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まほうのちから[アルファベットの練習]

弓使いの冒険者・アロウと一緒に仕事のため山奥の村へと向かうシン。

最近アロウに教えてもらって文字の書き取り練習をしているところ。

道すがら雑談をしていると、シンにとっては驚きの事実が判明する。

「えーっ!文字って、種類を全部覚えても文章読めないの!?」

 シンは不満そうに声を上げた。

「全部の音に一個ずつ文字があるんじゃないの?」

「それだと文字の種類がめちゃくちゃ多くなるだろ」

 後ろからうるさく言われて、アロウは片耳をふさぐ仕草をする。

 この大陸の言葉では、子音と母音の文字を組み合わせて言葉を表現する方式だ。

 発音すべてに文字が対応しているわけではなかった。

 最近読み書きを練習し始めたシンには、それが何か納得がいかないらしい。

「音と文字がペアになってた方がわかりやすいじゃん」

「昔はそういう国もあったらしいけどな…」

 現在では共通語が大陸全域に浸透していて、音をあらわす文字を持つ国はなくなっていた。

「それよりもう覚えたのか、24文字」

「うん、ばっちり!」

 シンは基本文字を書きとった石板を掲げてみせる。

 消しては書き、何度も練習した跡が見える。

 学習意欲は十分、そして記憶力もいいようだ。

「じゃあ村に着いたら、少しずつ綴りを教える。例外は多いけど、基本的なルールはあるから」

「早く読めるようになりたいなあ」

「何か読みたい本でもあるのか?」

「うーん、これっていうのがあるわけじゃないけど…文字って魔法みたいじゃん」

「まあ、そうかもな」

 実際、魔法は声や文字など言葉で操る側面がある。

「読み書きができるって、それだけで魔法の力みたいなものだと思うんだよね…文字が読めたら仕事もあるでしょ?」

 何かと動き回っている印象のシンが、室内で文字を扱う仕事をしている姿はアロウにはいまいちぴんとこない。

「……たぶんな」

「それ、なんの間?」

 シンに覗きこまれて、アロウは目を逸らす。

「なんでもない」

「何のウソ?」

「ウソはついてない」

言い合いをしているうちに森は途切れ、遠くに村の屋根が見え始めていた。

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