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涙の訳は

冒険者協会の若手職員・ケイティはある日書類を抱えて施設内を歩いていた。

そこで顔なじみの冒険者コンビを見かけたのだが、いつもと様子が違っている。

 待合スペースに出ると、シンが立ち尽くしていた。

 両目からぽろぽろと涙をこぼしていて、受付職員のケイティはぎょっとした。

 シンの向かいにはアロウがいるが、彼がいるのにどういうことなのか。

「なんでバディ泣かせてんスか!」

 足音高くケイティが詰め寄ると、アロウが振り向いてその形相に思わず顔を引きつらせる。

「見損なったっスよ!勇者の名に恥ずかしくないんスか!?」

 アロウの名前はいわゆる通り名で、昔の勇者から取られている。

「勇者関係ないだろ…」

 ケイティのあまりの勢いに、アロウは後退しつつ抗議した。

「言い訳しない!」

「俺のせいじゃねえ!!」

 二人が言い合いをしていると、耐えきれなくなったシンが叫ぶ。

「なんでもいいから、早く治してえー!!」

 二人がぴたりと動きを止める。

「…で、何したんすか?」

「こいつがじ・ぶ・ん・で!モッシュフラワーの群生地に突っ込んじまったんだ」

「ああ、あの触るとぶんぶん頭振り回して花粉まき散らすやつっスか…」

「今薬切らしててな…ここが一番近かったから薬持ってる奴いねえか聞きに来た」

 疲れた様子でアロウは布巾でシンの顔をぬぐう。

 シンは目からも鼻からもぐすぐすと水分を流している。

「目と鼻の下が痛いー」

「だから気をつけて進めって言っただろ」

「アロウさん、在庫ありましたので……あら?ケイティどこ行くの?」

 薬箱を抱えた先輩職員のルミアに呼び止められてぎくっとする。

 アロウが薬を受け取りながら、横目でじとっとこちらを見た。

「別にいいけどな、こいつ泣かせたって言われるくらい」

「すみませんでしたあ……」

 ケイティは勘違いを詫びたのだった。

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