春が来るまで
弓使いの冒険者・アロウと居候のみなしごシン。
二人はバディとして強い絆で結ばれつつあった。
そんなある日、仲間の冒険者たちと宿で宴会をし、そろそろお開きというところ。
食堂での飲み会もそろそろお開きということで、皆が席を立ち始める。
アロウが廊下へと消えていく仲間たちの後ろ姿を眺めていると、隣で相棒兼、居候のシンがつぶやいた。
「ボクも、自分の部屋取ろうかな…」
「どうした急に」
シンもプライベートな空間が欲しくなったのだろうか。
それはそれで成長として喜ばしいのかもしれないが、アロウは少し驚いた。
シンはぷくっと頬を膨らませて続ける。
「だってボクだけ一人で寝れないお子様みたいじゃん。一番小さい奴だって一人部屋なのに!」
アロウは吹き出した。
「なんで笑うの!!」
「いや、ごめん……」
ちょっとだけ、自分と同室なのを嫌がられたのかと心配したのは杞憂だったようだ。
アロウは笑いながら続ける。
「それだと俺もお子様だ」
「アロウも?」
「まだ寒いから、一人部屋は寒い」
そう言ってシンを抱えて膝の上に乗せる。
「冬の間、もう少し居てくれると助かる」
耳元で囁かれる声がくすぐったくて、シンはもぞもぞと身じろぎした。
「もー…また懐炉扱い?」
「だめ?」
「仕方ないから、もうちょっとだけね。春が来るまで」
「うん。春が来るまでな」
小さな約束は、期限が来るたびなんだかんだと理由をつけて、延びていくのだった。




