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Happy Endへの道


教室前の廊下についている窓から外を見ると、白い雪が校庭に降り注いでいた。

それは去年の冬とまったく同じに見える。



「良ちゃん」



どこまでも綺麗な澄んでいる声で口にするのは、花崎歌の幼なじみの名前。


今私は教室にいる花崎歌と長谷良太の会話を廊下から聞いていた。何というか、私の視線が雪に向いているのは最後の良心である。

さすがに二人の人生で一番重要であろうシーンをガン見できるほどの度胸は私にはない。


ちなみに言うと、なんか意外とあっさり見つかってしまったことに附が落ちない。



「な、なんだ?」


「あの、クリスマスの誘ってくれてありがとう」



……。



「迷惑とかじゃなかったかな、俺パニクっちゃってワケわかんねーこと言ってたし」


「ふふ、良ちゃんらしいよ」



駄目だ、見たい。いやね我慢するよ?でもね、今の長谷良太の顔はどうしてるんだとか花崎歌は余裕の笑みを浮かべてるとか分かんないからね?

声のトーンとかで判断するしかないんだからね?息を潜めなきゃいけないし苦労するよ本当に。



「そっか、うん。そうだな」


「ねえ良ちゃん」


「あ?」


「なんでさっきから私と目合わせてくれないの?」


「え、あ……」



さすがヘタレ道を極める長谷良太さん、最後くらいはビシッと決めてもらいたいとこだけど。



「すっげー緊張しちゃって」


「今更だよ。……私ね、良ちゃんとクリスマス過ごしたいんだ」



今の花崎歌は(無意識に)上目遣いでとびっきりの笑顔を長谷良太に見せてるに五十円。


あ、雪が少し強くなった気がするな。帰り道が大変そう。まさか予報では晴れだったから傘なんか持ってきてないし。



「…………えっ、え?え!?」



何その驚き、まさかここまできて奴は振られるとでも思っていたのだろうか、いやそうだったら本当にただのアホだろ。



「お、おおお、俺でいいのか?ほかにもいただろっ?古城たちとか香坂先輩とか……神村とか!」


「神村くんは、他に誘いたい子がいるみたいだよ?」


「えっ、そーなのか」



なんでコイツら二人なのに全然違う話してんの?馬鹿なの?

あー馬鹿か。



「でも、歌は本当に俺でいいんだ?」


「うん、良ちゃんがいい。私は他の誰でもない良ちゃんじゃなきゃダメ」


「っ!そっか……」



“いけないことだって分かってたの、でも他の人じゃないあなたが好き”だったっけ。

去年あの子が言ってた言葉は。


本当に似てて参っちゃうな、参っちゃうよ。



「じゃ、もう六時になるし会場に行くか」


「うん!」



ヤバい、雰囲気的にもうそろそろ切り上げた方がいいのかもしれない。



「あれ……」


「どうかしたのか?」



私は冷え冷えとした廊下を歩き始めた、大切なものは結果なのだから、私はもうサボって家に帰ろうかな。

まあ二人の告白シーンも興味あるかないかで聞かれたらあるけど。ぶっちゃけあんまもう今日は学校にいたくない。


気分が悪くなりそう。



「……ふふ」


「何笑ってんだよ?」



花崎歌がこの発言をしたとき、私はもうすでに二人の会話を聞いてはいなかった。



「神村くんには頑張ってほしいなぁって思っただけ」


「……?」


「じゃ、今度こそ体育館に行こう?お腹すいちゃった」


「おう、まだ夕飯にしてはちょっと早いけどたくさん食べよーぜ!」




☆・☆・☆




「寒っ」



思わず声に出してしまうほど、下駄箱は寒かった。

傘を持っていないのでコートのフードをかぶる。



「はぁ……結局何がしたかったんだろう」



私は。この約三ヶ月、どっちかというと約四ヶ月か。

最初は本当に暇潰しだし今でもそれはあんまり変わんないんだけど。


得たものって何もないよね、私が一番馬鹿だったのかな。

いかんいかん、雪をみたらどうも感傷的になってしまう。


靴に履き替えて外に出た。

雪が冷たくて少しだけ、ほんの少しだけ悲しくなる。

一年前とまったく同じ天気とか勘弁してほしい、精神がえぐられてるような気がする。



「……」



いくら待ち合わせ場所の校門で待っていても、来ることはなかった。一人で体育館に行ったらすべてが終わっていた。

それに比べたら花崎歌のハッピーエンドはどうやら一番最高の形だったのだろう。攻略対象キャラも古城兄弟以外はさっぱり終わっていたし。

あーあ、リア充消え去れ。



校門をくぐって、私は家へと足を進めた。進めたのだけれど、



「待ってた」



校門の前にいたソイツによって私は不覚にも泣きたくなった。

何なのコイツ?殴っていいの?

むしろおまわりさんコイツですとか言って警察に突き出せばいいの?



「また?いい加減にしてよ」



もしかしたら、今の私は声が震えていたのかもしれない。

……あーあ、どうなることやら。



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