135話
はいおはようございます。ちょっと早く、日の出前に起きたらもふもふすべすべもふもふすべすべとろとろ……。
ありのまま寝る前の状況を話すと、折角2F南エリアという平和なエリアに来たのだから、今日はここで寝ようぜ、という事になったのだ。
奈落はどんなモンスターがいるか、まだ分からない部分もあるし。
ケトラミさんがいたら襲い掛かってこないようなモンスターしかいない所じゃないと、私はケトラミさんをお布団にして寝られないのである。
……と、いうことで、ケトラミさんのお腹でハントル抱いて寝た。なのに、起きたら私の上にメイドさん人形がプラスされてて、さらにグライダが近くで寝てた。
ここまではいい。平常運転だ。うん、許容する。
そして、ここが一番の問題だ。
……クリーム色の虎みたいな、変なモンスターが数頭、我々の周りを延々と回ってたんだな。
何故こうなるまで放っておいたんだ!という意思を込めてケトラミさんを見てみた所、『まあ見てろ』みたいな顔をされた。
グライダを見ても『はいはい、アンタはちょっとそのままにしてなさいね』みたいな顔されるだけ。ハントルは『ごはんごはん!』と嬉しそうにしてるだけ。
……そう言うならそうなんだろう。
と、いう事でそのクリーム色の虎さん達がぐるぐる回るのを見ていた所……だんだん、その輪郭がぼけてきて……そして、今に至る。
つまり、彼らは……バターになったのだ。どっかで聞いたことある話だな!
……解説を求めた所、2Fの南で稀に見られる、レアなモンスターだったらしい。
つまり、何か丁度よさげな場所を見つけると数頭でそこを中心にぐるぐる回り、バターになる、というだけの。
ぐるぐる回るのを妨害するともれなく彼らは消えてしまうけれど、ぐるぐるを最後までほっといてやれば、彼らはただのバターの池になってしまうのだという。
……ケトラミさん曰く、半分妖精とか精霊とか、なんかそういう存在らしい。……バターの精?
ということでたっぷしバターが手に入ってしまったので、朝ごはんはパン食だ!パンとスープと、あとオムレツ!ふわふわでとろとろのオムレツが食べたい気分なのですよ!
パンはクロワッサンだ。時間もバターもあるからね。あのサクサクが食べたいのだよ。
スープは角切り野菜とベーコン炒めた所に水ぶち込んで、後はことことやれば美味しいのができる。最後に味整えたら完成だね。
卵は溶いたら塩コショウとちょっぴり牛乳。そして暖めたフライパンにバターを落としてじゅわり、とやったら、そこに卵液を投入!ここでちゃんとフライパンあっためておいて、かつ強火にしておくとフライパンにくっつきにくいんだな。
スクランブルエッグみたいにぐるぐる混ぜて程よく火を通したら、フライパンの縁を使ってうまく成形。
崩さないようにお皿に乗っけてトマトソース掛ければふわふわとろとろのオムレツの完成である。
爽やかかつ旨味たっぷりのトマトソースと卵のまろやかさ、そしてバターの香りが食欲をそそる一品であります。
オムレツはプチトマト切って入れても、ジャガイモと玉ねぎ炒めて入れても、ほうれん草とベーコンのソテー入れても美味しい。ミートソースもデミグラスソースも合う。カレーに乗っけても美味しいし。
何かとバリエーション付けられてかつ美味しいので助かりますなあ。
朝ごはんを済ませたら本日の予定の確認だね。
角三君はひたすらテラさんと奈落を飛んで悪魔の証明の続きだね。何かがある可能性がある以上、この行程をぬかすわけにはいかない。
そしてその間、あまりにも暇人が増えてしまうので、1F北東エリアにも向かう事にしました。
1F北東に1つ国があると想定される。そして、そこでやっぱりデイチェモールやエイツォールのように奴隷にでもされてとっ捕まってる生徒がいる可能性がある。
……一応、そっちの方には穂村君達が行ってる、はず、なんだけど……ここ最近めっきり連絡来てないし、なんかあったとしたら、さ。
ということで、こっちはケトラミライディング。乗ってるのは鳥海。
ほら、やっぱり自力で『転移』できると便利だから、という。
……いや、実際は違うと思う。鳥海、自ら志願したのである。
多分、『動揺病耐性』が付いたら竜騎士になれるのでは、と期待してるのではなかろうか。こいつもこいつでノリがいい浪漫の分かる奴だからなあ。
さて、そして2人と2頭が旅立ってしまった所で、私はというと絶賛機織り中であった。
……昨日全ての装備を縫い終えて、これ以上何をすることがあるのか、というと、実験なのである。
神殿から出てきた服には文様が織り込まれていた。
……文様で、なんか効果が付くとしたら、どうよ。
と、いうことで、その実験をだな、してみてる訳なんですよ。
最初は神殿から出てきた服の真似をして『刺繍』してみた、んだけど……なんか、駄目だった。
何故だ!やっぱり刺繍じゃなくて織り模様じゃないと駄目なのか!
