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25話

 さて。ここまでは割と順調に分配できたので、纏めてみる。


 鈴本は刀と、よく分からんファンタジー補正付きの着流し。

 お前本当にそれで大丈夫なのか、とか思ったけど、よく考えたら君の職業『浪人』だったね。防御を捨てて一撃必殺、若しくは回避。頑張ってください。


 羽ヶ崎君は薄青い結晶を銀で飾ったような杖と、やっぱりよく分からんファンタジー補正付きの……服だ。

 ローブじゃない。魔導士っぽくはあるけど。

 ローブもあったから聞いてみたら、「風が通るのが嫌」だそうだ。そこら辺の感覚はちょっと分からんです。


 社長は……酷い。遂に杖を持つのをやめた。代わりに魔法の発動媒介として、本を使っているようだ。決して角で殴る用ではないそうな。

 防具もこれまた酷く、やっぱり白衣みたいなやつで、その下は大学の教授みたいな、って表現したらいいのか、つまり、そういう恰好になる予定。お前本当に戦闘職なの?


 角三君は王道だ。片手で使える両刃の剣に盾、鎧にマントにヘッドギア以上兜以下の何か、である。王道だ。王道だ。極めて王道だ。

 特筆すべきことがあるとすれば、それは、サブウエポンの短剣。これは『エネルギーソード』の技でMPを刀身に変えて戦う用。『エネルギーソード』は本来、剣が折れた時の緊急手段らしいんだけども、物理攻撃効きにくい敵ってのがやっぱりいるらしく、そういう時の為らしい。


