誰かの思い出
モブキャラの語りがない分、コメディ要素がないです。
すいません。
高校初めてのクリスマスパーティー。
あたしは自分の彼氏から受け取ったクリスマスカードを片手に、学校の正門前にいた。
その日は今にも雪がふりそうな天気で、もしかしたらホワイトクリスマスになるのかなーなんて考えていた。
「まだかなー」
今の時刻は五時過ぎ、パーティーまではあと小一時間ある。
あたしはこの寒い中で、彼氏を出迎えて言うんだ。
メリークリスマスって。
で、この鞄の中にあるプレゼント……黒色のマフラーを首に巻いてあげるの。
想像を膨らませていると、自然に頬が緩んでしまう。
待ち合わせまであと、二十分……十分。
肩に、何か冷たいものがあたった。
「あ」
ふわふわしていて、真っ白いものがホコリのように降り出した。
雪。
着ていたコートのフードをかぶり、彼氏を待つ。
「長谷は誰も誘わなかったんだ?」
声が聞こえて前の道を見ていると、男子が二人で歩いていた。
「まーなー」
「他校に好きな子がいるとか」
「……だな」
よく見ると片方は同じクラスの長谷良太だった。
バスケ部の期待の星で、美形だしノリがいいから女子にモテているらしい。
その二人はあたしに目もくれず、学校の中に入っていった。
待ち合わせまであと三分。
「……」
二分、一分。
まだ彼氏は来ない。
早く、早く。
クリスマスパーティー始まっちゃうよ?
いつものデートのときは、こんなに遅れないのに。
待ち合わせの十分前には来ているのに。
なんで来ないの?
「あれ……もしかして」
その言葉は待ち合わせを少し過ぎた時間、校門の向こう側から聞こえてきた。
聞き飽きるほど馴染みのある声の主。
「あ」
……待ち望んでいた彼氏の声ではなかった。
この人物はあたしの友達が好きで好きでたまらないらしい。
変態的なまでに友達が好きなんだよね。
だからクリスマスカードをあげたとのこと。
振り返ってその変態を見てみると、今にも泣きそうな顔をしてあたしを見ていた。
「……どうしたの?」
明らかにいつもと違う。
コイツはいつでもニコニコと笑っているような奴なのに、笑みを浮かべてなかった。
「ふられた」
ある意味予想通りの言葉を返してきた。
そっか、コイツはふられたのかと。じゃああとはコイツ除いた四人のうちの誰かが。
「来ないよ、お前の彼氏は、来ないよ」
……え?
何言ってんの?
あたしが戸惑っているのも無視して続ける。
「俺は大丈夫だよ」
「ちょっ……と」
「大丈夫だけど。一番辛いのは、たぶんお前」
何が?
「体育館に行け。お前の彼氏はそこにいるよ」
ソイツの右目から、涙が一筋だけ流れる。
あたしはそれを見て、なぜか無性に不安になってきた。
気付いたらあたしは体育館へ走り出していた。
そして、後悔した。




