文化祭~1~
さて、いきなりですが質問があります。
なぜ逆ハーレム系主人公はこうチャラチャラしたのによく絡まれてたりするのでしょうか。
そんなに主人公は魅力的なオーラを醸し出しているのか、いやそんなわけない。答えは簡単。
そうしなきゃ話が進まないからだ。
皆さんこんにちは、女子生徒Gです。今日は文化祭ということなのでモブキャラ沢山出てくることを予想してGにしました。あの黒くてカサカサ動く虫とは特に関係ないよ。
さて今私は関係者以外は立ち入り禁止の美術準備室の目の前にいます。我が校の美術部は廃部寸前なのですよ、だから文化祭も特に何も展示しないから隣の美術室はもぬけの殻、更にもともと美術準備室前の廊下は人気がない。
だからこんなとこ誰も使わないからサボリにちょうどいいね!と調子こえて来たのが間違いでした。
「ここなら誰も来ねえな……」
「そりゃそうだろ」
いますよ、私が。
しかも扉が若干開いていて男二人女一人いるのが確認できますよっと。てか気付けよ。
「三年生の先輩ですよね。何の用ですか?」
どっかの脳内花畑系主人公さんとは違い、特に怯えることもなく男二人を見据える女一人。
似てる似てると思っていたけど、こっちの子の方が怖いもの知らずなとこがあるんだな。
「君さぁ親友の彼氏略奪した子だよね?」
「そーそ、しかもよく男に媚び売って貢いでもらってたとか」
「うわ、超ビッチじゃん」
男二人はゲラゲラと下品に笑っていた、ものすごーく不快。
まあこの前のファミレスで花崎歌に絡んでた不良よりは語彙があるみたいだけど。でもビッチとかいう単語は子どもの教育上良くないよね。
「私、そんなこと」
「してない、とは言えないだろ。少なくとも略奪したことはこの学校の全員が知ってるんだぜ?」
「……」
「あらら黙っちゃった?」
お前が黙れよ不良A、モブキャラの分際でなにしゃしゃりでてきてんの?自分の立場をわきまえた方がいいと思うよ、私みたいに。
男二人もとい不良AとBは女一人もとい佐藤さん(仮名)を壁に追い詰めていた。
あーあ、可哀想に。
佐藤さん俯いて黙り込んでしまった。もっと強く反論すればいいものを。
「ふーんまあ確かに大人しくしてりゃかなり可愛いな」
「確かに、この顔で誘惑されたらどんな奴でもイチコロ……」
「……誘惑なんか、してないです。あの子には悪いことをしたって許されないことをしたって分かっています」
「良い子ちゃんぶるのやめたらぁ?ビッチちゃん」
「ビッチちゃんウケる、それいい!」
すいませーん、この不良二人組レッドカード出して退場させてくださーい。
ビッチビッチ連呼するモブキャラなんぞいらんわ。香坂馨よりたち悪いわ。
「やめてください!」
っていうか、何この状況。
佐藤さんを救い出してくれる王子様が見当たらないんですけど、私どうすればいいの?
正直いって、佐藤さんが主人公の物語には関わりたくないしそれ以前に終わったはずなんだけど。
「どうせ彼氏とか取り巻きとヤりまくってんだろ?」
「ならいーじゃん、俺らとも仲良くしようぜ」
「やだ……っ」
不良たちが佐藤さんに近付くのが見えた、いやほら、まじこれヤバいって。
どうすんの?さっさと来いよ王子様、白馬とか乗って華麗に登場しなくてもいいからとにかく来いよ、じゃないと主人公もといお姫様みたいな佐藤さんがやられてしまいますよ、いろんな意味で。
「綺麗な肌してるじゃん」
「……っ!やっ、やだ!」
佐藤さんは必死で伸ばされた不良Aの手を振り払おうと暴れているが、どんどん壁に追いやられていってる。
本当にヤバいって!
この話そういう18禁的なのじゃないから!てか誰得だよ!
「やめて!!」
……。
「あらぁ泣いちゃった?」
「あは、可愛い。そういうのマジそそられる」
…………。
「ふっ、うぅ……やだ、やだよぉ。ごめんな、さい」
何に対して謝っているんだろう彼女は。
ふと昔のことを思い出した、彼女はあの時も泣きながら私を見ていた。ごめんなさい許してくれとはいわないだけどごめんなさい私好きになっちゃったの本当にごめんなさいごめんなさい。って。
馬鹿げてるよね、本当に。
「……何してんの?」
気付いたら三人に話しかけてる私も。
驚いた顔をして私を見つめる彼女も。
まあでも一番馬鹿げてるのは、
「みんな馬鹿なの?」
このでしゃばりすぎた不良たちだけどさ。




