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狼さんの木陰カフェ〜追放聖女は闇魔法でスローライフを送りたい〜  作者: シアノ


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コミカライズ記念番外編 ウサ耳少女は特製パフェの夢を見るか

『木陰カフェ、本日お休みします』


 という内容が書かれているらしい札を門扉に掛けた。

 私はアニムニアの言語は勉強中でまだまだなので、リベリオに書いてもらったものである。


 今日は木陰カフェで使われている井戸の水質検査があるのだ。そのため、検査が終わるまでカフェの営業は出来ない。


 しかもタイミングがいいのか悪いのか、リベリオは用事があって、夕方までカフェに顔を出せないと聞いている。

 なので、いっそ今日は休みにして、孤児院に遊びに行くことにしたのだ。みんなに新作のお披露目もしたいし。


 私はみんなの喜ぶ顏を思い浮かべて孤児院に向かった。




「フォクシー、遊びに来たよ!」

「あ、あら……サナ、いらっしゃい」


 しかし、フォクシーは何やら困り顔をしている。いつもニコニコと慈愛溢れる微笑みをしているのに珍しいことだ。


「フォクシー、どうかしたの?」

「いえ……その……久しぶりに焼き菓子を焼いたのですが、失敗してしまって……」


 キッチンからは思わず涎が出そうなほどいい香りがしてくる。この香りは最近アニムニアで流行っているキャロブ豆だ。


「すっごくいい香りなのに」

「それが……見てください」


 キッチンの台には、オーブンから出したてのココアクッキーのような焼き菓子が並んでいた。

 いや、並んでいるというか、天板と同じ大きさのクッキーが一枚、という感じである。


「たくさん焼こうとしたら、全部くっついてしまって」

「あー、間隔狭く並べたら広がってくっついちゃったんだ。あるある!」


 私も日本にいた頃、やったことがある失敗だ。


「まだ焼きたてでしょう? なら、熱いうちに切っちゃえばいいんじゃない?」

「いえ、それだけじゃないんです。キャロブ豆の粉を入れるのに材料の配合を変えたせいか、いつもより固くなってしまいました」

「ちょっと味見させて」

「ええ、どうぞ」


 私はフォクシーの許可をとり、くっついて天板いっぱいの巨大サイズになったクッキーをコンコンと割って一口食べてみた。

 味はとっても美味しい。香ばしく、ココアに似た香りと、優しい甘さが口に広がり、ついつい微笑んでしまうほどだ。しかし、確かに固い。例えるとイタリアのビスコッティより固いかも、ってくらいだ。


「確かにちょっと固いけど、美味しいよ」

「ですが、小さい子には食べさせられないでしょう」

「そうだねえ」


 孤児院なので子供は多い。歯や顎がまだ弱い子供には厳しい固さかもしれない。


 私は腕を組み、うーんと唸った。

 小さい子には食べさせられない固さだけれど、この美味しそうな匂いを嗅いで食べられないのはあまりにも可哀想だ。


 例えばミルクやコーヒーに浸して食べるのはありかもしれない。でも、常夏のアニムニアではホットミルクを飲む文化がほとんどない。小さい子ならコーヒーはやめておいた方がいいだろうし。


 チーズケーキやティラミスの土台にするのはどうだろう。砕いてから底に敷き詰めて、ケーキ類の水分を吸わせれば固いのも問題ない。

 しかし、私が持ってきた手土産はいつものアイスと、新作のゼリーなのだ。その手のケーキを今から作ると、持参したお土産と被ってしまう。


 では、今あるものを組み合わせたらどうだろう。


 私はふと思いついて、フォクシーに尋ねた。


「フォクシー、この焼き菓子、砕いて使ってもいいですか?」

「ええ、もちろん。どうにかなりそうですか?」

「ちょっと思いついたことあって。私がもってきたものと組み合わせて使いますね!」

「まあ……サナは本当にすごいですね! では、お願いしてもいいですか?」

「お任せあれ!」


 私は胸を張った。


 カチカチのクッキーはすりこぎのような棒を借りて粉々に砕いておく。


 そしてエイダさん経由でたくさん買った透明なグラスを人数分用意した。足が付いた可愛いグラスである。カフェで使おうと思っていたので結構な数があるのだ。


 私は鞄からお土産のジャムを取り出した。真っ赤なリモルジャム。シロップの実の部分を煮詰めてジャムにしただけ。これをグラスに少し足らす。すると透明なグラスの底が赤く染まった。


