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スノウホワイトの景色に紛れて

 どんよりとした雪雲の下。

 モノトーンに沈んだ広場の景色の中には、まばらな人影が身を縮めて家路を急ぐほかに動くものはない。

「……シン?」

 店主に代金を支払って振り返ると、シンの姿が消えていた。

 広場の真ん中でそうそう危険なことはないはずだが……

 きょろきょろと見まわしていると、みゃあ、という鳴き声が聞こえた。

「猫?」

 音の源を探すと、広場を囲む植木の方から聞こえたようだった。

 近づいていくと……

「これはボクのー」

「みゃあ!!」

 猫とシンがパンを取り合っていた。

 …というか、シンが猫に一方的に襲撃されている。

「あっ!」

 一瞬の隙をついて猫がパンを奪い、走り去った。

「ボ、ボクのパン……」

 がっくりと肩を落とすシン。

 アロウは思わず噴き出した。

「あっ、ちょっとアロウ!なに笑ってんの!!」

 気が付いたシンがぷりぷりと怒る。

「いや、すまん」

「もー……」

 憮然とするシンの視線は、猫が消えた路地に向けられる。

「……寒いけど大丈夫かな」

 先ほどの猫はかなりやせ細っていた。

「猫は毛皮があるから、食事さえありつければなんとかなるだろ」

 そう言って見下ろすシンの背丈はアロウの胸くらいまでで、折れそうなほど細い。

 控えめな服に白い肌。

 白銀の髪は、雪が降れば景色に紛れてしまうだろう。

「…帽子でも買うか」

 アロウは呟いた。

「ん?寒いの?」

 見上げてくるシンの肩にそっと手を置く。

 もう見失わないように。

「お前の分をな」

「ボクは寒くないけど」

「はいはい。目立つ色にしよう」

 自慢げに強さをアピールするシンを押してアロウは歩き始めた。

「平気だってば」

「見た目に寒いんだよ」

「なにそれ」

 言い返してくるシンの口調は不満に感じている風でもなく、面白そうにアロウを見上げている。

 そしてふと思いついたようにアロウの脇にもぐりこんで身を寄せた。

「はーあったか」

「歩きづらい…」

 宿へと向かう2人の姿は寄り添いひとつになって、白くなっていく町へと溶けていった。

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