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96話

さて。夕方になりました。心配だったんでメイドさん通信網で見てたら、それぞれ屋根の上に昇るとか、木の上に隠れるとか、相部屋の人を沈めるとか、色々な手段で1人状態を確保したらしい。

最後の奴は羽ヶ崎君。起きた相手にまたセクハラ発言かまされた瞬間また沈めるという徹底っぷり。うん、素晴らしい。

『あー、テス、テス。こちら『ミナモ』。皆さん進捗状況をどうぞー……あはははは、やばい何これ楽しいね』

一応、どこで誰に聞かれてるか分からないので全員コードネームなんぞをつけてそれで呼び合う事にした。コードネームはくっついてるメイドさん人形の名前だね。つまり針生。

『こちら『アサギ』。ホモに襲われかけたけど返り討ちにした。手に入った情報は北の方にも人間が住んでる地域がありそうだってこと位。以上』

『アサギ』……羽ヶ崎君の報告が終わると盛大な拍手と笑い声。

『るさい!僕としては凄く必死だったんだけど!?』

『だってだってホモに襲わうひゃはははあははははは』

「『ミナモ』、うるさい。次の人は報告」

『えと、じゃあ『モエギ』です。神官さん達と話してきました。ええと、神殿は身分差というか、役職による差が大きくて、普通の神官だと大司祭の顔なんて見たことも無いみたいです。あと、3階より上に普通の神官は入れないみたいです。それから、神殿は大きく2つに分かれてるみたいですね。騎士部門と神官部門があるみたいです。ええと、じゃあ以上です』

ふむ、刈谷も結構喋ってきたみたいだね。お疲れ様です。

『じゃあ俺の番でいいかな?こちら『アヤメ』!司祭長という役職は公にされておらず、司祭たちの中に一人いる事は確かでも誰が司祭長かは司祭長と大司祭しか知らない、という情報を入手致しましたっ!敬礼っ!……あ、あとさ、デイチェモールとかでも見たけど、神殿の下っ端騎士たちが各町の治安維持してる、みたいな話も出た。治安維持してアレとかちょっと信じられないんだけど神殿関係なら仕方ないかもね』

鳥海はノリがいいね。うん。そして新事実発覚。……ね。維持してあの治安って、やばくね?

やっぱり『アライブ・グリモワール』の言ってた通り、神殿は異世界人の奴隷が欲しい訳で、その為にこう……人攫い見逃してるとか……いや、考え過ぎか……。

しかし、ずっとあの騎士の集団と話してたのかあ。……それで司祭長の話になるとは、鳥海はどういう話術を駆使したんだ。

『あー……ええと、こちら、『ミカン』……。騎士団長は大司祭の護衛の為に出かけてる、らしい。あと、大司祭と司祭長と騎士団長は……ええと、多分、『共有』も防ぎそうな装備……アミュレット、っていうのを持ってる、って』

おお、鳥海と角三君の情報を合わせたら王都に大司祭が居そうな雰囲気になってきたぞ!

『『トコヨ』、でいいのかな?えーと、ね、女性の司祭さんが一昨日ぐらいから一人で礼拝堂に毎晩篭るようになった、っていう情報と……あと、ひたすら恋バナを……しんどかったよー』

……お疲れ様でした。女性陣の心まで射貫いてしまったのが悪い。ドンマイ!

『こちら『サクラ』。神殿の一部に一神教に対する疑問を植え付けてきました』

……やっぱり洗脳してたああああああああ!

くっそ!『交信』は音声だけなのに社長のドヤ顔が目に浮かぶようだぜっ!

「……情報は?」

『大司祭は人を蘇らせる奇跡を使う、とか言われていましたね』

そっち先に言えよっ!結構重要じゃないか、それ!




「纏めると、騎士団長と司祭長から大司祭の情報を得るしかない、その2人と大司祭にはおそらく『共有』が効かない、誰が司祭長か分からない、って所か」

そうね。うーん……やっぱり司祭長が誰か分からないっていうのは辛いね。

「とりあえず今晩は『ミカン』が接触した女性騎士にコードネーム『メイド長』が『共有』を仕掛ける。各自……特に『アサギ』は気を付けて夜を明かせ」

私のコードネームはコードネームじゃないのにコードネームに聞こえるから不思議だね。うん。

『洒落になんないんだけど、それ』

頑張れ羽ヶ崎君。

「それじゃあ今日の所はこれで。明日以降も頑張ってくれ。特に、司祭長、騎士団長、対『共有』装備アミュレット、あたりの情報を重点的に頼む。それじゃあ以上。解散」

鈴本が締めると、各自それぞれ個性的な返事をして『交信』を切った模様。


しかしその1分ほど後。

『忘れてたんだけど、こちら『ミナモ』。『メイド長』は至急迎えに来てください。お腹減った……』

うん。君は自力だとこっちまで帰ってこられないもんなあ。




それから針生を迎えにいって帰ってきて、晩御飯(今日はオムライスにしましたよ)を作って食べて、夜を待つ。

「針生は例の女性騎士の場所は分かるの?」

「うん。もう調べてあるから大丈夫。個室だから他の人間の心配も要らないし」

おお、それは有難いなあ。

……段取りとしては、針生と私で神殿の側まで『転移』、針生が『影渡り』で皆さんの元へ荷物……着替えだね、主に。うん。それを配達。

それからまた『影渡り』で女性騎士の部屋まで行き、そこへ私も『転移』。

そして針生には耳を塞いでもらっておいてから、寝ている女性騎士に対して『子守唄』を使い、より深く眠ってもらう。

その間に『共有』でばれないように記憶を見せてもらって、そのままちゃちゃっと帰ってくる。『共有』中の護衛は針生に頼む、というかんじ。

まあ、私の『共有』の腕次第ではやばい状況にならないとも限らないので頑張ります。はい。




そして装備の続きを縫ったり3人で大富豪やったり(私が大抵ボロ負けである)して、夜を待った。

草木も眠る時刻になるまで待って、行動開始。

「じゃあ行ってくるから」

「ん。気を付けてな」

鈴本は別にこの時刻まで起きてなくても良かったんだけども、なんか一緒に起きててくれた。合理的じゃないけど優しいね。

「先に寝てていいからー。ほいじゃ行ってくる」

忍者装束に着替えた針生と一緒に『転移』する。ちなみに私は全裸ステルスも考えたんだけど、万が一『共有』失敗して戦闘になったりすると全裸ってつまり最弱なので、無難にメイド服着てエウラリアさんにしております。