 お次は新作のゼリーだ。今日はコーヒーゼリーとミルクゼリーを作ってきた。それをスプーンで軽く崩し、ミルクゼリー、コーヒーゼリーの順番でグラスに入れた。ただし子供用はミルクゼリーのみである。

 その上に、さっきの砕いた焼き菓子をたっぷり入れる。そしてまたミルクゼリー。


 よし、これで八割完成である。

 それから、アイスの素を取り出した。今日のは赤リモルを使ったピンク色の可愛いアイスである。それをいつも通り、闇魔法で熱を奪い、ひえっひえのアイスにする。


「よし、出来た!」


 魔法は使えば使うほど、ゲームでレベルが上がるみたいに手際よく出来るようになるのだ。しかも今日はカフェが休みで魔力を使っていない。おかげで、アイスをたくさん作ることが出来た。


 さっきのグラスにアイスを盛り付け、またジャムを垂らしてミンティオの葉を飾ったら特製パフェの完成だ!

 自分でも中々の出来だ。透明なグラスに赤リモルジャムが透け、ゼリーやアイスの層が見えている。グラスがキラキラして、パフェの醍醐味が詰まっていた。


「みんな、おやつ出来たよ!」

「わー、サナお姉ちゃーん! これすごーい!」


 ウサ耳の可愛いレクが私に飛びついて来た。

 もう可愛いなぁ。

 私はレクの頭を長い耳ごとわちゃわちゃ撫でる。


「まあ、サナ、とっても綺麗なお菓子ですね!」

「パフェっていいます。ゼリーとアイス入りですよ」

「なんだか、食べるのがもったいないくらい……」


 フォクシーはパフェグラスを前に目を輝かせた。

 透明なグラスに入ったパフェはキラキラで、私でもテンションが上がるので、気持ちは分かる。


 今日は用意していないから果物はないけど、生で食べられる果物を飾り付けたらもっと素敵になるだろう。


 赤リモルは柔らかすぎるから、黄リモルがいいかもしれない。以前ジュースで飲んだリンゴっぽい風味の果物を知りたいところだ。あとはバナナのような果物があるといいんだけど。アニムニアは常夏だから、調べれば果物も色々な種類があるかもしれない。

 それから、以前作ったキャロブ豆のチョコソースをかけるのもいい。バナナみたいな果物を見つけ出せたら、チョコバナナパフェが出来るだろう。


 気がつくとフォクシーだけでなく、子供たちもうっとりパフェを眺めていた。


「ほらみんな、アイス溶けちゃうよ!」

「あ、そ、そうですね。こんな綺麗なものを食べていいのかしらって思って……」

「いいんですよ! 召し上がれ!」


 私はニッコリ笑う。作ったパフェを綺麗と言ってもらえて、それだけで満足なのだ。


「では、いただきましょうか」


 いただきます、と声を合わせてみんなはスプーンを手にした。


「好きなようにスプーンで掬って食べてね。色々な味がするよ」

「すごーい! プルプルのが入ってる! 甘ーい」

「まあ、このプルプルした部分、美味しいです」

「それはゼリーっていいます。フランから送ってもらったの」


 アニムニアではゼラチンを使うことはないみたい。多分、暑くて固まらないからなのだろう。


 フランやテアさんとは今も文通をしているのだけど、あちらの国では板状のゼラチンを使ったゼリー寄せみたいな料理やお菓子があるとレシピを教えてもらったのだ。ゼラチンも一緒に送ってくれたので、今日はお試しとしての新作なのである。

 リベリオがいなくても私一人で作れたので、リベリオが忙しくてプリンを作れない時に、メニューにゼリーを用意するのはありかもしれない。コーヒーゼリーもカフェの定番だしね!


