食べていた。
目の前でレクがうさ耳をピクピク動かして豆のスープを飲んでいる。
ここの孤児院にはいないけれど、牛や豚の獣人も街で見かけることがある。対して、鳥の獣人はこれまで見たことがない。
──つまり、そういうことなのだろうか。
獣人は動物じゃない。でも、倫理的にか心理的にかはわからないけど、食べないとか。
いやでも。
牛肉っぽい赤身の肉を市場では売っているのは見たことがある。
あれって、なんの肉なんだろう。
うーんと考え込んでしまった。
「サナお姉ちゃん、どうしたの?」
「食が進んでませんが、味付けに問題ありましたか?」
レクは目をぱちくりとして、フォクシーは不安そうに首を傾げている。
私は慌てて首を横に振った。
「いえ! 味はいつも通りとっても美味しいです! ちょっと考えごとをしちゃって」
お肉について尋ねたいけれど、フォクシーに尋ねるのはちょっと抵抗がある。
そうなるとやはりリベリオだろう。
次の日、カフェの営業が終了し、片付けも終わった頃合いを見計らい、リベリオに切り出した。
「……あの、リベリオ。ちょっとお聞きしたいことがありまして……」
「どうした。客に何か言われたのか?」
「あ、違くて! 食べ物事情について伺いたく!」
「なんだその口調。神妙に聞いてくるから何かと思った。で、何が聞きたい?」
リベリオはホッとしたみたいで、ちょっと笑っている。
「いやあ、ごめん。場合によっては倫理とか宗教的な問題もあると思ってさ。その、お肉のことなんだけど……」
「サナはたまによくわからないところで気を遣うな」
「ま、真面目に気になってるんだけど、どう聞いたらいいのかわからなくて。私のいた世界だと、よく食べてたのが鶏肉、豚肉、牛肉あたりだったんだよね。こっちだと鶏肉ばかりなのは、人種とか……こう……事情があるのでしょうか……?」
「だからなんでそんなおそるおそる聞くんだ。鶏肉……白肉って呼んでる肉のことか」
「え、あれって鶏肉じゃないの?」
そういえば、卵は鶏卵より少し大きめで殻が厚い。鶏とも違う種類だったのか。
「んー、なんと言ったらいいか」
リベリオは顎を撫でながら何事かを考えて、それから口を開いた。
「鶏肉はこの辺じゃあまり食べない。ないこともないが……豚や牛肉も、もう少し涼しいところだな」
「あるにはあるんだ」
「ああ。カフェオレやプリン用に輸入の無糖練乳を買ってるだろ。この国の気候は牛を育てるのにあまり適していないらしい。もちろん、獣人の中には食べたくないやつもいるのは事実だが」
「そっか、暑いからって前に聞いたかも」
「伝染病の問題もある。人間より獣人の方が動物由来の病気にかかりやすいんだとか」
「なるほど……じゃ、普段食べてる白肉って、なんのお肉? あと赤身のお肉もあるよね? 孤児院ではあまりお肉自体食べないけど」
「孤児院は単純に予算が多くないのと、子供の獣人は肉類を嫌がることがあるからだろうな。俺は子供の頃から平気だったが、胃腸が未熟で肉食に適さないとか、肉の臭みを強く感じて食べられないことがあるそうだ」
「なるほど」
さっきからなるほどしか言えなくなってる私。
「あと赤肉か。うーん、見せた方が早そうだな。次の休みは牧場に行くか」
「うん!」