ならば、ということで、糸を先に染めておいて、織って模様にする方法をとってみている。
……糸を染めて、っていうのが、さあ……こう、模様を糸に染める訳じゃない?だから、『染色』でばばっとやってしまう訳にもいかなくてだな……ちまちまと『染色』を制御しながらになるので、思ったよりも苦戦。
救いがあるとすれば、お手本になる神殿から出てきた服は、縦糸に色を染めて横糸は無染色のまま織っていくタイプだったっていう事かな。
これ、縦糸だけじゃなくて横糸まで、ってなったらもう手に負えなかった気がする。
つくづく、絣模様を織って作る、日本の職人さん方には頭が上がらないよ。矢絣とか考えただけでも死にそう。ちょっと織る密度変わったら横糸の色が縦糸の模様とずれる事が安易に想像できる。
……ああ、素晴らしきかな、日本文化とそれを担う職人の皆さん。
お昼前にはなんとか一枚織りあがった。
一応成功したらしく、『鑑定』してみたら『神聖加護』って付いてた。
何やら放射状に線が伸びる模様で、1つの円みたいな形になっている模様だ。光輪を想起させられるね。
……ふむ。
お昼ご飯は粉ものにしました。お好み焼きです。
角三君と鳥海が帰ってくるタイミングが分からなかったので生地と具だけ用意しておいて、2人が帰ってきたらあとは焼きながら食べる。
ソースが手に入ったからさ。これもやらないといかんと思った。反省はしていない。
猪の三枚肉の薄切りがカリッとジューシーに焼けて美味。ソースの甘味と合わさってもうたまらん。
やっぱり、脂って美味いんだよなあ。
お昼ご飯を食べつつ、角三君と鳥海は報告である。
「異常なし……あ、翼竜の群れに遭遇してドッグファイトしてきた」
「大丈夫でしたか?」
「うん。……インメルマンターンが効率良すぎた」
……着実にアクロバット飛行の道を進んでいるようで何よりです。テラさんも着実に戦闘機と化しているようで何より。
「鳥海はどうだったの?」
「とりあえずククルツ、っていう町見つけましたわー。舞戸さんがアリアーヌさんから聞いたっていう町の名前と一致するよね?あと、アーギス、っていう町が隣にある、ってとこまで確認してきたわ」
成程。やっぱりアリアーヌさんの言ってた町の名前は1F北東の町だったわけだ。
「どうする?角三君には悪いけど全員行ってみる?」
「俺の事は気にしなくていいよ」
とのことだったので、角三君には奈落飛行を続行してもらいつつ、私たちは新たに発見された町の探索に出かけることにした。
……うーん……1F北東、かあ……。
というわけで、角三君を除く8名でやって参りました、ククルツ。
……見た限り、ククルツは鉱山都市であるらしい。
そもそも、1F北東エリアは山岳地帯だ。鉱石などの地下資源に恵まれたエリアなのだろう。
ククルツで採掘された鉱石は王都アーギスにも運ばれて色々と使われたりしてるらしいね。
……鉱石の採掘、と言うだけあって……肉体労働な訳だから……非常に、町が、むさくるしいです。はい。
あれだ。なんかデジャブすると思ったら、剣闘士大会のエントリーの時の、コロシアム付近だ。
あの時もなんつーか……こんなかんじだった。うん。
「鉱石、ですか」
社長は元々こういう方面が好きな訳だから、社長には嬉しい町かもしれないね。最近は毒ばっかりで霞んでたけど。
「鉱石がいっぱい出るって事はさあ、鍛冶屋とかもあるのかもね」
私たちの装備、金属製の奴は今の所殆ど全部、自作品なんだよね。
素人の鈍らよりは、この世界のその道のプロに作ってもらった方が装備の性能上がるかもしれないね。
「……なんか杖売ってたんだけど、見てきていい?」
羽ヶ崎君の武器……杖、って、なんか仕組みが分からなくて自作できないんだよね。だからここでいいものが買えるんだったらそうした方がいいかもしれない。
「あ、なんかパーツに使えそうなの売ってる。わあ、凄いなあ、この町」
加鳥にも嬉しい町の模様。幅広いな、ククルツ!
……ふむ。よし。
「じゃあ暫く自由行動にしようか。皆それぞれ見たい所あるみたいだし」
「おい奴隷」
……あー……。そうだったね。そういえば。
「いや、俺は別にいいと思います。人攫い程度どうこうできない俺達じゃありませんから」
お、社長は別行動に賛成か。
「俺も別行動でいいと思うよ。襲い掛かってくる人いたら伸せる自信はあるし。あははは」
おや。針生も賛成らしい。
「……多数決を取る。別行動に賛成の人」
鈴本が採決をとった所、最初こそ羽ヶ崎君と鈴本が反対してたけども他が別行動を主張したため、結局別行動になった。
「ふむ。じゃあお金ね」
……ざっと、『遠見』とかも駆使してこの町の相場を見た所、白金貨1、2枚あれば結構いい装備が買えそう、という事が分かった為、1人白金貨3枚で。
「足りなくなったらメイドさん人形通して呼んでくれたらそこに行くから」
さて。じゃあ私もお買いものしようかな。
あっちの方になんか見たことの無い野菜が……香辛料みたいなのが……よく分からない液体が……。
「おい、待て」
いそいそそっちに行こうとしたら捕まった。
「お前は誰かと一緒に居ろ」
……。そうね。誰かにご厄介になった方が良さそうだね。うん。大丈夫だよ。私は私の戦闘力に期待などしとらんよ。
「……食べ物見て回る人、いる?」
……勿論、そんな奴はいない!
結局、とりあえず私が金属系の装備見ててもしょうがないので、羽ヶ崎君についていくことにした。
魔法関係には単純に興味があるし。
……もし、命(物理)関係の情報とかがあったりしたら、それは是非仕入れたい所だし。いや、期待はしてないけど。
そして、お買い物が終わった人がいたら、その人の所に『転移』して、その人連れまわして食品関係を見に行こう、という事になった。
……本当に申し訳ない。