 私もパフェを食べてみる。

 最初にキーンとするほど冷たいアイスがたまらない。その下はプルプルゼリーゾーン。軽く混ぜて、フォクシーの作った焼き菓子を砕いた部分と一緒に口に運ぶ。口の中でケーキみたいになって満足感が高い。フォクシーの焼き菓子は味はとてもいい。今日はたまたま失敗しちゃったみたいだけど、いつもは美味しい焼き菓子を作っているんだもんね。

 それに、私は実のところコーンフレークのパフェはそんなに好きではなかったりする。嵩増しをしてる感じがするからだ。

 コーンフレークの代わりに砕いたクッキーにしたらこんなにも素敵な味になる。そういえばクランブルってこんな感じかもしれない。

 次からも絶対こうしようと心に決めたのだった。


「サナお姉ちゃん、すっごく美味しいよ! ありがとう!」


 子供たちは口の周りをアイスやら何やらで汚しながら、ニッコニコのいい笑顔である。


「みんな、このパフェは私とフォクシーの合作だよ!」

「まあ、そんな……私は焼き菓子を失敗しただけなのに」

「ううん、フォクシーの焼き菓子じゃなかったら、こんなに満足度が高くなかったもん! 素敵なパフェになったのはフォクシーのおかげ。ありがとね!」

「サナおねーちゃん、フォクシー、ありがとう!」


 素直なちびっ子たちもフォクシーにお礼を言って、フォクシーもいつもの微笑みを取り戻していた。


「あのねレクね、このキラキラのパフェっていうお菓子、作れるようになりたい!」


 レクは頬を赤リモルのように染め上げてそう言った。その目はパフェに負けないくらいキラキラと輝いている。


「レク、おとなになったら、サナお姉ちゃんのカフェで働きたいなー!」

「嬉しいことを言ってくれるじゃん!」


 私はレクのほっぺをむにむにした。


「それまでに、木陰カフェをうんと盛り立てて、今より大きなカフェにしなきゃだね」


 今は人を余分に雇えるほどの規模ではないからだ。

 リベリオと二人で忙しくてもなんとかなる、という規模。このところ、少し混んだりもするので大きいカフェにしたい気持ちもあるけれど、今の場所を気に入っているから移転するつもりもない。

 うーん、と悩んでいると、レクはニコニコしたまま爆弾発言をした。


「あのね、レクがおとなになる頃には、サナお姉ちゃんは王子様と結婚しててぇ、赤ちゃんが産まれると思うんだぁ。だから、サナお姉ちゃんの分もレクが働くのー!」


 赤ちゃん──リベリオとの。

 私はそれを想像して頬が熱くなってしまった。


「まあ、それは素敵。そうしたら私も子守りに行きますからね!」


 フォクシーが両手を合わせて微笑んだ。

 みんなも赤ちゃん! 赤ちゃん! と喜んでいる。

 しかしリベリオとは結婚もまだなので! 

 ああ、リベリオがいない時でよかった。恥ずかしくてたまらないもん。


「──なんだ?」


 と、そこに聞こえた声。


「リ、リベリオ!」

「まあ、リベリオ、早かったですね」

「ああ、用事が早く終わったんだ。俺が来たら邪魔だったか?」


 私は慌てて首を横に振った。


「だ、だいじょぶ! えっと、新作、あるから、リベリオにも食べてほしいなって」

「おい、サナ。顔が真っ赤だぞ。赤リモルみたいになってる」

「な、なんでもないからぁ! リベリオは座っててっ!」


 私はリベリオを振り切ってキッチンに向かった。

 リベリオの分も特製パフェを作るために。

 出来上がる頃には、この真っ赤な頬も落ち着いているはずだ。


 そう思っていたのに、レクから話を聞いたらしいリベリオの頬が赤くなっていて、せっかく落ち着いた私の方まで再度真っ赤になってしまったのだった。


シアノ原作の『狼さんの木陰カフェ~追放聖女は闇魔法でスローライフを送りたい~』がコミカライズになりました!


https://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/item/362642/

Renta!さんの配信ページはこちらです!


雪野はじめ先生(@y_kino0) がすっごく素敵な紗奈とリベリオを描いてくださいました!

本当に理想通りです✨

レーベルはCOMICスピアさんで、Renta!にて01/30先行配信開始です。

読んでいただけたら嬉しいです!

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