 加鳥は社長より更に酷い。ファンタジー世界観台無しな……レーザーが出そうなライフル銃みたいなのを武器に、よく分からんオーパーツを防具にするようだ。

 聞いてみたら、一応すべてが防具ってよりは武器なんだそうな。それでお前後衛なのか。解せぬ。


 針生はアサシンらしく、体中に暗器が仕込む予定らしい。こわい。

 靴の中とか、袖の内側とかはともかく、あちこちに仕込もうと思ったら服の改造がちょっと必要みたいなので、私が紐縫い付けたり、ポケット付けたりすることにした。

 防具は動きやすそうな服の上にプロテクターみたいな軽くて動きやすい鎧を装備。

 まあ、こちらも王道っちゃ王道だよね。後で幾つ暗器を仕込むのか聞いてみよう。


 鳥海は鈴本とは逆だ。防御に特化するらしい。

 武器はハルバード。リーチで選んだんだろう。防具はフルプレートアーマーにスタウトシールド。兜にガントレットに……という重装備。

 そんな装備で動けるのか?と思ったら、装備と『ガーディアン』という職自体にやっぱりそういう補正が掛かっているらしい。

 がっしょんがっしょん音をさせながら走り回ってくれた。こわい。


 刈谷は、まあ、神官っていうぐらいだからね。十字を模したようなメイスと、鎖帷子を仕込んだ神官っぽい服。まあ、神官だもんね。

 他にもモーニングスターとか、斧とかも装備しようと思えば装備できるらしいんだけども、刈谷は後衛だ。

 こいつ自身が戦わなきゃいけない事態にならないようにするのが前衛の仕事だし、とりあえず、刈谷は刈谷の身だけ守れればいい。

 その為、魔法の効果が一番上がる武器を選択した、ということらしいね。


 そして私だ。見た目には何ら変わらないだろうね。インナーというのは服の下に着るものです故に。

 包丁は普段から装備してる訳でもないしなあ。




 と、まあ、こんな感じになったんだよ。装備できる、装備した時にその補正を受けられる、とか、色々要因が絡むもんで、武器と防具は結局すんなり決まっちゃうんだよね。

 それぞれが装備できる、一番性能のいいものを選べば大抵被らないので。


 しかし、次はそうはいかん。




 装飾品には、変な効果が付いてるのが多い。

 武器と防具は攻撃力と守備力を上げるための物だ。

 時々変な効果付いてるのもあるけども、それは珍しい。

 ただし、装飾品はその変な効果こそが目的だったりするわけで。

 ……例えば、『HP回復速度上昇』とか、『最大MP増加』とかはオーソドックスな方で、中には『暗視』スキルの効果がそのまんまついたモノクル、とかもある。


 そういうややこしさとは別に、装飾品の分配のめんどくささがある。

 何故なら装飾品というのは、大抵、老若男女、誰でも物理的には装備できちゃうからです。

 そして、装飾品っていうのは、小さい。小さいと、場所を取らない。場所を取らないせいで、遺跡の宝箱に大量に詰め込まれていることがザラなんだそうな。

 よって、大量。武器防具の比じゃないレベルの量。……正に掃いて捨てるほど、である。

 そして……厄介なことに、ゲームとかでよくある『装飾品は一つしか装備できません』みたいなのが無い。

 物理的に装備できる限り、装備できちゃうのである。

 効果が被ると2つ目以降、意味が無いみたいだけれど……まあ、種類に関しては、いっぱいあるからさ。




 ということで、仕分けを開始。

 まずは『HP回復速度上昇』『最大HP増加』『MP回復速度上昇』『最大MP増加』は、余程性能がいい物以外は全部はじく。

 やっぱり性能の良し悪しってあるみたいで、『鑑定』するとなんとなく分かるのである。

『鑑定』役が3人になったので割と速かった。

 そして、これだけで装飾品の山が半分ぐらいになった。

 どれほどHP・MP関係が多かったかお分かりいただけるだろうか。


 次に、効果ごとに装備品を分類していって、同じ効果の装飾品が複数あったら、性能がいいのを上から順に最大で九つ残してはじく。

 ……ってやっていった結果、装飾品の山が最初の十分の一位になりました。


 効果の種類はこんな感じである。

 HP・MP系はまあ、先述の通りとして、他に攻撃力・守備力・敏捷力の上昇効果がそれぞれあり、他に『暗視』とか『跳躍』とか『エネルギーソード』とかのスキルだの技だのの効果が付いたのもある。

 そして、特筆すべきは、未知のスキル?が付いた装飾品類。

『転移』・『必中』・『地獄耳』・『魔声』・『ファイアエッジ』・『誘惑』・『魔鏡』・『光の揺籃』。

 ……名前見ただけで分かる奴と、意味分からん奴がありますな。




 とりあえず、攻撃力・守備力・敏捷力上昇の装飾品を配布。

 攻撃力上昇は3つしかなかったので、鈴本と角三君と針生が持っていく。

 守備力上昇は6つあったので、鈴本、羽ヶ崎君、加鳥、針生、刈谷、そして何故か私。

 敏捷力上昇は4つあったので、鈴本、角三君、針生、鳥海。


 守備力上がる装飾品を貰っちゃいましたが、それには訳がある。

 まず、それが一番性能の低い奴だった、っていう事。

 そして何より、それの使い方が皆さん分からなかった、っていう事だ。

 ……スカーフ留めなんて、そりゃ、使わないもんな……。


 ということで、早速装備してみる。

 今までメイド服の襟の所には細いリボンのリボンタイがついてたんだけど、それを外して細くて短めのスカーフに取り換えて、スカーフ留めで留める。

 ……おお、確かに、なんか能力が上がった感じがするね。

 一番性能低い奴でこれなんだから、さぞ一番性能がいい奴は効果を実感できてるんでしょうなあ、と思いきや。

「やっぱりそんなでもないか」

「まあ装飾品だから。過剰に期待する方が間違ってるでしょ」

 ……なんか、そうでもない様子。

 ……あ、あああ!分かった、分かったぞ。

 そうか、皆さんは元々の能力が高いから、装飾品のブースト程度では大した変化に感じないんだな、相対的に!