ほら、女性騎士がもし起きちゃっても幽霊だったらさ、なんとなくほら、言い訳がきくじゃない。うん、少なくとも普通の人間よりは。

「それじゃ、皆に着替え届けてくるから」

針生が影に溶けるように消えていったので、神殿を眺めつつ待ちぼうけ。

この世界にも月はある。けど、雰囲気がやっぱり違うんだ。

それから、星もあるんだけど、知ってる星座は一つも無い。いや、元々そんなに星座とか詳しくは無いんだけども。うーん、鈴本あたりが天文詳しかったかな、あとで聞いてみたら面白いかもしれない。

……しかし、やっぱりこの世界自体が地球みたいな星なのかも分からないし、考えるのも無駄っちゃ無駄なのよね。

この世界がヘビに跨る亀の上に乗ってる象さんの大群の上に乗ってる世界だったとしても、私は不思議に思わんぞ。


『『メイド長』。みなもに接続して』

空を見上げて待ちぼうけしてたら、無事針生は目的地に着いたらしい。

早速みなもと『共有』して、視界を借りたらすぐ『転移』。

移動したら、女性騎士が起きない内にすぐ『子守唄』を歌い始める。針生は私に連絡をいれた時点で耳を塞いでいるので大丈夫。

……よし、完全に寝たみたいだ。こうなったらそうそう起きないはず。

針生にアイコンタクトをとってから、そーっと女性騎士に近づいて、そーっと『共有』。


……あれ、ケトラミさんよりは楽だ。

やっぱり種族が同じっていうのは楽なんだろうなあ。それでもまあ、情報を差し出してくれてる訳でもないので部員とやる時よりはかなりしんどくはあるけど。

ええと、とりあえず記憶のたまり場見つけないと。

自分をこぼさないようにしっかり注意しながら進んでいくと、やっとそれっぽいたまり場を発見。ケトラミさんよりは整頓されてるけど、それでも十分探すのがめんどそうだぞ……。

……あ。角三君に関する記憶を発見。……美化されてるな、これ。

……うん、ここは見ちゃいけないね。

あんまりここ見てると、次に角三君に会った時にどういう顔していいか分かんなくなるもんね。


途中で一回MP補給して、何とかやっとこさ騎士団長に関する情報を見つけた。

……ふむ、成程。これは……厄介かもしれない。




見るもの見たのでさっさと離脱。

針生が『終わったの?』と口の動きだけで聞いてきたので頷いてから、さっさと『転移』。

「あー、もうすぐ夜が明けるよこれ」

MPが不足していて2F北東まで戻れなさそうだったので、とりあえず神殿から離れた小高い丘の上に移動すれば、もう地平線が白み始めているのが見えた。

「私としては精々30分かそこらの体感時間なんだけど」

「全然!1時間以上おでこくっつけてずっとあのままだったよ、舞戸さん」

そ、そうか……。以後気を付けなきゃいけないね。


MPを回復させて気力を振り絞ってなんとかまた『転移』。

実験室に帰ってきました。……あれ、講義室が展開されてない。と、いうこと、は……。

実験室のドアをそーっと開けると、椅子に座って机に突っ伏したまま寝ちゃってる鈴本を発見。

「あー……これ、俺達待ってたのか」

「も、申し訳ないね、なんだか」

あんまり動かしたら起こしちゃいそうだし、かといってこのままだと風邪をひいてしまいそうなので、講義室を展開して鈴本の布団を持ってきてかけておいた。

そして何故か、針生も針生の布団を持ってやってきた。

「……俺もここで寝てもいいかな」

「別に構わんよ」

「あー、じゃあそうするわ。……なんか、8人で寝るのに慣れちゃったら1人で寝るの寂しくなっちゃってさ」

笑いながらお休み、と小さい声で言って、針生も布団を敷いて潜ってしまった。

ふむ、私はケトラミさんを布団にして寝るかな。

……と、思ったら、ケトラミさんいなかった。……私が朝帰りになるの見越してお食事に出ちゃってるのか。ふむ。

……呼び戻すのもなんか悪いし、しょうがないね、私も実験室で布団だ。

「あれ、舞戸さんケトラミは?」

「多分ご飯」

針生と鈴本から離れた一角に布団を敷いて潜ると、なんとなくこの世界に来たての頃を思い出すね。

あの時は鈴本と羽ヶ崎君と社長が向こうの方で段ボールとか敷いて寝て、私はこっちの方でやっぱり段ボールとか敷いて寝てたっけなあ。

あの時から考えると今は布団もあるし、離れててもすぐ連絡は取れるし、大体私は『メイド長』に昇格したし。……色々変わってるんだよね。

……私は、変わっただろうか。

ちゃんと、変われているだろうか。

同じ速度で、なんて高望みはしないけれど、けれど……置いて行かれたくは、ないな。

……うん、眠くなってきたから寝よう。朝は……多少寝坊しても許してもらえるよね、多分。

よし。お休みなさい!


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