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狼さんの木陰カフェ〜追放聖女は闇魔法でスローライフを送りたい〜  作者: シアノ


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50/61

50 帰宅



 目を覚ますと、見覚えのある天井が視界に入ってきた。


「あれ……ここ……」


 身体が重く、もそもそと身を起こす。

 紛れもなく私の部屋。アニムニアのカフェ兼自宅の寝室だ。

 肌にまとわりつく熱気も懐かしいアニムニアのもの。

 どうやらいつのまにか帰ってきたらしい。


「──目が覚めたか」


 ぼんやりしてると声をかけられる。リベリオだ。


「なんだかぼーっとしてるから一応説明しとくと、サナはまた魔法貧血でぶっ倒れた。それは覚えてるか?」

「あーええと、うん。いつもご迷惑をおかけしてます。フランの足を治すのに頑張り過ぎちゃった」


 ようやく脳みそが動いてこれまでのことを思い出す。ロザーンでフランの足を治し、そのまま気絶したのだ。


「それで、ここにいるってことは、リベリオの転移魔法で帰ってきたのかな」

「ああ。ジーノ達を連れて近距離転移をして……俺の魔力が回復するのを待ってサナだけ連れて一足先に戻ってきたんだ。なかなか目を覚さないから……」

「え、心配した?」

「当たり前だ。お前のことが心配過ぎて、心臓がいくつあっても足りない」


 リベリオはそう言いながら私の髪の毛をくしゃくしゃにかき混ぜる。

 小さい声で「無事でよかった」と言うのが聞こえた。

 私はなんだかむず痒い気分になって照れ笑いする。


「ただいま、リベリオ」

「……おかえり」


 薄く微笑うリベリオは、何度見てもやっぱりとんでもなく美形だなって思う。

 そして私の大切な人で、帰る場所であり、居場所でもある。

 そう思えるってことが、本当に嬉しくて幸せだった。


「ねえ、リベリオ……もしさ、私が聖女の魔法全部使えなくなったら、どうする?」

「うーん、それは困る。だってサナの夢が遠のく。カフェでゼーロやリモルの炭酸割りは出せるだろうけど、水出しアイスコーヒーを冷やせなくなる。それに氷菓とか、前に言ってたプリンとかそういう菓子も作れないと、サナが……元の世界が恋しくなってしまうかもしれないから……それは困る……」


 私はその言葉に額を押さえた。頰のあたりが熱い。ちょっと意地悪な質問をしたつもりだったのに、そんなの反則だ。完全に私の負け。


「だ、大丈夫だよ!元の世界は、ちょっと懐かしいと思うことはあるけどさ、私はもうあっちに帰りたいって思わない。私……ここにいたい。この家、この店、それからリベリオの側。それが私の居場所なんだ」


 私はリベリオにそう告げた。きっと真っ赤な顔をしている。でも、本当の気持ちだ。


「覚えてるかな。私、リベリオに最初に助けてもらった時、居場所がどこにもないって言ったの。私の居場所、出来たよ!」

「ああ。覚えてる。俺も……王位継承権とか、色々ごたついてて、ずっと自分の居場所がない気がしてた。苦しくて、なんだか息ができないみたいなさ、落ち着かない気持ちがあった。サナが放っておけなかったのは、そんな自分と重ね合わせていたからだ。でも、今はサナのそばが俺にとっての新しい居場所だって気がする。改めて、まだ先になるけど……俺の生涯の居場所になってほしい」

「う、うん……私で、よければ……」

「俺は狼の獣人(アニムス)だから、一度相手を定めたら絶対に覆さない。サナからしたら、しつこいと思うこともあるかもしれない。でも、離れたいとサナが思っても離さない。……それでもか?」


 リベリオはそっと手を伸ばし、壊れ物に触れるみたいに私の頬に触れた。

 心臓は激しく動き、体温が上がった気がする。


「もちろんだよ!だって、私、リベリオと──」


 言いかけた私の言葉は勢いよく開くドアの音にかき消された。


「ねえねえっ!サナさんもそろそろ目が覚めたでしょっ!」


 元気のいい声。ニッコニコの笑顔なエイダさんが飛び込んできて、寄り添った私とリベリオを見る。


「きゃあーっ!ごめんなさい!やだ、お邪魔しちゃったあああ!」


 おそらく真っ赤な私に負けないほどエイダさんは頬を染め、両手で目を覆う。でも思いっきり隙間から覗いているのがバレバレだ。


「うふふ、これは次回の恋話は、とんでもなく盛り上がるわねぇ!」


 そんな底抜けに明るい声を出すエイダさん。

 でもそれは、今回のことは気にしていないよ、って私にアピールしているようにも聞こえた。


「……サナ、何か食べやすいもの作ってくる」

「あ、うん……」


 リベリオも少し頬を染めながらそそくさと寝室から出て行った。


「やったわね!」


 エイダさんは私にウインクしてくる。

 まだ熱の冷めやらない頰を押さえた。


「エイダさん……あの」

「あっ、言っておくけど謝罪とかはやめてよね。私はそういう辛気臭いの嫌いなの!私は儲け話と恋話が好きなのよ!」

「うん……ありがとう!」

「落ち着いたらまたお泊まり会して恋話しましょうね!楽しみだわぁ。あ、儲け話でもいいわよ」


 エイダさんの気さくな物言いに私も安心したし、笑っているうちに頰の熱も引いていた。



 リベリオが作ってくれたパン粥のようなスープを食べながら詳細を聞いていた。

 優しい味のスープにパンがふやかしてある。それだけのシンプルな食事だけど、何せリベリオが作ったのもあってものすごく美味しい。食べると元気が出てくるのを感じた。


 私はなんと丸二日も寝ていたらしい。それはさすがに寝過ぎだろう。身体が重いのは魔力貧血より、寝過ぎていたせいなのかも。


「ねえ、もうお店出ても……」

「駄目に決まってるだろ。後で医者が来るから見てもらって、何も問題なくても明日は一日様子見。明後日は動けそうなら店の準備まではしていいけど、早くてその次の日まで待て」

「はぁい……」


 リベリオは厳しい。でもそれだけ心配させちゃったのは事実だし、私のことを思ってくれているからなのは理解している。


(でも、早くカフェ再開したいっ!)


 心の中でそう叫ぶしかなかった。


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