外の世界へ[8.5話]
シンは落ち着かなげに自分の靴先を見つめていた。
目の前には槍を持ち、剣を腰に履いた兵士たち。
街の中と外を繋ぐ門の下、検問所ではアロウが通行許可の手続き中をしている。
兵士というと、シンにとっては追い払おうとしたり、何もしていないのにこちらを疑ってかかってきたりと嫌なイメージしかない。ほとんど天敵だ。
冒険者として装備を整えたシンは、いまや見習いや奉公で働く子供たちと遜色ない格好をしている。もうそんな扱いをされないと頭ではわかってはいるものの、どことなく落ち着かない気持ちになってしまう。
アロウが早く戻ってくるようにと、そればかり考えている。
書類を見せたアロウに、顔見知りらしい兵士が形ばかり目を落として返した。
そして、シンの方を見る。
「珍しいな、連れがいるとは。護衛任務か?」
「いや。……仕事の連れだ。あれで役に立つんだぜ」
アロウはにっと笑ってこちらを示す。
慌ててシンは背筋を正す。
嘘ばっかり言って!
シンは内心冷や汗をかいたが、兵士はそうは思わなかったらしい。
「あんたが言うならそうなんだろうな。坊主、この兄ちゃんを頼むぞ。案外抜けてるからな!」
がははと豪快に笑う兵士に「うるせー」と返しながらアロウは書類をしまい、荷の確認を受けていた驢馬を二頭連れて小走りで戻ってくる。
シンはほっとしてアロウに合流する。
「待たせたな。行こう!」
アロウはシンの肩を叩くと、驢馬のたずなをひとつシンに手渡す。
これを引くのが今回のシンの仕事だ。
荷を満載した驢馬たちは、慣れているようで引かれるまま大人しくついてくる。
「良い旅を」
兵士たちに見送られ、門をくぐる。
暗い門の内側には、闇を切り取るように出口が明るく見えている。
シンは市壁の外のことは、屋根の上から遠く望む景色でしか知らない。
近づく光に否応なく胸が高鳴る。
初めての外の世界が、目の前に近づいてきていた。




