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第115話 明るい家族計画

 俺は真っ白なクィーンサイズのベッドに、仰向けになっていた。

 天蓋って真下から見るとこんな感じなんだ、と思いながら。


 伸ばした左腕を見ると、エリーがその上に頭を乗せてこちらを見ている。

 恥ずかしそうに俺を見る顔は赤く染まり、指は口元に添えられている。

 最高の芸術性を備えた美しい四肢も、仄かに染まっていた。


「もう、ヤクモ……、恥ずかしいので、あまり見ないでください……」


 呟くような小さな声で呟きながら、エリーは俺の腕にのの字を書いていた。

 無言で左腕を曲げると、エリーがこちらに雪崩れてきた。そのまま強く抱きしめる。


「やんっ! いきなり何をするのです!?」


 俺の胸にぎゅっ! されながら、エリー抵抗しているテイを装う。

 何をする? と言いながら嬉しそうに顔を埋めていた。


「エリーを見ていたら抱きしめたくなったんだ。柔らかくて抱き心地が良いんだよね」


「なっ、なにを突然言い出すのです!?」


「本当の事だよ。それにすごく綺麗だ……」


 胸元に来ていた顎に手を添えて上に向ける。なされるがままのエリーは瞳を潤ませていた。

 俺がキスをすると、エリーの体に熱がほとばしるのが分かる。


「ヤクモはエッチです……」


「男はみんな狼だよ。大好きな人に対しては、ね」


 狼になった俺は、胸元にいるエリーを仰向けにして、深い口づけをした。

 エリーもそれに応えてくる。


 漏れる吐息は、白い雪のような肌に色を与え、脳を蕩けさせる。

 求め合う体は、重なりあうたびに快楽に溺れていく。


 第二ラウンドは、部屋に響く嬌声をゴングにして開始された。



 無心で愛し合った後、エリーが腕を絡ませながらこちらを見ていた。

 その表情は恥ずかしいそうで、照れている姿もふつくしひ。


 完璧な造形の果実が、俺の腕に触れている。賢者になっていなかったら、狼が再び出現していただろう。


「うぅ、恥ずかしいです。今回も絶対に声が外に聞こえていますし、何度も気を失いかけてしまいました……」


「こんなに造りがしっかりとしているのに?」


 俺は周囲の壁を見て思った事を声に出す。


「そうですね、部屋から出た時に分かるでしょう。ナツメ邸の壁は、もっと厚くするように指示しておきます」


「ふぁっ!? ナツメテイって何っ!?」


 変な声が出てしまった。何だナツメテイって? 美味しそうだが。


「ふふ、わたくしの夫で、公爵の肩書を持つヤクモが宿屋住まいだと、国の沽券に関わります。ですので、お父様にお願いして、一週間前からわたくし達の住まいの建築を進めているのです」


「一週間前? シュタインズフォートから戻ってきたくらいだね」


 ご利用が計画的で感心してしまう。


「何を言っているのです。わたくし達が結ばれるのは、ヤクモの口づけから決まっていた事です」


 俺が思うより更に前からの決定事項だった。


 エリーは思い出すように目を瞑り、指先を唇に沿わしている。先程までの事もあり、その動作は妖艶に見えた。


「いや、あれは救命行為で……」


「その行為のお陰で、わたくしは目を覚ますことができたのです。そうなければ今頃は……」


 エリーの肩が少し震えたような気がして、気が付くと抱き寄せていた。


「そうだ、エリーがいない世界なんて考えられない……」


「ヤクモ、わたくしもです」


 エリーを近くに感じる体温は、乱れたシーツを横目に心を穏やかにしていた。

 抱き合う至福の時間を噛み締めながら、しばらくベッドの上で語り合った。



 エリーの部屋に来て、五時間が経過した頃。俺は二人の時間を堪能し続けていた。


「この後、十時からお父様の部屋に来てほしいのです」


 楽しい時間に釘を刺す形になった言葉に、エリーは寂しそうな表情を見せる。

 子供を作れと言っていたシュタイン王に、どういう顔で接すれば良いのだろう。


「分かった、けど気まずいね」


 娘を抱いた男が、その直後に現れたら……。俺だったらどうなるのだろう?


「お父様は国の為政者です。わたくしの結婚を急かしていましたから、喜んでも怒ることはないでしょう」


「そう言えば、きちんと挨拶も出来ていないし、良い機会かも知れないね」


 お互いに頷きあって、二人でシャワーを浴びる。うん、バカップルだ。


 そして、服を整えて扉を二人で開けた途端、通路には野次馬(ギャラリー)がひしめき合っていた。

 その様子に俺達は気圧され、再び部屋に戻る。


「何だあの集団は? いつかテレビで見た、アイドルの追っかけみたいじゃないか」


「ヤクモ、何ですか? そのアイドルとかテレビというのは?」


「凄く人気のある人の事なんだけど、それを各家庭で見ることができる機械があるんだ」


「ふふ、何だか夢物語のようですね」


「帰る事ができるなら、一緒に連れて行って見てもらいたいよ」


 その時、腕を掴む力が強くなった。見ると熱い視線が注がれてる。


「ヤクモと一緒にいられるなら、何処にでも……」


「俺もエリー達と一緒なら……」


 それを言った瞬間、ジト目になるエリー。


「ヤクモはバカです! こんな時はわたくしだけにして下さい!」


 それを聞いた俺は嬉しいのやら、恥ずかしいのやら。


「そ、それじゃあ、目の前に広がる異世界に飛び込もうか」


「ええ」


 小さく頷くエリーを見て、二人で扉を開けた。

ティア「エリーの声凄かったですね」

アンナ「私もそうだった。風で消したけど……」

それを聞いたティアは遠い目になる。

ティア「わたくしはモーガン達にロビーで騒いでもらいました」


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