20 リモルスカッシュ完成!
そんな準備に明け暮れて、とうとう1週間が経った。
カストさんに頼んだ家具も全部出来上がったと連絡があった。
急いで向かうと、カフェスペースに並べられたテーブルや椅子を見て私は思わず歓声を上げていた。
カウンターもピッカピカだ。思わず手で撫でさすった。良く磨かれてつるつるした感触が気持ちいい。
「わあ、すごく立派なテーブル!こんなに早く、ありがとうございます!」
「いえ、私も木をいじるのが楽しくてつい。雨が降っても大丈夫なように塗装してありますから、外に置きっぱなしでも大丈夫ですよ」
元々あった4人掛けのテーブルも使う予定だったが、新しいテーブルと並べても遜色ない。ついでに磨き上げて綺麗にしてくれたらしく、感謝しかない。
「それから、勝手かと思いましたが……元々あった寝台の枠に錆が浮いていましたから、新しいものを作らせてもらいました」
「えっ!」
私はドタドタと足音を立てて走り、寝室予定の部屋の扉を開く。そこにはとても立派なベッドが置かれていた。
元々あったベッドフレームは金属だったけど、新しいベッドは木製だ。艶々の飴色で渇いた木の香りがする。買うより立派な気がする。手で押しても全く軋みもしない。けれど固いだけでなく、包み込んでくれるような柔らかさがある。すごく寝やすそうだ。
「え、ええと、これは幾らくらいお支払いすれば……」
「いえ、私が勝手にやったことです。引越しとカフェ開店のお祝いに受け取ってもらえませんか?」
「あ、ありがとうございます!こんな立派な家具……本当に嬉しいです。なんだかお世話になりっぱなしで」
カストさんは少しはにかむように笑う。
「こちらこそ、いつも妻がお世話になってます。もし嫌でなければたまに相手をしてやってください」
「もちろんですよ!カフェができたらご夫婦でぜひいらしてくださいね!」
「ええ、楽しみにしています」
やっぱりこの家にして良かった。
お隣さんのシビラさんもカストさんも本当にいい人だ。
カフェの店舗の方はこれで完成だ。
まだしばらくは教会から通うけど、もういつでも引っ越しできる。
あとは中身……カフェで出す飲み物だけ。
そろそろ漬けたリモルシロップも出来上がった頃だろう。なので、教会のみんなでリモルスカッシュの試飲会をすることにした。
蓋を開けると甘酸っぱいリモルの香りが漂う。
子供には甘めの黄リモルスカッシュで、炭酸は闇魔法で半分ほどに弱めている。私とフォクシーは青リモルに炭酸そのままで出し、リベリオには青リモルに弱炭酸のスカッシュだ。
それを更に闇魔法でキンキンに冷やして、飾りにカップの縁にミンティオの葉を飾る。見た目も綺麗でいかにも美味しそうだ。
「それじゃ、乾杯!」
私は真っ先に青リモルスカッシュに口をつけた。
口の中でパチパチと炭酸が弾ける。甘酸っぱくて爽やかな香りが口中に広がり、喉へと流れていく。刺激的で、爽快で、甘さも酸味もちょうどいい。
ごくごく、と飲み干し、ぷはーと息を吐いた。
「これだよこれ!まさに、おばあちゃんのレモンスカッシュみたい……!」
似ていても材料は全然違う。なのに甘酸っぱくて懐かしい、暑い夏の日におばあちゃん家で飲んだレモンスカッシュの味がした。
「美味しいー!口の中、パチパチって!」
「やーん、お口の中いたーい」
「すごーい甘いねー!」
子供の反応は三者三様だ。炭酸を嫌がるウリーにはさらに弱めて飲めるくらいにしてあげる。レクとミーカは大丈夫みたいだ。目をキラキラさせて小さな手でカップを持っている。
黄リモルは甘味が強いからか味は概ね好評だった。私も飲んでみたら確かにかなり甘くて、よりジュースっぽさが増していた。これはこれで好む人がいそうだ。
「フォクシーはどう?」
「アイスコーヒーの時も驚いたのですが……私、今顎が外れてしまいそうなほど驚いています。実は炭酸水も飲むのは初めてで……」
「あ、炭酸キツかったら弱めるよ?」
「いいえ、それがとても美味しいと感じるのです。口の中が痛い気がするのに……不思議です」
フォクシーはうっとりとカップを両手で持ちながら一口ずつ飲んでいる。炭酸の刺激がお気に召したようだ。
「リベリオは?」
「……美味い……」
見ればカップは空になっていた。
炭酸を半分に減らしてあるとはいえ、もう飲み終わるとは相当気に入ってくれたらしい。
「……正直、炭酸水は苦手だったんだ。鉄の匂いがキツくて、舌も刺すみたいで、美味いと思ったことがなかった。でも、これは美味い」
「おかわり、いる?」
無言でカップを突き出してくる。
よっぽど美味しかったらしい。
私は嬉しくて思わず口元が緩む。
リベリオはリモルスカッシュを2回おかわりした。
さて、リモルスカッシュも完成したことだし、私のカフェはいよいよ明日オープンなのだった。




