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【書籍化】運良く人生をやり直せることになったので、一度目の人生でわたしを殺した夫の命、握ります  作者: 狭山ひびき
運命共同体の夫が、やたらと甘いです

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犯人の目的 3

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「どうしたんじゃ?」


 朝食を終えて、ルーファスが仕事のために城へ向かうと、ヴィオレーヌはポーションを作るために机に向かった。

 午後から、いつものようにリアーヌとジークリンデが来るのだが、今日は暇つぶしに刺繍をすると言っていたので、ヴィオレーヌも刺繍をすることにしたのだ。そのため午前中に必要量のポーションを作っておこうと思ったのである。

 しかし、ふとした瞬間に昨日のルーファスの言葉が脳裏をよぎって手が止まる。

 ごろごろしていたアルベルダが見かねてヴィオレーヌに膝に飛び乗って、首を傾げた。


「ため息が多いようじゃが、何か困りごとか?」


 王宮に戻ってから、アルベルダは毎夜ミランダが回収していく。

 ルーファスとヴィオレーヌの夜を邪魔しないようにという配慮らしいが、そのため、昨日の会話はアルベルダは聞いていない。

 アルベルダに聞かせるのはいいが、まだはっきりとしていない話をミランダたちに聞かせるのは憚られた。

 ヴィオレーヌはちらりと背後を見て、こっそりとアルベルダと自分の間に防音の魔法をかける。これで会話は聞こえないだろうが、口が動いていると怪しまれるので、できるだけ口を動かさずに手早く昨日の話を説明した。


「なるほどのぅ」

「殿下が引き続き調べてくれているそうなので、詳しいことがわかればまた教えてくれるそうです」


 一通りの情報を伝えて、ヴィオレーヌは防音魔法を解除する。

 マグドネル国がダンスタブル辺境伯領にいた残党兵を支援していたとしたら、これは大問題である。

 マグドネル国王と王太子は魔術契約を結んでいるため、彼らが関与している線は薄い。ルウェルハスト国に保管されている魔術契約書によって、二人の命はいつでも奪うことが可能だからだ。


(マグドネル国王と王太子を除いた場合、ポーションや装備などの支援を簡単に行える立場と考えると、第一王女が一番疑われるけど……)


 だが、マグドネル国の第一王女は非常に我儘で自分本位な性格をしているが、策略家という印象はない。ヴィオレーヌが知らないだけかもしれないけれど、計略を巡らせてルウェルハスト国を落とそう企んでいるとは考えられなかった。

 詳細がわかるまでは憶測で物を語らない方がいいだろうが、マグドネル国が関与していようといまいと、何やらきな臭いのは変わらない。

 アルベルダが机の上に器用に足を組んで座り、前足を顎の下に乗せた。よくバランスが取れるものだと感心していると、彼は「よし」と金色の目をきらりと輝かせる。


「わしは少し出かけてこよう。しばらく戻らんが、心配せんでいいぞ」

「え?」


 唐突すぎて、ヴィオレーヌは目を点にした。


「出かけるって、どこに行く気ですか?」

「今はまだ秘密じゃ。なあに、心配するな。わしにどーんと任せとけ」


 怠惰な黒猫に「どーんと任せる」のは不安しかないが、自由を愛する師匠がヴィオレーヌの言うことを聞くはずがなかった。


「気を付けてくださいね。師匠は今、猫なんですから。あ、改良版ポーション、持って行きます?」

「そうじゃのぅ、一本もらっとこうか」

「わかりました、ちょっと待ってくださいね」


 ヴィオレーヌはハンカチと紐を使って、猫の背中に背負うのにちょうどいいリュックを急いで縫うと、その中に改良版ポーションを入れた。

 リュックを背負ってもらい、紐の長さなどを調整すると、アルベルダが満足そうな顔で「ついでに菓子も入れといてくれ」と言い出したので、リュックに入るだけのクッキーを詰めてやる。


「猫にリュック……可愛いですね」


 ルーシャがリュックを背負ったアルベルダを見て頬を緩めた。

 中身がアルベルダだと知っているので、どうしても生前のおじいちゃんの彼の顔が浮かんでしまって微妙に思ってしまうヴィオレーヌは、純粋に可愛いとは思えないが、まあただの猫だと思えば可愛いかもしれない。


「鴉とかに気を付けてくださいね」

「なぁに、姿消しの魔術を使うから心配いらんぞぃ」


 それなら安心だ、と頷きかけて、ヴィオレーヌは「うん?」と首をひねる。


「まさかとは思いますけど、姿を消して店のものを盗み食いとかしていないでしょうね?」


 ヴィオレーヌがルウェルハスト国に嫁いでくるまで、猫になったアルベルダは各地を旅していたはずだ。嫌な予感がして訊ねると、アルベルダがついっと視線を逸らす。これは確実に前科がありそうだ。


「師匠、お金も入れておきますから、せめてこっそりお金を置くなりなんなりして帰ってください。無銭飲食はさすがに良心が傷みます」

「リュックはクッキーでいっぱいじゃから無理じゃな」

「クッキーを出せばいいじゃないですか」

「それはいやじゃ!」


 食い意地の張った猫である。

 最終的に首に小さな袋をかけると言うことで落ち着いて、それに数枚の硬貨を入れたアルベルダが、ぴょんと窓に飛び乗った。ここは二階なのだが、窓から出て行くらしい。


「それじゃあ、行って来るぞぃ」

「気を付けてくださいね」


 ヴィオレーヌの言葉に頷いた後で、アルベルダがぴょーんと二階から飛び降りる。

 心配になって窓から下を見下ろしたが、地面に華麗に着地したアルベルダは、そのまま姿消しの魔術を使って姿を消した。

 姿消しの魔術を使っていてもヴィオレーヌには見えるが、ミランダたちには見えないので不思議そうな顔をしている。


 ヴィオレーヌはピーンと尻尾を立ててとことこ歩いていくアルベルダの姿が見えなくなるまで見送って、そっと胸の上を抑えた。

 アルベルダは用事が終われば戻って来るとわかっているけれど、ちょっと寂しい。


(どこに行くのか知らないけど、無茶しないでくださいね、師匠)


 それから、無銭飲食はできるだけ控えてくれるといいけれどと、ヴィオレーヌは肩をすくめた。







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