 しかし私は元々の能力がへっぽこなので、装飾品のブースト程度で効果を実感できちゃうんだ!あー、納得納得。

 ……悲しい。




 そしてついに、スキル?付き装飾品の分配に入ります。

 ところがどっこい!すぐに分配が決まっちゃった奴があります。

『転移』というよく分からんスキルが付いた装飾品、それは鳥の羽を模した形のバレッタだったのです。

 私以外、髪が長い人がいない為、必然的にこれは私以外装備できないことになり。

 ……私が貰う事になりました。

 というか、私がそれを言い出すまで誰もそのことに気付かず、『これよく分からんがどうやって装備するんだ?』って思っていたとの事。

 こいつら大丈夫だろうか。


 そして、残りもまあ、割とさくさくっと決まっちゃいました。

『暗視』のモノクルは、『遠見』を持っている社長。益々大学の教授じみた格好に。

『跳躍』のアンクレットはその手のスキルが未だに無い角三君。がんばれ。

『エネルギーソード』の手甲は針生。これは一応……装飾品だよね、防具じゃないよね?

『必中』の指輪は迷わず加鳥。逆にこいつ以上の適任は居ないでしょう。

『地獄耳』のイヤーカフスは『感知』持ちの鳥海。

 そして『ファイアエッジ』の指輪も鳥海。魔法攻撃もできた方がいいでしょう、との事。

『魔鏡』のペンダントは意味分からんという事で、とりあえず魔法使う羽ヶ崎君で。

『光の揺籃』のロザリオも訳分からんので、とりあえずロザリオだし、光魔法使えるし、刈谷。

『魔声』のチョーカーは『歌謡い』持ちの私。

『誘惑』のストラップというか根付というか、は、まあ、消去法で鈴本が引き取ることに。

 本人がなんか言ってるけどアーアーキコエナーイ。




 とまあ、こんな感じに無事配布も終わりまして……終わった頃には、何と、日が傾いておりました。よって、出発は明日に延期。

 そりゃそうだよ、幾ら三人がかりで早くなったからっつったって、全部の装備品『鑑定』したんだもの。

 まだ装備品じゃないっぽいアイテム類が残ってるけど、これはもう、後回しにする。

 流石にもう無理っす。




 試しに全員、現在分配された装備で武装状態になってみることにした。

 したんですけども。

「すまん舞戸、帯ってどうやって結ぶんだ?」

「舞戸さん、イヤーカフってこれ、どこに付けるのが正解なの?」

「舞戸さーん、ごめん、これって付け方あってる?」

 ……というような、装備に関するQ&Aラッシュがありました。

 いやー、君達、今日の内に装備してみてよかったね、さもなきゃ明日いざ出発、ってなった時に装備が装備できなくてまた延期されるのが目に見えるようである。


 しかしそんなのは序の口。Q&Aから解放された私が直面したより大きな問題というのが、後ろに紐を通して絞めるタイプのこのインナー。

 ……ま、まさかこれを自力で絞めて縛れと?肩関節的に無理です。しかし、後ろの紐上げてもらいに皆さんの内の誰かに頼むわけにもいかんし、いやいやいやいや、でも自分でやったら肩攣るどころの話じゃないし!物理的に無理だし!

 と苦悶した挙句、やっと「そうだ、メイドさん人形使おう」と気づき、装備できたものの落ち込んだりもしたけれど私は元気です。はい。

 持っててよかった『人形操作』。




 という事で全員武装してみた所……はい。私だけ場違いな感じになりました。

 アクセサリーが増えた位しか見た目に変わりがないしなあ。

 他の人みたいに鎧が最前面に来てる訳じゃ無いので、見た目の変化がほぼ無いのです。はい。

 他の人は明らかな武装なのに、私だけ『メイド』。

 ……装備が更新されても、メイドはメイドでした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ほうほう。 [気になる点] 指輪縫い付けたり紐通しちゃダメなんかな。 [一言] 転移……
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