香澄、恋愛イベント2~前編~
サブタイトルはこんなんだが、真のサブタイトルはきっと、
vs加賀由梨!ライバル登場?
みたいな感じだと思ってる。
センスがないとか今更だし気にしないよね?
はぁ、最近私疲れてんだよね。
まあ理由は察してほしい。
本当は家に帰って寝たいとこだけど、花崎歌ウォッチングを今更やめるわけにもいかないし。
し か も 、
「うさちゃんフウセンください!!」
私は無言で手に持っている数十個の風船の中からひとつ、チビに渡す。
そう、私は今うさちゃんなのだ。
厳密に言えば、デパートのおもちゃ売り場で風船配ってるうさぎの着ぐるみの中に私はいる。
バイトだよバイト。
え?ああ占い師からは転職したのよー。いい加減すぎてクビになっただけだけど。
「ありがとう!」
ウザったいくらいに狭い視界に映るのはウザったいくらい可愛らしい女の子の笑顔。
うん、可愛い。
私はロリコンじゃない。
「こっちだよ!」
「香澄くん待ってよー……」
そしてなぜか、おもちゃ売り場に奴らはいた。
今回はガチで狙ってない。偶然って本当にあるんだね。
「ってここおもちゃ売り場じゃない!」
気づくの遅くね?
そう思いながら今度は男の子に風船を渡す。
「なあなあ。中に人入ってんだろー?」
「……!」
くそチビが、それは禁句だ。
あの口元は笑ってるのに目が笑ってない某ネズミさんに言ってみろ。
出入り禁止以上にヤバいぞ。
「なあなあ」
「……」
私をそんな目で見ないでぇ!
お願いだから!
「こら!マスミ」
「あっ……由梨ねぇ」
うさちゃんが涙目になっているところを、隣から割り込んできた女子中学生が助けてくれた。
ありがとう!
もうクビにはなりたくない。
ここで声なんか出したら殺されるから言わないけど。
「風船貰ったならもう行きましょう」
「やだーっ、香澄にーちゃんと遊ぶんだもん!」
「え?香澄も来てるの?」
……へぇ?
これはなんか修羅場の予感。
由梨って名前、皆さん忘れてるかもしれないけど。
香澄くんイベント1で出てきた香澄くんのもうひとりの好きな人だ。
そしてこの夢ぶち壊したくそチビは、
「でもにーちゃんなんか女の子と遊んでるし」
香澄とマスミ。
たぶん兄と弟か。
「女の子……?」
おー?由梨ちゃんの目の色が変わりましたよ?
細く鋭くなった目で由梨ちゃんは店内を見渡していた。
そして、
「あーっ!」
二人を見つけたっぽい。
由梨ちゃんは颯爽(顔は鬼みたいだけど)と走っていく。
お客さま、店内では走らないでくださいませ?
「かーすーみっ!」
「え、由梨?」
修羅場キター。
てか状況的にあまり笑えないのに、香澄くんは由梨ちゃんを見てキョトンとしてるだけ。
「どうしたの、顔が怖いよ?」
お 前 の せ い だ ろ !
反応薄っ。
「誰よその人」
由梨ちゃんは典型的なライバルっぽいようです。
メモメモ……とれねーじゃん!私うさちゃんだった。
「私?」
「あー、花崎歌センパイだよ。前ちょっと話したことあるよね」
「あなたが!?」
「え、え、え?香澄くん、この子ってもしかして由梨ちゃん?」
想像通りすぎ。
由梨ちゃん怖い。
「気安く名前で呼ばないでくれますか?」
「由梨、なんでそんな怒ってんのさー。歌センパイに失礼だよ」
「うるさい!」
あまりにも由梨ちゃんが怒鳴るもんだから、店内にいるちびっ子たちが怯えてるじゃん。
営業妨害ですか?
泣いていいですか?
「……う、由梨ねぇが怖い」
マスミくんがうさちゃんの手を握ってきた、ってやめぃ!
私巻き込まれたくない。
「なぁ、ねーちゃんかにーちゃんか知らないけど助けてよ」
確かにマスミくんだけでなく他のちびっ子も怯えてる。けど、
だが断る。
私は必死に首を振ろうと…顔が動かない!?
「どういうことか説明しなさいよ、香澄!」
「何を説明するの?」
二人の温度差激しすぎ、主人公が空気化してる。
「なあなあ、お願い」
ああ、もう!面倒くさいなぁ。
マスミくんの手を振り払い、風船を適当な場所にくくりつけ、私は走る。
周りから見たらうさちゃんが全力疾走してるシュールさ。
事務室に着き、うさちゃんを脱ぎ、服を着る。
「店長!」
何くつろいでお茶なんか飲んでんだよ!
「は、はいぃ?」
「エプロン借りますね」
「え?ちょっと?え?」
店長のエプロンを剥ぎ取り、かぶる。
ビックリしてる店長の井山さん(53)を無視していざ戦場へ!
「初めまして、店長の井山です」
「えっ?」
三人に向かい挨拶をする。
さあて、始まりましたよ。
私の力を見せてやろうか!
次回に続く☆




