長谷良太の場合
クリスマスまで、あと三日。
いまだに行動に出てない奴が二人いるが、ついに!
ついにやってきた!!
皆さんおはようございます、名無しの女子生徒です。
今私は教卓の中に隠れております。
いやー七時から学校に来て粘ったかいがあった、報われてよかったわー。
「朝早くから、よっ呼び出してごめん」
純情爽やかスポーツ変態馬鹿少年というこれでもかというほど属性がプラスされていった男、長谷良太だった。
しかもコイツ意外とヘタレなのである。
「ううん大丈夫だよ、用事ってなに?」
さすが鈍感主人公、呼び出しまでされているのにまったく気付く気配がない。
教卓の中から二人の姿は見えないのは残念すぎるっ!
「あー……今日は良い天気だなぁ……ははは」
「いや、どうしたの?」
バーロー今日は雨だ。
雨音聞こえないの?
「雨降ってるし」
「え!あ、そそそそうだよな」
「大丈夫?もしかして熱でもあるの?」
「俺風邪ひかないだけが取り柄だから大丈夫、全然」
「そんな、良ちゃんにはたくさん取り柄があるよ!」
優しいね、花崎歌は。
でもその鈍感さはあまりにも惨いと思うの。
「あ、ありがと……」
「うん」
「……あのさ」
お、ついに来るか?
「メロンパンってうまいよな」
「うぇ!?そ、そうだね」
駄目だコイツ!!
メロンパンってどっからでてきたし!
「俺すげーメロンパン好きなんだ、愛してるんだ!」
「え、愛して?」
花崎歌の困惑したような顔が安易に想像できる。
メロンパンを愛してるってお前、何がどうしてこうなった。
「それと同じくらい!歌のことも大切に思ってる」
……え?
いやいやそれはいかんだろ。
それって大切なものがメロンパン=花崎歌ってことになるんじゃ。
「だから、これお前に!」
「えっ?ちょっとそんなに押し付けたら紙がぐちゃぐちゃにって、良ちゃんどこ行くの!?」
「いいいい家に帰る」
「ええ!今から!?」
相変わらずドタバタした二人組……。
長谷良太に関するイベントはなんか花崎歌に同情する。
朝呼び出し
↓
今日は良い天気(実際雨)
↓
メロンパンへの愛を語り出す
↓
大切=メロンパン=花崎歌
↓
紙を押し付ける
↓
主人公放置、家に帰る
めちゃくちゃすぎ。
なんか今までのイベントの中で一番ひどい展開な気がする。
花崎歌はしばらく立ち尽くした後、教室から出て行った。
私は教卓の中から出る。
それにしてもよくバレなかったなー。
二人とも観察力とかなさそうだし、私モブキャラだし、バレるわけないんだけどね。
一番そばの窓を開けて、やけに乾燥した冷たい風に当たる。
「目、澄んでたな……」
花崎歌の目は、誰よりも綺麗な目をしている。
ほんの少しだけ、羨ましい。
私はもうあんな綺麗な目はできないから。
まあ何が言いたいかというと、花崎歌は主人公になるべくしてなった存在だということ。
それは置いといて、
残すは後一人、神村武蔵。
「……」
少しだけ、複雑な何かが絡みついた気がしたけど、気にしないことにした。
私は所詮モブだし、脇役とかになりたいとも思わない。
だからこれでいい。




